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第 3 話

12月24日のクリスマスイブ、利郁は17回目の誕生日を迎えた。クリスマスプレゼントと誕生日プレゼントが一緒にされるというお約束のイベントではあるが、嬉しい日であることにかわりはない。

「利郁、今日あんた誕生日だから夜ごはん豪華にするの手伝ってね。お姉ちゃんがケーキ買って帰ってくるから。」

仕事が休みで家にいる母が、声をかけた。

「えっ?やっぱり今年も俺が作るの?誕生日なのに?」

「そうは言っても利郁が一番おいしく作れるし、自分の好きなもの食べたいでしょ。」

「それはまあ、そうだけど。」

利郁はため息をつく。

「なんかさあ、俺いつも言いくるめられてるよね?」

「女が3人いる家では、男の立場ってこんなもんよ。」

「えええ?納得いかねえ。ぜってー家出る。」

「どうぞどうぞ、早く独立してちょうだいね。」

利郁は母とそんな会話をしながらも、夕食の準備にとりかかる。

ローストチキンや生姜焼き、海老フライなどを作り終えたころ、姉の美奈が帰宅した。

「はい、ケーキ!誕生日おめでと。」

「あ~姉ちゃん、ありがと。」

父親は仕事で遅くなるため、家族4人でのクリスマスパーティ&利郁の誕生日会なるものが始まる。

「お兄ちゃん、プレゼント!」

まゆからは、手紙と折り紙で作られたペンギンがプレゼントされた。

「おお、これペンギン?」

「そう、お兄ちゃん動物のなかでペンギンが一番好きって言ってたから。」

「上手く出来てる、ありがとうお守りにするわ。」

利郁がそう言うと、年の離れた妹は嬉しそうに笑顔を見せた。

「そろそろケーキ食べない?利郁、持ってきてよ。」

「あの、今日僕誕生日なんですけど!?」

「メインはクリスマスでしょ~いいから早く用意して。」

「人権なさすぎじゃない?」

姉に訴えたが聞く耳をもたない。利郁は渋々席を立ったが、こんなことは日常茶飯事でお決まりの展開である。


ケーキを食べ終えてくつろいでいると、携帯の充電が40%から増えていないことに気がついた。どうやら充電器が壊れたらしい。

「うわ、やばい、最近電池の減り早いから朝までもたないんだけど。姉ちゃん、充電器貸してくんない?」

「無理。」

「使ってないときあるでしょ。」

「あってもすぐ使うから無理だし。明日も持って行くし。」

「わーかった!じゃ買いに行くからいーや。」

「なんかお菓子買ってきて。奢って。」

「いやもう、今日僕誕生日なんですよね!行ってきまーす!!」

利郁は美奈に充電器を借りることを諦めて、家を出た。おそらく最終的には貸してもらえるのだが、ちょうど店に行きたいような気もしていたからだ。

「あー!さみいよ、マジで寒いなおい。」

マフラーを身につけダウンジャケットを着ていても、寒さが身にしみる。利郁は近所のドキンホーテに向かって歩きだした。この店には食品から家電製品、衣類まで何でも揃っており利郁もよく利用している。

22時半頃店に着いた利郁は、1時間ほど店内を見てまわり充電器とチョコレートを購入した。店を出ると、イヤホンで音楽を聴きながら自宅を目指す。日中は外で遊ぶ子どもたちや犬の散歩をする人たちでにぎわっているが、深夜ともなるとすっかり人気がなくなっていた。

そして角を曲がったとき、利郁は信じられない光景を目にする。ワゴン車に人が無理やり連れ込まれそうになっていたのだ。利郁は反射的にイヤホンをとった。

「離して!」

そんな声が聞こえてきた。利郁の頭の中に声を出さなければ警察を呼ばなければという思いがよぎったが、同時にその方向へと駆け出す。

「何やってるん、ですか……!警察呼びますよ。」

利郁が声をふりしぼってそう言うと、2人の男が振り向いた。180㎝はあろうかという体格のいい男たちで、年齢は20代後半といったところだろうか。

「何だおまえ。邪魔すんじゃねえよ。」

「助けて!」

声がする方に目をやると、それはさらに信じられない人物だった。

「こ、じまさん?」

その人物とは、Twitterのフォロワーでクラスメイトでもある小島澪だ。男たちは2人が知り合いであるとわかり、何やら相談し始めた。

「知り合いか。まずいな、どうする?」

「このまま帰すわけにはいかねえな。とりあえず、こいつも連れて行くぞ。」

「連れて行ってどうすんだよ。男なんていらねーだろうが。」

「俺にいい考えがあるから、2人とも連れて行くぞ。」

利郁は全く訳がわからなかったが、ただ事ではないという状況に澪を助けようとする。

「とにかく離してください!」

そう言って澪を引っ張ろうとしたとき、男に腕を掴まれた。そしてそのまま澪とともに、ワゴン車の中へ押し込まれる。華奢な体型をしている利郁は、男たちに抵抗する間もなく車に連れ込まれてしまった。

1人が運転席に行き、車のエンジンをかける。もう1人は後部座席に陣取り、利郁と澪に話しかけてきた。

「悪いけどおまえら連れて行くからな。殺しはしねーから、心配すんなよ。」

そう言って、男は手錠を出した。

「手錠!?」

利郁は驚いて、思わず声を上げた。男は利郁の右手と澪の左手を手錠でつなぎ、身動きを封じる。すでに車は発車しており、利郁と澪はクリスマスイブの夜に連れ去られてしまった。

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