第二十二騒動 目指せ!盗賊捕獲コンプリート!!その一
「うわっちゃ〜、こいつぁヒデェ・・・。」
村に着いてすぐに目に入ってきたのは、燃え盛る火炎に包まれた家々。ただでさえ小さい村だってのに、これだとすぐに無くなりそうだ。つーか何で朝っぱらから?普通こーゆーのは夜攻めろよ。いや攻めてこんでいいがな。
「!ソウジロウくん上!」
背後にいるリリスが叫ぶと、俺の頭上から何か音がした。ついでに目の前の俺の影の上に別の影がある。
でもそんなんで驚く俺じゃないね。
「ほい。」
「ぐぶあ!?」
真上に向けて気合球を放つと、また遠いお空へと飛んでいくどっかの誰かさん。声からしてオッサンだな。
「はい、全員よぉく聞け。」
で、俺は振り返った。
「まず村にいる盗賊らしき奴らを見かけたら片っ端からぶちのめせ。それよりも村人救助を優先させるように。あとついでに・・・。」
ここで一泊置く。
「敵は絶対に殺すな。気絶させたら縄かなんかで縛っとけ。」
『ラジャ!!』
ハモんのも慣れたな。
「じゃチーム決めっぞ〜。まずは俺とリリス、カイル、マサシ。で、サキとメルとジュードとシェリーで。トオルとフィリアはお留守番。異議は却下。」
あ、何か何名かずっこけた。『却下』の言葉辺りで。
「そんで何かあったらサキは俺のケータイに電話しろ。俺もそっちに何かあったら連絡する。」
「わかったわ。」
「そんじゃ緊急作戦名、『盗賊討伐コンプリート大作戦』スタート!!!」
『おぉぉ!!!』
俺のチームとサキのチームはそれぞれ反対方向へと駆け出した。
こちらはソウジロウチームルート
「ソウジロウ、出てきたぞ!」
マサシが叫ぶ。あちこちの路地から下卑た笑いをしている鎧を着たオッサンどもが出てきやがった。何か舌なめずりしてる野郎もいるし。うーわ気色悪ぃ。
「おいおい、ガキが揃って何してんだぁ?」
「ママでも探してんでちゅか〜?」
「へへっ、ガキはとっととお家帰っておねんねしときな。」
うわっちゃあ、めっちゃガキ扱い+バカにしてやがるなぁ。
はっはっはムカつく。
「誰がガキだ誰が!俺らは大人だ!高校生だ!」
「黙れバカ。」
「おぅ!?」
バカ(マサシ)が余計な事言いそうになったんで腹を殴る。そして膝を着くマサシ。それを見て呆然とする周りの皆さん。
「ふぅ・・・それよりもオッサンども。そっちこそとっとと帰った方がいいんじゃね?」
俺の挑発に笑い顔から一転させて怒り顔へと変貌。感情を表しやすいバカどもと見た。
「何だとテメェ?」
「ガキが生意気な事言いやがって。」
あ・・・これって何か街にいたチンピラどもと同じセリフだ。。
「おい、このガキとうずくまってる奴はともかく、連れの女二人はかなり上等だぜ?」
「お?なるほどこいつぁいい。土産にもらってこうぜ。」
「「!?」」
あ〜あ、何かリリスとカイル狙われちったねぇ。しかもカイル女って思われてるし。俺とマサシは問題外ってか?まぁ女と間違えられる顔じゃねぇし俺ら。
「はぁ・・・しゃあねぇか。」
「あ?何言ってんだこのガ(シュピン)キぃっ!!??」
オッサンの頚動脈スレスレ目掛けて居合い抜き。それを見て固まるオッサン。そこを刃を返さずにさっきとは逆の軌道で刀を振る。思いっきり顔に峰打ち食らったオッサンはキリモミ回転しながら横へと吹っ飛ぶ。
「とりあえず・・・ちょっとおねんねしててもらおうか!」
刀を片手に呆然とする盗賊ども目掛けて走り出す。ようやく意識が戻った奴は剣を振り上げようとする。が、遅い。俺の刀が下から上へ跳ね上がると敵の剣は甲高い音をたてて吹っ飛び、がら空きになった腹部目掛けて回し蹴りを叩き込んで昏倒。すぐ横にいた敵の剣を持っている方の手に刀を突き刺すと、オッサンは痛みで叫び声をあげて剣を取り落とす。その隙に峰打ち。三人が剣を持って走り寄ってくるが、その脇を一瞬にして駆け抜ける。すれ違い様に素早く峰を繰り出し、三人揃って前のめりに倒れこむ。
「こ、こいつバケモンか!?」
「くそぉ!見た目単なるガキじゃねぇか!」
他の奴らは慌てて剣を構える。
「お〜い。」
「「!?」」
バシバシン!
