第四騒動 俺って凶暴顔?
いやぁ〜、にしても小説書くのって大変だね。
いつまで逃げ続ければいいんだろう。体力ももう限界に近かった。途中で帝国兵に出くわした。私を見た途端の顔が今でも脳裏に浮かぶ。
恐怖、
憎悪、
侮辱、
強欲・・・。
多くの感情を含んだ人間が、私を追いかけてくる。何で戦おうとしないんだろう?何で逃げるんだろう?皆と一緒にいる時は戦っていたのに・・・違う。私は“戦って”なんかいない。“守られていた”だけだった。皆は私を守る為に私を逃がした。皆はそのうち殺される。もしかしたらもう殺されているかもしれない。ジュードさんが放つ魔力を感じようにも、今の私では感じられない・・・私は弱い。前からわかっていたけど、改めて自覚すると悔しい。でもどうすることもできない。皆がいたから、自分に自信が持てた。国中が私を侮蔑したり、殺そうとする中で、あの人達だけ、私に優しくしてくれた。その人達はもう、私の手の届かない所にいる。もう嫌。私が死ねば全て済むことなのに、大切な人達がもうこれ以上死ぬのはもう嫌なの。帝国兵に傷つけられたこの体じゃあ、もう逃げられない。人の気配がする。その人が私を殺してくれる。だんだん意識もなくなってきた。
「母さん・・・。」
昔死んだ優しい母さんが、頭の中で微笑みかけてくれた。もう少しであっちに行ける・・・そう思うと、嬉しくなってきた。私が死んだら、母さん怒るかな?・・・いいよね。もう、つらい思いはしたくないもん。メルさん達が怒るかもしれないけど、皆ももうすぐ死んじゃうんだよね?そうしたらまた会えるよね?もう、私が死んでも悲しむ人なんていないから・・・「おい」もうすぐ終わる・・・私の命も、争いも・・・全て終わる「おいって!」母さん、私を・・・連れて
「おい起きろ!!」
「・・・え?」
ゆっくり瞼を上げると、そこには茶色い逆立った髪をした男の人がいた・・・。
血の跡を追っていくと、少し広い所に出てきた。なんてゆーか俺が最初に倒れた所より若干広いな。ふと、正面を見てみると・・・。
「あ。」
木の幹にもたれ掛かっている女の子がいた。見た目10才前後。眩しいくらいの金髪を肩の辺りで切りそろえていた。茶色で動きやすそうな半袖のシャツに同色の短パン。革靴も茶色。肌真っ白。夥しい赤・・・。
「って赤!!!!!???」
何てこったい!肩の辺りから血が出てきているじゃねぇか!こんないたいけな小さな子供に何て惨いことを!どこのどいつだ!?ぶっ殺す!!ってんなこと考えてる場合じゃねーや。俺は女の子に駆け寄って屈みこんだ。改めて見てみると、うん、超かわいい。こんな子を秋葉原で迷子にさせたら、世のロリコン野郎どもに何されっかわかったもんじゃねえな(ロリコンの皆さん、ごめんなさい)。あ、また違う思考に走った。後悔した。とにかく意識はあるな。でもかなり衰弱している。
「おい。」
とりあえずキズに触らないように揺する。起きない。
「おい!」
少し力を入れて揺すってみた。起きない。呼吸も弱弱しくなってきてかなりやばくなってきている。こうなったら・・・俺は覚悟して息を大きく吸い込んだ。
「おい起きろ!!」
さっきよりも強く揺すった。声も半端ねぇ。
「・・・え?」
女の子はゆっくりと目を開けた。その瞳はかなり綺麗なブルーだ。ブルーアイズだ。でも今では弱く光っている。やばい、血色もかなり悪い。
「しっかりしろ!今止血してやる。」
俺はポーチからガーゼと消毒液を取り出し、ガーゼに消毒液をたっぷりと染み込ませてから傷口をゆっくり押さえた。
「!!」
女の子は痛みに驚いたのか、体をビクリと引き攣らせた。
「我慢しろ。」
俺は包帯を取り出すと、肩と脇の下をグルグル巻きにして先を裂いて結んで固定した。一先ず止血は終了。
「さてと・・・。」
俺は辺りを見回した。この子の手当てをまともにするにも、こんな風通しがよすぎるところだと逆に衰弱しちまう。ただでさえ小雨で気温が低いってのに。
「・・・お?」
ふと見ると、1キロ先に根っこが湾曲して洞穴みたいな状態になっているのを発見した。あそこなら大丈夫そうだな。俺はそう思い、傷に触らないよう、女の子を抱き上げ(俗に言うお姫様抱っこ)て、あまり揺れないように目的地へと歩き出した。足元の根っこが邪魔で歩きづらく、苦労したけどやっとこさ到着。根っこが幾重にも重なっていて、上なんか隙間なし。地面も少し湿ってるが、ビニールシートを持ってきたから大丈夫だ。うん、まさに完璧♪とりあえずこの子の介護が先決だ。一旦女の子を降ろして、ポーチの中に小さく折り畳んだビニールシートをサッと敷いてからゆっくり寝かした。
「まぁ、こんな所でもないよりましだからな。しっかりしろ。」
「・・・。」
何か怯えた目で俺を見ている・・・怯えた目?
