第十九騒動 惚れた本当の理由
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昔々、ある所にものっそい強い騎士がいました。その騎士の家系は大昔に滅びたとされる
伝説の種族の末裔であり、また世界では王の次に位が高いとされる貴族でもありました。
貴族の家名は『ランアット』といい、主の名前がバルア・ダイアン・ランアット伯爵(長
いからバルア伯爵)といいます。そこに嫁いだのが同じとまではいかないけれど、世界的
に名のある名家、リオ・バロン・グラシアス嬢。ここの貴族も代々伝説の種族の血筋を持
っており、二つの家系は昔から今まで栄華を極めておりました。そんな中、ランアット邸
での待望の赤ちゃんが生まれました。バルア伯爵はその女の子にシャルアと名づけました。
それから、ランアット邸は今では二人の息子と、二人の娘が生まれました。シャルア合わ
せて五人です。その中で一番強いのは、長女のシャルアでした。さすがランアットの中で
一番初めに生まれ物心ついた時から剣を持っているだけはあるとその周りの者は思ってお
りました。しかし、とある占い師によると、シャルアは今までの一族の中で最も強い血を
色濃く受け継いでいると告げられました。その時、バルア伯爵は子供達を集め、こう言い
ました。「この中で私の後を継ぐのに一番適役なのはシャルアだが、それでお前達は納得い
かないだろう。そういう事だから、お前達にはある事をやってもらいたい。これからお前
達には世界中を旅してもらいたい。そして途中、様々な強者達と剣を交えろ。その中で、
お前達を打ち負かす程強く、そして情けをかける程の広い心を持った者を連れて帰ってく
るがいい。その者をお前達の婚約者とし、この家を継ぐことを許そう。尚、貴族の人間が
一人旅をしているというのが世間に知られるのはまずい。よって自分達で好きなように偽
名を使いなさい。それと条件がある。決して手を抜くな。それでなければ意味はない。」
そうゆう訳で、子供達はそれぞれ別々の方角に向けて旅に出ることにしました。その中で
シャルアはシェリー・マスフェルトという名を使って北へと進み、様々な者達と戦いまし
た。しかし、彼女は一族の仲でも濃い血を受け継いだ者、全くといって言い程彼女に適う
者は現れませんでした。そして三年の月日が経ちました・・・。
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とまあぁ、シャルアさんの話を昔話感覚で語ってみました。まとめ。えっと、確かシェリーは偽名で、偽名より長ったらしい本名がシャルア・ダイアン・ランアットってゆーらしい。何かややこしくなりそうなので今まで通りシェリーで呼びます。で、そのランアットってのが本人曰く、相当有名な貴族の家系らしい。まぁ有名な奴が偽名使うのって一応お決まりだしな。まぁそんだけ(どんだけ〜?)。あ、ついでにシェリーと坂本一家(つまり俺、サキ、トオル、マサシの事)を除く奴らは皆驚いていた。まぁ驚きようからすると、相当有名らしい。
「シ、シャルア・ダイアン・ランアットって・・・。」
リリスが滅茶苦茶驚いた顔で言う。
「ランアット家の子の中で最も濃い血を受け継いだって言われているあの・・・?。」
ほぉ、知っていたのかカイル君や・・・ん?