軽快な音がすると、オッサンどもは仰向けに倒れた。後頭部にはタンコブが出来ている。
「俺もやるもんだろ?」
そう言って、二人を打ちのめしたマサシは急遽武器にした鉄棒を肩に担いだ。
「あ、回復したのかオメェ。」
「うっせぇやい。いきなり腹殴んなよ。」
「アホか。オメェがいきなり誤解を招きそうなことを言うから、だっ!!」
後ろから襲い掛かってきたオッサンに後ろ回し蹴りを放つと吹っ飛んだ。
「しゅっ!」
マサシも迫ってきたオッサン二人の胸に鉄棒に素早く突きを入れる。衝撃で二人揃って吹っ飛んだ。
「はっ!」
「せいやぁ!」
リリスとカイルもそれぞれの得物を手にオッサンどもを撃退している。あ、カイルって結構剣の腕あるんだ。性格微妙なだけに意外だ。つーかリリスもよく短剣一本で戦えるな。ある意味パーティー最強?
(最強なのはお前以外おらんわ。)
・・・今なんかどっからか声が聞こえてきたような・・・。
「死ね!」
「生きる!」
後ろから言われたんでどっかの漫才コンビのネタのごとく返事してから裏拳すると鼻血出しながらオッサン倒れた。
「あ、終わった?」
「ん・・・そうらしい。」
どうやら今ので最後らしい。周りには目ぇ回してぶっ倒れているオッサンどもばっかり。
「皆ケガねぇか〜?」
一応確認しておく。
「いや、ねぇよ。」
「僕も大丈夫。」
「問題無しです。」
見た目からして確認するまでもねぇな。
「さってと、どうすっかなぁ・・・。」
ふとリリスの方を見た・・・あ。
「リリス〜。」
「はい?」
「伏せな。」
右手を突き出して気合球をリリスにぶっ放した。正確には、リリスの背後から遅いかかろうとしていたオッサン目掛けて。もちろんリリスは言われた通りさっと伏せた。
「ぎゃあ!」
気合球が右肩に当って叫ぶオッサン。そこを逃さずもう一発気合球を撃って沈黙させた。
「無事か?」
「あ・・・うん。ありがとうソウジロウくん。」
「いや別に。」
にしてもまぁ、油断も隙もねぇな連中。
「ま、何はともあれここは片付いたな、と。」
「でもまだかなりいるはず。それにどこにいるかも・・・。」
「適当に探しゃあ出てくんじゃね?」
「そんな無責任な・・・。」
「バァロォ。やりゃあ何でもできんだよ人間なんてな。」
「・・・はい。」
ん?何かリリスの声が熱っぽいぞ?そして何だそのキラキラビーム全開な視線は。訳分からん。
「はぁ〜いおふたかたおあついところもうしわけねぇんですがそろそろいきましょうや。」
*わかりにくいので訳(作者
「はぉ〜いお二方。お熱い所申し訳ねぇんですがそろそろ行きましょうや。」
何かものっそい暗い顔のマサシが棒読みで俺らに呼びかけた。腹立つなぁ〜。
「じゃ行くか。サキ達に負けてらんねぇしな。」
「ええ。」
「行こう。」
俺とリリスとカイルは並んで歩き出したけど、マサシが後ろで俺をじっと見続けていた。
「?どしたぁ?早く行くぞ〜。」
「・・・おうよ。」
うっわ、何か暗い、暗いよマサシ。何があったのさ。
「そ、それにしてもマサシさんって意外と強いんですね!」
リリスもマサシの状態に気付いたのか明るい話を持ち出した。つーか『意外と』って・・・逆に傷つくんじゃねぇか?
