第三騒動 謎な双子と謎な子供
最近暑くなってきた今日この頃、バイトの皿洗いもしんどい・ぜ☆
「づぅ・・・。」
俺は体中の痛みを感じながら目覚めた。けれど今でも頭の中はボンヤリしている。だんだんと記憶が戻ってきた。あ、そっか。俺は確かトオルが作ったタイムマシンの暴走に巻き込まれて・・・とゆーことは・・・。
「ここはどこだ?」
俺はゆっくりと立ち上がって辺りを見回した。木、木、木、木、木、木、木、木、木、木、木、木、木、木・・・・・・・・・・木ばっかやないかい。てことはどっかの林?森?山?ジャングル?考えれば考えるほどよくわからんようになってくる。木以外の違いと言えば、どんよりした空模様に小雨が降っているという、何とも腹の立つ悪天候だということ。おかげでちょっと泥付いちまったじゃねーかよチクショウ。にしても、タイムスリップしたってゆーことは、俺は今、過去か未来のどっちかにいるってことだよな?だとするとここは日本のどこか?それとも外国か?まぁどっちでもいいがな。つーかタイムスリップしたとも限らんし、家に電話してみようかね。
トゥルルルルル・・・トゥルルルルル・・・ガチャ お掛けになった電話は、電波の届かないところにいらっしゃるか・・・
・・・MAZIKAI?※(マジかい?)本気と書いてマジですか?あ、そーかここの周りは木だから圏外なのか。ああ、そうかそうとなればさっそく行動を起こして、電波の届く場所に移動するか。人間何事に置いても冷静判断が一番。じゃないとサバイバル生きていけねぇぞ。
「さ、てと。」
とりあえず俺は適当に歩き出した。コンパス持ってねぇし、あるといえばトオルから渡されたこの火掻き棒とポーチの中の荷物ぐらいだ。まぁとりあえず歩いてれば抜け出せるだろう。早いとここんなジメジメした所抜け出さないとな。早く帰ってあの自称天才バカ野郎には地獄を見せてやらねぇといけねぇし。ああ、楽しみだ、ぐふふふふ・・・。
で、俺は今木々の間を歩いていた。辺りは小雨のせいで霧が立ち込めていて、視界が上手くきかない。しかも周りの巨木の夥しいくらいの根っこに足を取られそうになるし、結構ハードだ。でも、これ結構幻想的な風景だな。写メ撮っとこうかな。
ティロリン♪
本当に撮っときました♪因みに俺の背後にはでっかい熊さんが倒れ伏しておりますが、先ほど奴の攻撃を掻い潜りながらボディブローで突き上げて、拳にのめりこんだままブンと投げ飛ばして止めに踵落としを首に喰らわしてやりました。当然死んでおります。グロいから血は流しておりません。ヒドイと思うが、これはもう正当防衛であり、やらなければ死んでいましたからそこを考慮してください。
「にしても何だよここは。」
心の中で微妙な敬語を話した後、俺はもう一度熊を見下ろした。普通の熊にしてはでかすぎるし、何よりこいつの額には明らかに異質な第三の目があった。こんなの、動物図鑑に載ってねぇぞ?ここが過去なら絶滅種か、未来なら遺伝子操作した生物兵器か。可能性は後者の方が高いが、まぁ危険に越したことねぇな(じゃ倒したお前は一体と思う奴、首絞めてやるから名乗りあげろ♪)。でもここ本当に日本か?この大木だって日本じゃ見ねぇ種類だ。未来だったらこういうのが外国から日本に伝わってそれで今ではここまで成長して増えたとかならわからんでもないが、俺はこう見えても植物とか生物に関しては結構物知りで、学校では『物知り博士一号』とかいう訳のわからんあだ名がある程だ。外国でもこういうのがあるのか?あ、あるか。品種改良とかすればいい。それしなくてもでかい木とかあるから当然か?じゃやっぱここは未来なのか?そうなのか?
「「それは違います。」」
あ、また思考読まれた。サキの奴に思考読まれてツッコミ入れられたよなぁ。って、え?
「誰だ?」
俺は一応警戒態勢に入ったまま振り返った。が・・・。
「・・・子供?」
そう、そこにいたのはまさにちっちゃい女の子。しかも同じ顔が二人。つーことは双子か?双子だな。よし決定。しかも顔だけじゃなくて服までお揃かよ。何の飾り気もない白のワンピースと白い肌と白い髪と白い瞳・・・全部白かい!!思考ツッコミ爆発!!まぁ、どーでもいいやそんなこと。それにしても・・・。
「どうした?子供がこんな所でウロウロして?親はどうした?」
俺はとりあえず迷子に対して言うセリフを言った。本当にこんな所で何してんだこの子らは?仮にも森だぞ?あ、狩人の娘か何か?それだったらこの辺詳しいかも?
「私たちは」「この森の主ではない。」
俺が口開こうとしたら、また思考読まれて遮られた。これって本当に読心術?
「私達は」「人の心を察することができます。」
あ、本当なんだ。すごいねキミ達、エスパー?学会に発表したら?スターよスター。まぁ望んでいないならせんでもいいがな。てゆーかその術他人のプライベートの侵害になるからやめてくんねぇ?
「「それは無理です。」」
・・・無理か。つーか二人同時に喋ったり言葉繋げて喋るのクセか?雰囲気あるけど。
「・・・まぁいいか。」
思考中断。いちいち考えてたら疲れてきた。普通に会話しようそうしよう。
「で?何の用なんだ?本当に迷子なら一緒に行くか?」
「ここは」「あなたの知る世界ではありません。」
あ、無視られた。
「俺の知る世界ではない?」
とりあえず乗っておこう。
「ここは過去でも」「未来でもない。」
過去でも未来でもない?
「じゃあここどこだよ?」
「この世界の名は」「ラシュバルトといいます。」
らしゅばると?ああ発音ムズい名前。
「この世は今」「闇に喰われつつあります。」
「・・・は?」
「あなたは闇と」「光の調和を再び戻せられる。」
・・・What?何抜かしてけつかるんですかこの方々?
「今あなたの」「すべきことは・・・。」
「人の血と」「妖精の血」
「二つの血が交わりし」「忌み嫌われし者」
「「その者に出会うこと。」」
・・・あ〜・・・何というか
「その後の選択は」「全てあなた次第・・・。」
てちょっと待てやコラ。
フッ
「・・・へ?」
消えちまった。いや、比喩とか無しに。いきなりふっていなくなっちまった。てゆーか俺は何故に普通に会話していた?もしかしたら電波少女じゃねぇのか?それをまともに受けて何してんの俺?あ、てゆーか聞くの忘れてた。
「お前ら誰だよそしてここどこだよ・・・。」
俺の無情の呟きは静かな森の中に溶けていった・・・とか詩的なこと思っててもっしゃーない。まぁあの子らの言うとおり、ここが過去でも未来でもないかもしれんが、また人に会ったらここがどこか聞けばいいさ。何でもかんでもすぐに決め付けりゃあいいってもんじゃないしな。そうと決まればさっそく・・・ん?
「血?」
ふと足元を見てみると、血の跡が根っこに点々と付着しており、よく見ると森の奥まで続いていた。小雨のせいで地面は湿っていて根っこは薄黒く変色していたが、それでもはっきりと認識できた。しかもまだ新しい。つーことは人がいるのか?
「あの双子ってなわけでもねぇしなぁ・・・。」
何か厄介なことが起きそうだが、血がこんだけ流れているならそいつは結構重症だろう。俺はとにかく根っこを跨ぎつつ血の跡を追っていった。