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一滴の可能性

「お嬢ちゃん?こんな所に来ちゃいけねぇよ?」

受付に居た強面の最初の一言で有る。全く面倒な外見になったもんだ・・・

「・・・如何しても情報が必要なんだ!金は言い値で払う」

「ハッハッハ。無茶言うなよ。大体何処にそんな金在るんだ?」

俺はあのクソビッチから受けた唯一マシなスキル『限定金銭作成』で金貨(日本で言う所の5千円)を数枚発生させ、カウンターに置く。

「・・・ちょっと待ってろ」

ソレを見た受付の顔が真剣な表情に変わり、金貨を全て握ると一旦奥へ入って行った。

それから暫くすると先程の強面兄さんが戻り、

「こっちに来い」

と、奥へ案内された。・・・正直何の後ろ盾も無い状況で飛び込むのはヤバイとは思う。

(・・・だが破滅する未来が確定している以上進むしか無いわな)

と、何とか自分を奮い立たせ、精々虚勢きょせいを張ろうと胸を張って堂々と兄さんに続く。

「・・・本当にガキだな」

通された部屋には、如何にも様々な修羅場を潜って来たで有ろう雰囲気を纏ったオッサンがソファーに「ドン」と此方を睨んで座っていた。

・・・あれ?威圧してんのか?それにしては・・・軽い気がする。アレに比べりゃ日本に居た頃、謝罪をしに行った先の重役の方がもっと怖かったわ。

「・・・金貨コイツを何処で手に入れた?」

そう言いつつ俺が先程出した金貨を1枚手で弄ぶ。

「・・・大量に持ってるよ。出所は・・・まぁ秘密だ」

「・・・フン。物の価値すら判らん奴にゃ無用の代物しろもんだ。持ってるだけ置いてさっさと消えな・・・」

そう言って顎で合図をすると、先程の強面兄さんが入って来たドアの前に立ち塞がり、隣の部屋に続くであろうドアから数人の悪っぽい・・・チンピラだな。チンピラABCが入って来た。

「大将、本当に好きにしちまって良いんだな?」

「あぁ。世間知らずなガキに色々教えてやんな」

Aの問いに目を伏せ、多分このギルドのマスターであろう先程のオッサンが肯定の返事を返した。

「は~・・・ま、こうなるよな。女の、しかもガキだからなぁ」

俺は肩を竦めつつ言葉を吐き捨てる。

「へっ、良く判ってんじゃねーか。直に大人にしてやるよ。ギャハハハハ」

「がっはっはっはっは」

Bの下品な話にCが笑う。俺はそんな奴らの事なぞ眼中に入れずギルドマスターの方を注視し続けて居た。

と、先程のBの下らない話が出た時にピクリと、ほんの少しだけ反応したのが判った。

(・・・アイツ、本当にギルドマスターか?)

そんな疑問を抱えたが、今は此処から逃げる事に全てを注がないとな。

「え~っと・・・サヨナラ!」

勿論もちろん此処から逃げ出す訳じゃない。逃げ道は既に強面兄さんに塞がれている。

俺は『限定金銭作成』を発動し、先程出したのと同じ金貨を十数枚空中に放り投げた。

「うぉ!!!」「お、オイ!こりゃ金貨じゃねーか!!」「何!?」

やっぱり喰い付いたなチンピラABC。派手にばら撒いた金貨を目で追い、床に「ガチャーーーン!!!」と、これ又派手な音を立て落ちた金貨を一目散にABCは拾い出す。

その隙に俺は隣の部屋に駆け込むと鍵を掛けた。

「テメェ等!何やってやがる!!!」

ギルドマスターらしきオッサンの怒号が響く、が、

「す、スイヤセン!けどあのガキは袋のネズミでさぁ。焦る必要は無いかと・・・」

Cの言葉は最もだ。今俺の入った部屋に窓は在る物の、格子が嵌められ出る事は不可能。ドアも俺が入って来た1つだけ。

状況は改善していない。

「・・・オイ!ガキ、10だけ待ってやる。さっさと出てくりゃ金だけで済ます。じゃなければ・・・判ってんだろ?」

凄みの効いた声がドア越しから聞こえる。ギルマスらしきオッサンの声だ。だがこっちだって引く訳にゃいかない。

「・・・なぁ、ギルドマスターさんよ?こんなメスガキ1人にそんなに拘るこたぁ無いんじゃね~か?」

「10、9・・・」

「・・・こっちも覚悟して来てんだよ。話位聞いてくれても良いと思うんだが?」

「8、7、6・・・」

「あっそ。じゃぁこっちも覚悟決めるわ。あんたん所の名前使ってこの国の『かねの価値を暴落』させてやるよ」

「5、よ・・・何?」

そりゃ喰い付くよなぁ。

「テメェ・・・何言ってやがる!!」

ギルマスらしきオッサンの声を無視して、俺は『限定金銭作成』を使い部屋の中にどんどん鉄貨(大体50円位)をドアに向かい多量に出して行く、それこそ部屋を『覆い尽くす』勢いで、だ。

「そのままの意味さ。アンタに見せた金貨を『アンタの所の名前』で、『市場に大量に』ばら撒く!」

「な・・・!?」

誰かの声が微かに震えたのが判った。それが如何言う事か判らない頭じゃマスターなんざ出来ないわな。そして、あのソファーに座ってたオッサンが此処のギルドマスターじゃ無い事も確定~。