「ふっ、俺はあんな奴らなんかに負けはしねぇさ。」
ふっ、お前はバカだから『意外と』という言葉に気付かねえのさ♪
「でも剣・・・じゃないけど、筋がいいし、とても戦闘初心者には見えないよね?」
カイルの疑問。まぁ当たり前の疑問だな。
「ま、こいつはある剣術ではかなりの熟練者だからな。こんくらい軽いだろ。」
「ある剣術?」
「フェンシングって知ってる?」
二人とも首振った。
「まぁ剣術っつっても遊びっつーか競技なんだけどな。ガキの頃からやってて気付いたら全国大会一位ってわけよ。」
「やってる理由が女子にモテたいから、だったな?」
「そう!・・・って何言わせんの。」
「別に?」
「うるせぇや!」
「でもすごいですよ。一撃で相手を気絶させるなんて。」
「そう?何なら今夜はボクの部屋で「死ね。」はぐぁっ!!」
妙な事言い出しそうになったクソッタレの腹にも一回拳を入れる。見事に撃沈したので足引っ張って引きずることにした。
「ま、とにかくさっさと生存者探さないとな。」
((・・・やっぱりソウジロウくんの方が強い。))
「ん?今何か言ったか?」
「「い、いいえ!」」
「?そうか。」
さっき小声が聞こえた気がすんだが、まぁいい。それよりも村人探索が先だ。
「さて、こっから先は偵察がてら俺が一人で行く。あ、大丈夫スグ戻ってくるから。」
「ホントに大丈夫?」
リリスが心配そうに聞いてきた。
「大丈夫だって。お前らはとりあえず燃えてる家の消火を頼む。小っちゃい村だからな、燃え尽きるまで時間がない。」
「えぇ!?この火を三人で消せってか!?無理無理無理!!」
復活してピョンと立ち上がったマサシ。
「だーいじょうぶ。トオルから特殊な消火器渡されてっから。あ、この付近だけでいいぞ。後はサキ達とトオル達がやってくれるから。」
そう言って俺は三人に例の消火器を渡した。見た目は実物の消火器をコンパクトにした感じだ。威力は知らん。
「じゃ。」
「あ、ソウジロウくん!?」
リリスが呼び止めたが、今は気にしてらんねぇし、さっさと行くことにした。にしても、小さい村の割に村人が一人もいねぇ。この広さなら普通一人か二人は見かけるハズなのに、何かおかしい。まさか全員・・・?
「こ、来ないで!」
あ、いた。オッサン三人が小さい女の子を抱きかかえたまま壁に背中付けてる女の人に迫ってやがる。多分母子だな。そうと決まりゃあ・・・。
「ぅおっほーーい!!」
「「「!?」」」
俺の雄叫び(意味不明)に気付いたオッサンどもがこっち振り向いた。しかしおっそい!一番手前にいたオッサンにボディブローを食らわし、くず折れた所でオッサンの背中を台にして飛び上がってもう一人の脳天に刀を打ち下ろした。もちろん峰打ちだから、『ザシュッ!』みたいなグロい音じゃなくてズゴンというニッブイ音と同時にオッサンは倒れた。さらにもう一人には柄頭を鳩尾に叩きつけてハイ、おしまい。
「行きな。」
「あ、ありがとうございます!」
深く頭下げてから女性は子供を抱きかかえたまま走り去っていった。
「さてと、俺も消火活動するかな。」
そう言ってさっき三人に渡した消火器をポーチから取り出す。あ、向こうから何か白い煙みたいなの上がってら。遠くからも。あぁ、なるほどありゃ消火器から出た煙と見た。周りが火だからそっから出たというのは無し。だって普通黒いじゃん、火から出た煙。さりげなく叫び声が聞こえるな。ありゃマサシか。生きてたらまた会おうな。
「・・・。」
考えてみりゃ俺もこれ使うからあいつらと同じ末路辿るんだろなぁ・・・。
「死にたくねぇし、どうすっかな・・・おりょ?」
ふと、燃えていない家の家の暗い隙間で何か動いた。
(盗賊・・・か?)
俺は腰から銃を引き抜いて隙間に銃口を向けた。
「出て来いや。」
すると隙間から「ヒィッ!」とかいう情けない叫び声が聞こえてきて、数秒後におずおずと出てきた。って・・・。
「あん時のオッサンじゃん?」
意外な再会。昨日道を尋ねたら他当れとか言ってきた無愛想な痩せこけたオッサン。
「アンタこんな所で何してん?」
とりあえず銃は下ろす。
「き、決まってるだろう?隠れてたんだよ。」
「あそう。じゃ逃げれば?」
「に、逃げる途中で奴らに襲われたらどうする!?襲われるよりここに隠れていたほうがマシだ!」
「あらそおですかい?だったらそこで見つかるまで隠れてな。」
臆病者に用はないのさ。
「・・・。」
ん・・・何か視線を感じる。
「・・・。」
すっごい感じる。
「・・・。」
ものっそい感じる。
「・・・。」
・・・。
「・・・言いたい事があるんならはよ言わんかい。」
まぁ大体わかってたさ。視線の主がオッサンなんだってな。ジロジロ見られんのは男女問わず気に障る。俺の怒気にビビッたのか、オッサンはまた情けない声を上げた。マジで情けねぇ・・・。
「あ・・・。」
「あ?」
『あ』の次は何だ?
