お姉ちゃんが嫌い〜百絵の記憶〜
血の繋がりは切っても切り離せもの。
でも、その人たちにしかわからないこともある。
最高学年として迎えた入学式。
『最高学年』っというだけで少し緊張していた。
〜入学式〜
「新入生呼称。」
「1年A組。」
「阿部 百合。」「はい。」
「伊藤 翔太。」「はい。」…
今年も長いんだろうな〜っと思っていた時、
「そういえば、珠央の妹って何組なの?」
「A組だよ。」
「じゃあ、そろそろじゃない?」
「鈴木 花織。」「はい。」
「鈴山 百絵。」「はい!」
元気良く返事をする妹を見て、やっぱり姉妹なんだなっと思った。
すると、ちらっと妹が私を見た。
「お姉ちゃんのこと、好きなんだね。」
「そんなことないよ。」
百絵はきっと、私のこと嫌いかもしれないけど、少なくとも私は百絵のこと好きだよ。っと心の中でそっと呟いた。
「1年B組。」
鈴山百絵(すずやま もえ)
中1 1年A組
とてもかわいくて、成績優秀。私の自慢の妹。
「妹に自分のクラス言ったんだ。」
「3人共同じB組だった。って家で話してたからね。」
「いいな〜」
「空は弟がいるんだっけ?」っとその時
「竹岡 聖樹。」 「はい。」
恥ずかしいのか、小さめの声で返事をしている。
竹岡 聖樹(たけおか まさき)
中1 1年B組
空の弟 シャイならしい。
「私も珠央みたいにマサに興味もってほしいな〜」
そんなこんなで入学式は終わった。
(う、今度は誰の…)
「もう何!」
「いや、百絵も中学生なんだなぁ〜って思っただけ。」
(入学式の日の朝か…)
「じゃあ先行くから!」
お姉ちゃんってなんであんなに鬱陶しいんだろう?
〜夏休み〜
「百絵!あなた、この成績の悪さは何!」
「ごめんなさい。」
「なんで、あなたが108人中53位なのよ!」
「…」
「百絵!お姉ちゃんとあんまり変わりないじゃない!」
(何を怒っていたのかって思ってたけど、そんなこと言ってたんだ…)
「…」
「次、成績が悪かったら許さないからね!」
「はい…」
私はできるだけ頑張ったのに…お姉ちゃんはいつも点数悪いのに。でも、ようやく夏休み。これで怖がる必要もなくなったな…
〜8月31日〜
「百絵、宿題終わったの?」
「うん。」
「なら、早く寝なさい。」
「あ〜終わらない。」
「珠央も早く寝なさいよ!」
「は〜い。」
お姉ちゃん、今年も終わってないんだ。
「お姉ちゃん、終わらないの?」
「そうだよ!」
お姉ちゃんはとても焦っている様だった。
「そう…」
私は大きなため息をついた。
「どうしたの?元気なさそうだけど…」
「そんなことないよ。」
「嘘だね。期末といい、ため息といい、なんかあったなら聞くよ。姉妹なんだし。」
私は少し悩んだけれど、お姉ちゃんになら言ってもいい気がした。
だから、話した。仲間はずれにされてること、陰口を言われること、友達も離れて行ってしまったこと…
泣きながら、くしゃくしゃになりながら話した。
(そんなことも、あったっけ…)
「つらかったね。」
そう声をかけながら、お姉ちゃんは私をやさしく抱きしめた。
とても暖かかった。
「百絵、これも試練なんだよ。神様が百絵に与えた。」
「え?」
「百絵なら、乗り越えられるさ。大丈夫、お姉ちゃんがいるから。」
「うん。」
私はそのまま寝てしまったらしい。
朝、私は制服に着替えて鏡を見た。私は少し強くなった気がした。
「お姉ちゃん、行くよ。」
「うん。」
「いってきます。」
その時、はじめて私はお姉ちゃんが好きになった。
(百絵、ありがとう…)
(あっ、また戻った。)