「どうした?」
「こ・・・。」
こ?
「来ない・・・で。」
弱弱しい声で捩りながら言った。俺から離れようとしているのか?俺なんかした?した覚えはないんだがな・・・。
「あ〜・・・俺、何かした?したなら謝ろう。」
俺は安心させるように出来る限りの笑顔で言った。
「・・・。」
女の子は疑わしそうに俺を見つめた。俺、本当に何かした?
「ころ・・・さないの?」
「・・・は?」
“殺さないの”?何言ってんだこの子は?そんな年で物騒なこと言っちゃいけません。
「何で?」
俺はあっけらかんと答えると、女の子は驚いたように僅かに目を開いた。もしかして俺って凶暴顔?いや、絶対違う。違うと思いたい。
「何でって・・・。」
「コラコラ、んな恐い事言ってないで、こっちで安静になれ。」
とりあえず軽くショックな気分を振り払うかのように俺は女の子を優しく元の位置に戻した。枕の代わりに、タオルを何枚も重ねて折り畳んだやつを女の子の頭の下に置いた。
「俺はソウジロウ。坂本 宗次郎だ。お前は?」
「・・・。」
俺は自己紹介した。相手をよく知るには、まず名乗らないとな。だが女の子はまぁだ口を閉じている。俺、そんなに信用ない?ロリコン野郎なんぞより遥かにマシだぞ。まぁロリコン全てが行き過ぎたことするわけじゃあないがな(でも危険)。言っておくが俺はロリコンじゃあないぞ。ホントに。
「ん〜・・・。」
にしても困った。これでは治療しようにもまともに治療できん。この子の恐怖感を取り除かないと、どうにもできないし・・・。
グゥウウウウウウ・・・
・・・腹減った。
「メシにするか・・・。」
俺はポーチからカ○リーメイトの箱を取り出した。味はフルーツ味だ。俺これが好き。中身から二つの袋を取り出し、一つを破ってブロックを取り出した。それを女の子に差し出す。
「ほら、食いな。」
けれどとうの本人は警戒してブロックを見つめているだけ。仕方なく俺が一齧りして見せる。
「毒入っちゃねぇぞ?」
齧った物を再び差し出す。俺が齧った効果があったのか、おずおずと手を伸ばしてそれを受け取り、数秒ブロックを見つめた後、少し齧った。んで、また数秒沈黙・・・あ、猛烈にがっつき始めた。旨かったんだな、そうだったんだな。俺ももう一つのやつを開けて食べた。これだけでも少しは栄養にはなるけど、この子の怪我を治すのにはこれだけじゃあ足りねぇ。でもこの辺りで食い物とかを探すとしても、道に迷う可能性もあるし、何よりもこの辺は詳しくないから何が食えるかわからない。下手に動くよりかここで様子を見ていよう。そっから考えりゃあいいさ。んで、二人揃ってカ○リーメイトを平らげると、また沈黙。さて、どうしようかね。
「・・・フィリア・・・。」
「ん〜?」
「フィリア・フィン。それが私の名前・・・。」
やっと名乗ってくれた。さっきよりも血色が良くなってるような気がする。単細胞?いやいや、失礼だなそれは。
「オッケーよろしく♪」
俺は出来る限り優しく(もといニカッと)フィリアに笑いかけた。フィリアは目線こそ合わせないが、静かにコクリと頷いたように見えた。
あ、それと俺のポーチの中が気になった人も多分いるだろうと思うが、こいつぁTop Secretだ・ぜ☆
作者 ソウジロウのポーチって何でも入ってるんですよね。例えばどこ○でもドア〜♪ ぶべし!!
ソウジロウ んなもんいらんわヴォケ。