「あ、アンタの腕を見込んで頼みがある。俺の・・・俺の妻と息子を、奴らのアジトから取り戻してくれねぇか?頼む!」
いきなり土下座された。
「・・・はい?アンタの嫁さんと息子さん?捕まってんの?」
「・・・ああ。」
「・・・ああ。」
もしかしたら・・・。
「あのさ、ひょっとして村の人の大半が・・・。」
「ああそうだ。奴らに連れ去られた。」
これで納得。村の人達がいないのは、奴らのせいだったわけだ。黙り込むオッサン。
「・・・ん?」
つーか嫁さんと息子さんが捕まっていてオッサンが無事って・・・。
「なぁ?」
「!?」
いや、いきなり驚かれても。
「アンタさぁ、二人が連れ去られる時にどこにいた?」
あ、オッサンが面食らってら。
「ど、どこって・・・俺は仕事に「嘘だな。」・・・!?」
いきなり遮ってやった。
「な、何で・・・。」
「本当の事なら、俺から視線逸らすわけなかろうが。」
うん、マジでこのオッサン、挙動不審な上に俺からさりげなく目線を合わせようとしねぇ。嘘丸見えだ。
「・・・。」
「言わないつもりか?ま、それならそれでいいさ。んなとこで時間食ってる場合じゃねえし。」
俺は背を向けようとした。
「・・・しょうがないだろ・・・。」
「は?」
いきなり何言い出すか。
「しょうがないだろ!?奴ら、俺達の前で剣を抜いたんだぞ!?だから隠れるしかなかったんだ!」
「・・・。」
こいつ・・・。
「それって・・・嫁さんと息子さんが連れてかれる時、ずっと隠れて見ていたってわけか?」
「だ、誰もそこまで言って・・・!」
「じゃ何で俺『達』なんだ?」
「ぐ・・・!」
「自分の家族が危ない目に合ってる時に悠々と隠れてたってぇ訳かい。そいつぁ万々歳だなぁ。」
オッサンにとってな。
「お、お前に・・・お前みたいな子供に、この村で住んでいく人間の何がわかるってんだ!」
「わかりたくない。」
「!?」
「家族を見捨てる奴の事なんて、わかりたくもない。」
あ、オッサン硬直してやがらぁ。
「じゃ俺忙しいから。さっさと逃げな。」
今度こそ俺は背を向けて駆け出した。オッサンはさっきから硬直中のため、追っかけたり声かけたりしてはこない。ま、家族のことを大切に思ってんなら、意地でも守ろうとするよな。それ隠れて見てたってのは・・・さすがにいただけねぇな。守れよ、ってツッコミいれたいとこだが、のんびりしてる場合じゃないし(の割にはゆっくりしてた気もしないではない)。
まぁ、息子さんと嫁さんの事は保留っつーことで。
〜〜〜〜♪〜〜♪〜〜〜〜〜〜♪〜〜〜〜♪〜〜〜・・・・・・・
「お?」
着メロが聞こえたんで立ち止まってケータイを取り出した。相手は・・・サキか。
ポチっとな。
「もしもし?」
『も、もしもしもしもしソソソソウジロウ!?ち、ちょっとこっちにき、きゃああああああああああああああああああ!!???』
プツ。ツー、ツー、ツー・・・。
「・・・。」
全速力でサキ達のいるとこまで走った(時速43km♪)
作 遂に第二十二話でい!
ソ へぇ、結構やるじゃん。7月の読者数も多かったしよ。
作 当たり前じゃい!まだまだやるぜぇ!!
ソ ・・・でもお前、今年受験生だろ?いいのか小説書いてて?
作 ・・・。
ソ ・・・。
作 受験生が書いた小説を、これからも応援してください!!
ソ 小説やのおてお前自身応援してもらえや。