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10話 再び都会

「それからは、先生が持ち出してくれた非常食を食べたり、寝たりしてたよ」


 俺は、一階の空き教室で和と幹也に話を聞いていた。


「なるほどな、ゾンビ化するのは噛まれてすぐとは限らないんだな」


「まぁ、あくまでも予想だけどな。一応、先生と俺たちの見解ではそういうことになっている」


 初日に女子生徒が噛まれてゾンビ化したが、その印象が強すぎて、噛まれたらすぐゾンビ化するのだと思っていた。

 どうやら違うらしい。

 ということは、今回の体育館と同じように内部から崩壊してしまう避難所も少なくないはずだ。

 本当に大変なことになったな。


「というか、そろそろ清の話もしてくれよ。正直、お前の方が気になることだらけだよ」


 それもそうだな。

 一人だけ逃げ遅れた俺がどうして生きていたのか?

 どうやっていきなりトイレに現れたり、この教室に連れてきたりしたのか?

 疑問は尽きないだろう。


 そこらへんのところをまとめて話してやった。

 ちなみに美奈のことは伏せた。

 えっ?だってからかわれそうだし……。


「まぁ、何というか。現実離れした話だな」


「ステータスとかゲームみたいだね」


 まぁ、急に信じろと言われても半信半疑になるだろう。


「おとといの襲撃は清が防いでくれたんだな。ありがとう」


「僕からもお礼を言うよ」


 そう面と向かって言われると照れるな。

 まぁ、俺自身なんで立ち向かっていけたのかはわからないのだが。

 結果的に、あの戦いで強くなれたのだから良かったのだろう。


「とりあえず、ゾンビを倒せばレベルアップして力が手に入るんだな。ゲームみたいに」


「全員が清みたいな強いスキルを手に入れられるのかな?」


「それは分からん。俺以外にスキルを持った奴に会ったことがないからな」


 そういえば、美奈はどうしてるかな。

 そろそろスキルを手に入れただろうか。

 いや、もしかしたら戦闘とか一人で出来ずに震えているかもしれない。

 やべぇ、今すぐ帰りたくなってきた。

 まぁ、そういうわけにもいかない。


「とにかく、今言った情報は先生たちに伝えてもいいが俺の名前は伏せておいてくれ」


「えっ?なんでだ?」


 俺が凄い力を持っているというのが知れたら、じゃあ守ってくれよという話になるかもしれない。

 確かに「空間支配」の能力があれば、全員分の食糧を取ってくることも不可能ではない。

 だが、ずっと俺が養うわけにはいかない。

 俺は、この状況のことをもっと知る必要がある。

 だから、生徒や先生たちに自分だけで生きていける力を得て欲しいのだ。


 そういう節のことを和と幹也に伝えた。


「そういうことか。そりゃ、清に頼りっぱなしってわけにもいかないよな」


 どうやら、分かってくれたようだ。

 こいつらなら、きっとゾンビを倒して力を手にできるだろう。


 この後、こいつらをトイレに送り届け学校を出た。

 和や幹也なら、うまくゾンビを倒して北校舎の奴らも救ってくれると信じている。

 まぁ、俺にできることはこの周辺のレベル2以上と思われるゾンビを倒しておくことだけだ。

 俺は、「絶対切断」でゾンビを駆除しながら都会へと戻って行った。




 ☆☆☆


 やはりそうか。


 再び都会へ戻ってきた俺は、その惨状を見てそう思う。

 体育館と同じ現象がここでも起こっていた。

 おそらく、避難民の中にゾンビに噛まれた奴が混じっていたのだろう。

 前回来た時に比べ、無事な避難所はかなり減っている。


 近くにあった避難所跡に立ち寄ってみる。

 オフィスビルを避難所にしていたらしい。

 窓ガラスは破られていて、中にはゾンビがうろついている。

「空間把握」で見るに、まだまだ備蓄食糧は残っていた。

 とにかく回収だな。

 おそらくここもゾンビに噛まれた奴がいて、内部から崩壊したのだろう。


 とりあえず、美奈の様子を確認したい。

