壺中天パート1
壺中天をテーマにした(ホントか?)
ちょっと変わった作品です。
ここまで来たら……ぜひ、読んでいってくださいね。
壺中天。
それは、ツボの中に広がる別世界。まるで極楽浄土を絵に描いたような場所だという。そこには仙人が住んでいるともいわれているが、もちろん本当かどうかは誰もしらない。
「結局、押し付けられちまったな。どうするよ? この大きなツボ」
大学の先輩が江戸時代から続く旧家で、夏休みに遊びに来ないかと誘われて来たのはいいが、掃除やら接待で(なんで俺!?)良いように使われたあげくにいらないからともらったのがこのツボだった。
何でも江戸中期ごろに当主が道楽で集めた骨董品の一つらしい。この家は骨董好きが原因で明治以降に大変な苦労をした経験があるらしく、蔵をそのままにしていたり、話題に上ると妙にピリピリした雰囲気になるので、先輩が意を決して、
「金になる、ならないの問題じゃない」
そう言って無理やりに処分しようとしていたらしい。そこでこのツボを貰ったのだが……やけに大きいし、しかも中国から伝わるいいツボらしいが俺には花を生けるなどといういい趣味は持ち合わせていないので、困ってしまったのだ。
ふぅ、ほんとにどうするかな、これ。実家もマンションだし、いらないだろうな。そんなことをぼやいていると、何やらツボから声が聞こえてくる。
「ぬし、ワシを捨てるなどとは思わぬことだな」
「………」
「おいっ! 聞いているのか、若造よ」
「………」
「ワシを無視するとでも言うのか。ならばこうしてやる」
置いてあったツボが勝手に動き、中から煙のように白い影が現れた。
やっぱり。あまり厄介ごとには巻き込まれたくはなかったんだけど、こうなってはもう仕方ないか。
「出てくるなよ。話がややこしくなるからさ。黙っていればよかったのに」
「おぬし、わざと無視していたのか!! それじゃ話が進まんではないか」
こっちは一向に構わなかったんだけど。
まぁ、せっかくツボから出てきたんだし、話くらいは聞いてやるか。
「それで、あんたはツボの精霊なのか? 魔法のランプみたいな」
「ふん。そんなものと一緒にするな。ワシは……仙人じゃ。それも超大物のな」
自分で超大物とかいうなよ。かえって小者に聞こえるって。
「それで、なんで先輩の家で化けて出なかったんだよ。こっちは迷惑なんだが」
「いや、ワシは幽霊じゃないし。出ても雰囲気が悪くての」
確かに先輩の家にいたら間違いなくあと百年はお蔵入りだっただろうし。それで、この仙人の目的は何だ?
「俺に何をしろと?」
「ふむ。簡単なことじゃ。ワシと一緒に酒を飲む。それだけじゃ」
「本当か? それ以上何もないだろうな。ツボに招待されたら帰って来られないとかそういう話ならごめんだぞ」
「うぐっ!?」
「図星かよ。絶対に行かないからな」
まったく。なんて仙人だ。言葉巧みに人を自分の巣穴に引き込む悪魔のような感じだな。まさか! 仙人にはそういう趣味があるのか! どっちにしても俺は嫌だね。彼女もいるんだし。
「そういうなよ。ワシも一人でいると寂しいのじゃ。なんせ永遠に一人。動物はおれど人はいない。植物も語りかけてはくれるが人恋しいのは治せんのでな。女でも男でもいい。誰かと……」
力があるってのはそれはそれで空しいもんなのかね。
まぁ、永遠を手に入れるのにそういうリスクは考えなかったんだろうか? 俺には仙人とかいう連中の頭の中は解らないな。しかし、どうする? このまま話している訳にはいかないしな。個人的にはさっさとお引き取りいただきたいんだが。
「ま、少なくとも俺は嫌だが。一緒に行ってもいいっていう連中ならどこかにいるかもしれないぞ」
「本当か!? ならば探すのを手伝うのだ!」
やれやれ。
これでやっと話が終わるか。思ったより長くかかってしまったな。
「じゃ、準備してくるからツボに入ってろよ。出てくると色々と面倒だからな」
「うむ。ではしばしさらばじゃ」
俺は溜息を吐くと、テーブルに置いてあった車のキーを取る。
ここからだと一番近い所で十分ってところか……。
ツボを綺麗に布で包み、入っていた桐製の上等な箱に入れる。そして俺はリサイクルショップへと車を走らせた。
いかがでしたでしょうか?
コメディーな作品ですが、自分では好きな展開になっています。
ところで『パート1』ということは……?




