第2話
2日後、GPRのワンマンライブの日がやってきた。17時開場のため、16時半頃にもなるとライブハウス周辺には多くの人が集まってくる。利郁は到着が開場時間ギリギリになってしまい、ライブが始まる前にフォロワーの人たちと会うことができなかった。
リク:みんなライブ終わってからエンカして
まこ:ライブ終わったら会いましょうー!
利郁がツイートすると、フォロワーからリプライやいいねの反応が返ってきた。間もなく開演時間となりライブが始まると、会場は熱気につつまれる。利郁もジャンプしたり拍手したり、初めてのGPRのライブをおおいに楽しんだ。
2時間程でライブが終了し、あちこちでTwitterのフォロワー同士が会う姿が見受けられる。利郁もフォロワーと会うためにTwitterを確認したところ、ライブハウスを出たところにいるらしいということがわかった。
利郁は急いでその場所へ向かい、それらしき集団を見つける。恐る恐る近づいて声をかけようとしたそのとき、1人が振り向いた。
「えっ……。」
利郁の目に飛び込んできたのは、2日前に教室で話しかけてきたクラスメートの小島澪の姿だった。
「あ、リク!?」
「え、本当ですか!僕ぎんです。」
利郁が言葉を失っていると、他のフォロワーが次々に話しかけてくる。
「あーえっと。どうも。あの。」
「私、臣です。」
澪も話し始めた。
「え!?臣って男かと……。」
「は?男なんて一言も言ったことないから(笑)。」
「いや、でも。」
「ねえ、私たちクラスメートです~!」
澪が周囲に向かって言ってしまったため、その場にいたフォロワーに知れ渡り、またツイートによって拡散されてしまった。
「クラスメートってすごい偶然ですね~知らなかったんですか?」
「はい、全然知らなくて。だいたいこいつ、男かと思ってたし。」
フォロワーのぎんに話しかけられて、利郁はそう答えた。
「自分こそどうなの?教室にいるときとTwitterではまるで様子が違いすぎない?」
すかさず澪が口をはさんでくる。
「だから俺コミュ障だし、隠居の陰キャラなんだって。」
「隠居陰キャ!?あははははくっそ笑えるね。」
「女の子がくそとか言っちゃうあたりどうかと思う。」
「は?まじ黙れって感じだから。」
他愛もない会話やライブの感想を言い合いながらみんなで盛り上がっていたが、22時を過ぎる頃には解散してそれぞれ帰路についた。
利郁は澪と同じ電車に乗り、降車駅を確認する。
「小島さん、どこで降りるの?」
「○△駅。」
「え、まって、一緒なんだけど。」
「そうなの?一回も見たことないのウケる(笑)。」
「オーラ消してますから。」
「外でも存在感うすいんだね。」
「いや失礼すぎない?」
「リク普通に会話できてるのにね?1人でいること多いけど、寂しくないの?」
「女子じゃないから別に。友だちいないわけじゃないから。」
○△駅で降りた2人は、改札を出てからも同じ方向に向かって歩き出した。
「まって、家めっちゃ近くない?中学のとき、いた?」
「私、春休みに引っ越してきたんだよね。親が世界をまたにかけて仕事してるから、海外に住んでたの。」
「世界を、またに……すげえ。」
「転勤族なんだよね。今まではなかなか好きなアーティストとか芸能人とかってできなかったんだけど。GPRは初めて好きになったバンドだから、一生ついていく。」
澪の顔から笑顔が消えていたが、利郁はさして気にもとめなかった。
「私こっちだから、また学校でね。」
「じゃ、また……。」
「ただいまー。」
時計の針は0時をまわろうかというところだ。しかし利郁が親から咎められるようなことはなく、「お帰り」と出迎えられた。放任されているわけではないが、小3の妹まゆの世話や家事をすることも多く、実家にいながら半ば自立しているかのような生活を送っている。
「お兄ちゃんの朝帰り~。」
「まだ朝になってないよ?小学生は寝ようよ?」
利郁はまゆに寝るよう促すと部屋に向かい、いつものように日記を書きだした。
<12月17日>
GPRのライブ最高だった!ようた君の声がめっちゃよかったし、先生のベースが指すごくて死ぬほどかっこよかった。MCで先生がいろいろ言ってたのがもう忘れられない。てか臣がクラスの小島さんだったのはどういうことなんだ、、、しかも家が近所だし。でもコミュ障発動してうまく話せなかった気がする。てかフォロワーが同じクラスとかありえなさすぎて笑う。
翌週、利郁と澪の通う高校は終業式を迎えた。
リク:終業式だから午前で帰れるはずなのに担任の手伝いするはめに……
臣:ぼっちだから声かけられたんやで
リク:それありなの?!
二人は教室で顔こそ合わせたが、特に話をするわけでもなく以前と同じようにTwitterで交流するだけである。始まったばかりの冬休みと、3日後に迫る17歳の誕生日に利郁はいつもより浮かれていた。頭のなかでゲームや漫画、趣味の作業など冬休みにやりたいことをいろいろ考えながら黙々と先生に頼まれた資料作りを手伝う。このときはまだ冬休み自分にどんな事態がふりかかるのか、知る由もなかった。