「何訳判んねぇ事言ってやがる!だがなぁ・・・テメーに逃げ道はぇぞ!?」

「だったら作るだけだわ」

「ハッタリは効かねぇぞ!!!!」

どんどんメッキが剥げて来てんぞ?ギルマスモドキさん。

「どうかな?」

『限定金銭作成』を続けつつ、窓の格子へ部屋に飾って有った装飾品の盾をあてがう。

そして今度は金貨を窓に向かい大量に発生させ始めた。

「・・・クソが!合鍵を貸せ!」

「へ、へい!」

ガチャッ!と鍵が開く音。が、時既に遅しだ。

「あ、開かねぇ!!」

此方側への『押し』戸なのは先程のチンピラを見て判っていた。なんで鉄貨をドアの前に大量に置けばこの通り。

「クソ!クソがぁ!!ふざけんじゃねーーぞ!!!クソガキィ!」

ドン!ドン!とドアを破ろうとする音だけが虚しく響く。

「無駄無駄。その扉の前にゃ数千万枚以上の鉄貨が積んで在るからな。迷惑掛けた料金として『大量』の金貨と一緒に置いて行くわ」

「・・・お前、何者だ?」

お、この声はあの強面受付け。・・・成る程、本命はそっちだったか。

「今更だね。良かったじゃねーか、たった1時間程度の間に大金持ちだ。・・・まぁ数日後に同等の価値が付くかわかんねぇがな!」

そうこうしている間にも、大量の金貨の質量を受けた窓の鉄格子が「ビキッ!ビキビキッ!」と悲鳴を上げ続け、隙間からは既に金貨が漏れ道端へと降り注ぎ始めて居た。

「・・・そんな事を許すと思うか?」

「思わんね。ついでに手段だって問わないんだろ?アンタ等」

「・・・其処まで判って居るなら無駄な事はしない事だ」

「無駄ねぇ、勝算が無かったらこんな真似するか如何か考えて見りゃ良い」

「・・・・・・・・・」

「・・・さぁて、交渉だ。取り合えずお互いの『今の』立ち位置・・・ギルドマスターなんてやってる位なんだから判るよな?」

そして暫くの沈黙。その間にも金貨は止めない。既に部屋の1/3は通貨の山だ。

「成る程。・・・全く、見誤ったか。少し可愛がる心算つもりが逆に生殺与奪せいさつよだつを握られるとはな・・・此方の負けだよ」

・・・何とか希望が見えて来た様だ。全く・・・心臓に悪い。





「で、だ。何が望みなんだ?」

ドア越しに語りかけてくるギルドマスター。

状況が状況だけに、おれ自身の保身も兼ね現状での話し合いを望み、向こうがそれを受け入れた形だ。

「人探しだな」

「・・・随分と物騒な人探しだな」

「仕方が無ぇさ。こっちは切羽詰ってる・・・無茶した分の色は付けるさ」

「・・・中々判ってる様だな・・・ガキとは思えんよ」

「・・・なぁ、ガキガキって言うけど・・・俺幾つに見えるんだよ?」

「・・・12、3じゃないのか?」

「マジか・・・まぁ自分でも良く判ってねぇからなぁ。じゃぁ14って事にしとこう」

「何だそりゃ!?しかも俺の意見丸っと無視かよ!?」

「ハハ・・・そいつは悪い事をした」

「・・・フッ、全く、調子が狂うな。お前と話すと」

何とか和ませる事は出来た様だ。

「・・・誰を探す?」

そしてギルマスが本題に入った。

「・・・『背徳者』。ニーマの教えに背く・・・『背かなきゃならなかった』奴ら」

「オイオイ、そいつぁ・・・」

「流石察しが良いな。出来れば腕利き・・・超が付く程の一流が見つかれば万々歳だが・・・」

「如何言う事でっさぁボス?」

堪らずチンピラBがギルマスに聞く。ギルマスは少し呆れたような口振りで、

「・・・暗殺者アサシンの事だ」

「ハァ!?んな奴居る訳が・・」

「居るさ。歴史ってのは・・・深い闇だって抱えるモンだ」

「そういうモンですかねぇ?」

「まぁお前ににゃ関係ない話だな・・・期間は?」

「出来るだけ早く」

「善処しよう」

「有り難いね。費用はこの部屋の通貨で・・・足りない分は・・」

「・・・お前がドンだけ無茶したかは判らんが、足り無くなる事は無いだろ?」

「・・・まぁな。じゃ、契約成立って事で?」

「問題無い」

ギルマスとの話も付き、やっと一息入れられそうだ。

「ではそろそろ部屋に入れてもらえんか?」

「あぁ、スマン。ドアの障害物は粗方退かしといた。俺は窓から失礼するわ」

ガタガタの格子に向け飾ってあった剣を取り、叩き付けると「バキン!」と音を立て、格子が地面へと落ちて行く。

「おい!此処は3階・・・」

「悪いな。念には念を入れときたいんだわ」

そう言いつつ俺が窓枠に足を掛けた所でガチャリとドアが開いた。

「お前!名前は!?」

背後からギルマスの声が響く。名前かぁ・・・そう言や考えてなかったなぁ。名前、名前ねぇ・・・バッドステータスばっかだから・・・

「・・・バッド、バッドとでも呼んでくれ!」

そしてそのまま・・・

ドチャ!!!

・・・着地に失敗する。

「いっったぁあぁぁぁぁーーーーー!!!折れた!!絶対肩と腕折れた!!!!!」

そんな叫びを上げつつ走り去る俺の後姿をギルマスは3階の窓から眺め、

「バッドか・・・可笑しな奴だな」

と苦笑いしながら呟いた。


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