 俺はあの廃ビルを目指して転移した。

 もちろん、オフィスビルにあった備蓄食糧も一緒にだ。




 転移を済ますと目の前には美奈がいた。

 急に現れた俺に驚いているようだ。

 そういえば、こいつにはスキルのことを言っていなかったな。

 どうせ、戦っていればそのうちスキルのことを知るだろうし、今日教えようと思っていたのだ。


「神崎さん、もう戻ってきたんですか!?ていうか、どっから現れたんですか!?」


「まぁまぁ、落ち着いて。今から話すから」


 少々、興奮気味の美奈をなだめながら俺はスキルのことを打ち明けた。


「そうだったんですか。実は私もスキルを覚えたんですよ」


「ゾンビと戦ったのか?大丈夫だったか?」


「大丈夫です。スキルは二階からゾンビを見てる時に覚えました。だからゾンビとは戦ってません。なぜか、今日になって起きたらゾンビが増えてたんですよ。ちなみにスキルは鑑定眼っていう名前です」


 鑑定眼か。名前からだいたい想像はつくが。

 ん?てことは俺のスキルとかも分かっていたのか?


「じゃあ俺のスキルとかも見えてたのか?」


「いえ、どうやら見えるのはレベルだけのようで、8レベルってことぐらいしか分かりません」


 なるほど、だが便利なスキルだ。

 見るだけで相手の強さが大まかに分かる。

 だが、戦闘系に使えるスキルではないな。


「まぁ、使ってるうちにもっといろんなことか見えて来ると思うから、積極的に使って行ってくれ」


「はい、分かりました」



 その時、常時展開することが習慣となった「空間把握」が、凄まじいスピードでこちらに向かってくるゾンビを捉えた。


「美奈、伏せろ!」


 と咄嗟に叫ぶと同時に、目の前に「空間隔絶」を広げる。

 よく考えると伏せさせる意味はなかったな。


 土煙がはれると、俺たちを襲おうとしたゾンビの姿が見えてきた。

 全身黒装束、まるで忍者のようだが見えている肌はまさしくゾンビのそれだ。

 そして、手に持っている小刀を「空間隔絶」の壁に突き立てていたが、決して壊れることのない見えない壁に困惑しているようだ。


「コレデオワリダトオモッタノダガ、マサカフセガレルトハ」


 えっ?喋った?

 今聞こえた言葉は、片言だがまさしく日本語だ。


「神崎さん、このゾンビのレベルは12です。気をつけてください」


 美奈が鑑定の結果を伝えてくる。

 というか、ゾンビにもレベルが存在したようだ。

 てか、高っ!

 俺も相当数のゾンビを殺してきているはずだが、そんな俺より4つも上だ。

 それだけレベルが高ければ、知能も高いはず。

 喋れてもおかしくはないか。


 まぁ、そんな12レベルの攻撃力でも「空間隔絶」を破れないようだ。

 よって攻撃を食らうことはない。

 いつものように、「絶対切断」で終わりだな。


 俺は、目の前の黒装束に向けて「絶対切断」を発動する。

 だが、黒装束はそれを予知していたかのように横っ飛びでかわす。

 結果、「絶対切断」は何もない空間を切り裂くことになった。


 躱された?あの「絶対切断」が、あの不可視の刃が。

 とりあえず、俺と美奈の周りを「空間隔絶」で覆った。


「ソンナモノニハアタラン、レベルジュウニヲナメルナ」


 じゃあ、当ててみせようじゃないか。

 俺は、立方体で黒装束を完全に囲うように「空間隔絶」を展開した。

 そして、少しずつその立方体を小さくしていく。

 ついに、一辺が2メートルぐらいになったところで、黒装束が自分の置かれている状況に気がついた。


「マサカ!?ヤ、ヤメロ!」


 もちろんこんなところで止めたりしない。

 人間、勝てると思った瞬間に気が緩みやすくなる。

 だから、詰めはキッチリとだ。


「襲う相手を間違えたな。運が悪かったと思って諦めろ」


 俺は、「空間隔絶」で完全に逃げ場をなくしてから「絶対切断」で頭を真っ二つに割った。

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