第 9 話
午前11時頃、澪の「きゃあ!」という声で利郁は目を覚ました。
「え、なに。」
そう言いながら澪の視線の先をたどると、それは利郁の股間に向けられていた。
「なんか盛り上がってる。」
「朝勃ちは生理現象です……。」
「気持ち悪い。」
「ひどいこと言いますねえ。」
「どうするの?」
「家なら抜くけど。そのうちおさまるでしょ、おかまいなく。それより……。」
「今ここで抜いてよ。」
「は!?」
「抜くとこ見てるから。」
「いや、嫌です何言ってんの!?」
「私がおしっこしてるとこ見たでしょ、だからリクも見せるべき。それでおあいこ。」
「いやいやいや見てないから。おあいことか意味わかんねーし、おしっこと抜くのは違うだろ。」
「同じようなもんだから気にしないで。」
「俺が気にするっての!」
「じゃあそれで走れるの?敵が来たらどうするの?どうやって戦うの?」
「なんだよそれ、わけわかんねーわ!」
「とにかく抜く以外の選択肢ないから。さっさと抜いて。」
「ええ……そんな。」
澪の一歩も引かない様子を見て、ついに利郁は観念する。
「わかったから。抜きますから、せめてあっち向いてて。」
利郁は背中合わせになると、ウルトラストレッチスキニーのパンツと下着をずらし、手でしごき始めた。静かな空間に、しごく音だけが響く。
「もうイきそう?」
しごき始めて15分もたとうかというころ、澪が口を開いた。
「イかないです。遅漏なんで。」
「そうなの?知らなかった~大変だね?」
「ほっといて。気が散るから黙っててください。」
それからさらに10分程たったころ、ようやく利郁は射精できた。
「イきました。」
「え?声とか出ないの?」
澪がパッと振り向く。
「ちょ、見んなよ。」
「ごめんごめん、はいティッシュどうぞ。」
「変な知識に脳をおかされてますね。声なんて出ないですよ。」
利郁はティッシュをもらうと後処理をして、身だしなみを整えた。
「手洗わせて。」
洗面台で手を洗いながら鏡越しに澪を見ると、笑顔でなにやら楽しそうな澪の様子がうかがえる。
「なんかすごい楽しそうですけど。婚約者がいるとは思えないってか、俺なら恋人がこんなことしてたら嫌だ。」
「婚約者?誰に?」
「は?小島さんに。結婚したいんでしょ。」
「別に婚約してないけど?結婚したいだけ。」
「え?あ、そ、そうなんですか。でも付き合ってる人がいる時点でこれはアウト。」
「まだ付き合うとこまでいってないけどね。」
「……あの、話が見えないんですけど。結婚したい人って誰なの。」
「よーた君。」
「よ、よーた君?待って、GPRの?」
「そう。」
「あの、それただのガチ恋やんけ。結婚はおろか付き合うこともできるわけがないやろ。」
「そんなのわからないもん。」
「わかるよ。ありえない。」
「……親と一緒のこと言わないで。」
「言うわ!親御さんの気持ちもわかるわ!今すぐ帰るぞ!」
澪に強く言葉を放ったものの、利郁は建物から出ようとはしなかった。
「行かないの?」
「不法侵入してしまったから。鍵あけっぱなしになるし、ここの人が来るまで行けない。」
「そんなことより一刻も早く去りたいもんなのに。リクっていい奴。」
「そうだね助けに行って連れ去られてこんなことなってる。」
「ほんとにそれだね!誕生日おめでとでした。風船とんでた!」
「あ、フォロワーさんにリプ返してない……。」
「早く返せよ~待ってるんですけど。」
「え、誕生日のリプくれてた?」
「くれてない。」
「ならお前は黙ってろ案件ですねえ……。」」
「せっかくの誕生日にこんなことに巻き込んでごめんね。」
「こんな経験もなかなかできないと思えば、いい社会勉強だし。男の子だから大丈夫です。」
「だよね?私のおしっこ見たし私に抜くとこ見られたしね?」
「見てねーし、見られてねーし、そこじゃねーから!」
2人がじゃれあうかのように言い合いをしていると、ガチャッとドアが開いた。室内に入ってきた人物を目にして、利郁は息をのむ。澪も不安そうな表情を浮かべている。
「大丈夫だから。」
利郁は澪に声をかけ、その人物に向き合った。




