はじめてできた友達〜空の記憶〜
中学生になると小学生とは違う生活になる。
そしてはじめて会う人もいる。
人は相手に対して、それぞれ印象をもつ。
お墓の前で、手を合わせる青年がいた。
「俺、本当は珠央の事が好きだったんだ。」
"嘘だ、嘘だ。"
〜5年前〜
「もう、受験生だね。」
「そうだね。」
それは私達が、中学3年生になった春のことだった。
学校の大きな桜の木が少し散り始めていた。
私は鈴山珠央(すずやま みお)
元気いっぱいのバレー部キャプテンです。
「うち、バカだからな。行ける高校あるかなぁ?」
彼女は私の親友の桜木瑠海(さくらぎ るみ)
家が近いこともあって、幼稚園からの親友だ。
ちょっと、ギャルっぽいけど、優しくて友達思い。
でも、試験で最下位しか取ったことのない学年1のバカ。
「そんなこと無いよ。高校は行けるって!」
そう答えるのは、もう一人親友の竹岡空(たけおか そら)
空は中学に入って初めてできた親友だ。
いつもおしとやかで恋愛の話が大好き。
「そうだよ。」
「だって、珠央は頭いいじゃん。」
「そんなことないよー。」
いつも、そんな感じだった。
「ねねー、写真撮ろうよ。」
いつもはおとなしい空が言った。
「いいじゃん。」
「うん!」
「せーの。」
パシャ。
3人は楽しそうに笑っていた。
その写真の下に方に、『受験生ガンバ!』。そして、上の方には『るみおそら』っと書いてあった。
ずっとこんな穏やかな日々が続けばよかったのに…
(うっこれは…空の記憶?)
「空ちゃん、一緒に行かない?」
(中1の春、私が初めて空に話しかけた時の…)
「え、あ、うん。」
なんで、こんなに地味な私にとっても明るい珠央ちゃんが話しかけてくれたのかな?
「空ちゃんは、クラスに友達いるの?」
私が一番と言っていいほど、言われたくない言葉だ。
「いない。」
「そうなんだ。じゃあ私と友達なってもらってもいい?」
私が思っても見ない答えだった。
「うん!もちろん!」
珠央ちゃんには聞かれなかったけど、私はあの話を珠央ちゃんにすることにした。
「珠央ちゃん。」
「何?」
「理由気にならないの?」
「なんの?」
「私に友達のいない…理由」
ちょっと恥ずかしかったけど、聞いてみた。
「別に、聞く必要ないと思ったからだけど…じゃあ聞かせてもらおうかな?」
「わかった。」
私は深呼吸して、話し始めた。
「この北西中って、北小と西小の子達が一緒になるでしょ。」
「うん。」
「私は北小でも、西小でもないの。私、中学進学と同時にこっちに引っ越して来たんだ。」
「そうなんだ。」
「だから、友達が1人もいないの。」
「へー」
思ってた反応とは違った。
「もっと深刻な話かと思った。」
え。私には深刻な問題だった。
(空にとって友達って大切だったんだ…)
「でも、もう友達いるよ!2人。」
「え、2人?」
私達の前にギャルっぽい女の子が立っていた。
「紹介するね。私の親友の桜木瑠海。家が近いんだ。さあ3人で帰ろ!」
珠央ちゃんは席を立った。私は瑠海ちゃんとお辞儀をした。
「よろしく。名前は?」
「竹岡空です。よろしくお願いし…」
食い気味に。
「なんで、敬語なの?同い年だからタメ口でいいよ。」
「わかった。」
瑠海ちゃんは、私の話したことのないタイプの子だった。
(瑠海ってやっぱり、怖がられるんだ…)
いろいろな話をしながら、通学路を帰っていると…
「そういえば、空ちゃんの家ってどこなの?」
「次の交差点を右に曲がったところの団地。」
珠央ちゃんと瑠海ちゃんは顔を見合わせた。
「同じ団地じゃん!」
「え!」
とても驚いた。
「じゃあ、最近近くに引っ越して来た子がいるっていうのは、空ちゃんだったってこと!」
「マジか。」
2人共ハイテンションだった。
家の前まで来ると、3人の家はとても近かった。
瑠海ちゃんの家は私の家の裏、珠央ちゃんの家は瑠海ちゃんの家の2軒隣だったのだ。
(本当に、あの時はびっくりしたな〜)
「瑠海、気づかなかったの。」
「全く。」
「まあ、いっか。」
「じゃあ、また明日。」
「バイバイ。」
「じゃあね。」
私の初めての友達。
(うっ戻ったか。)