「おい、ランアット家ってすごいのはわかったけどさ、一体全体何の種族の末裔なんだ?」
俺は疑問に思った事を言った。まぁランアットってよう知らんし。
「えっと・・・ランアット家は、大昔実在したと言われているドラゴンナイトっていう種族の長の末裔だって事で有名なんだけど・・・。」
ん?何だカイル、その不思議そうな目は。まるで俺らが変人みたいな目で見られてんじゃねぇか。
「カイルさん、ソウジロウさん達は異世界から来たからドラゴンナイトとかランアットとかいうのは知らないんですよ。」
リリスが言った。ってオイ、つーことはテメェ俺らをアホ扱いしてたのか?オッケーだったら殺す♪
「ち、ちょっと待って!ごめんなさい!謝るから許して!!」
カイルが必死に謝罪した。あぁ、殺気出してたのか。いかんいかん、俺としたことが。冷静になれ俺。
「ん?でも今の話の中で自分を打ち負かす程の強い人を婚約者にするって言ってたけど・・・。」
サキが思いついたように言った。そして俺の方へと顔を向けた。
「え・・・それって・・・え?」
全員俺に向けて視線を飛ばす。うわお。視線独り占め♪でも嬉しくねえ♪
「そう・・・私は彼に負けた。」
ああ、シェリーさん。そんな事言ったら・・・。
「な・・・。」
「「「「「「「「何イイイイイイイイイイイイイイイイィィィィィィィィィ!!????」」」」」」」」
ほれ見ろ・・・うっさ。
「ちょ!ま、マジでアンタか、勝っちゃったの!?」
ご乱心状態のメル。ドモんなや。
「しょーがねぇだろ?勝負しろってうるさかったんだからよぉ?」
何かものっそいダルくなってきたんでやる気無さ気に答える。
「えっと・・・い、一対一だよな?」
「・・・マサシくん?」
「?」
「拳骨食らうか?」
「!!!」
何か疑わしげな目線を送ってきたマサシに怒りの目線を優しく(?)送ってあげると激しく首を横に振った。何か風圧くるくらい振ってる。人間じゃねぇだろテメェ。
「ってーか一対一しかねぇだろ。他に援護する奴が俺にいたか?」
「第一、私はつねにお互いフェアな戦いを心がけてきたからそのような卑劣な事はしない。まぁここに来るまで私の首を狙いにきた人間は大勢いたがな。皆集団で襲い掛かってきたが、全部返り討ちにしてやったよ。」
「あ、ああ・・・そう。」
うっわ〜、暗い。暗いよ皆さん。特に今まで修羅場潜ってきたメルさん達がすこぶる暗いよ。
「というわけで、私はこの人の妾となって家に「「ちょっと待ったぁ!!」」!?」
おぉ、いきなり復活したメルとサキがシェリーの言葉を遮りおったわ。
「納得いかない!100%越えて1000%納得いかない!!」
「父親が決めた事だからって勝手にソウジロウ持ってかないで欲しいわね!」
越え過ぎだ。そして俺は物かい。
「第一、アンタ自身その事を望んでいるの!?」
「・・・。」
サキの攻撃(口撃)でシェリーが怯んだように見えた。
「そういやそうね。勝った奴と結婚するだなんて政略結婚と同じね!」
おぉっと!サキ&メル選手のWパンチ!そしてその言葉で頷くリリス&フィリア&マサシ選手!つーか選手なのかもわからん!それに対し一人のシェリー選手劣勢!その他(トオル&ジュード&カイル)はその様子を見守っているー!!もう何が何だか!!
「・・・。」
「あ、図星?」
「やっぱり?」
おぉ・・・女の戦いは恐ろしい。黙らせてぇ♪マジで♪
「私は・・・。」
「「「?」」」
俯きながら何か言いたそうにしているシェリーに、俺とサキとメルが揃って耳を傾ける。あ、よく見たら他の奴らもさり気なく聞いてる。
「私は生まれて初めて負けて気付いたんだ。本当の強さとは、どんな戦いにも勝ち続けていくのではなくて、負けを経験してこそ初めて得られる物だと。私はこのまま勝ち続けていたら、胸の奥のわだかまりを秘めたまま人生を終えていたんだと思う。だから・・・。」
顔を上げると、真剣な面持ちで俺を見据えた。
「私は・・・その事に気付かせてくれたソウジロウに純粋に惚れた。この気持ちに嘘はない。」
・・・あぁ・・・こいつぁシリアスだ・・・本人にしたら・・・。
「まぁとにかく・・・。」
俺は切り出して・・・。
「メシにするか♪」
「「待てえええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇい!!!!!!!」」
二人がうるさいので黙らせたのはまた別のお話・・・。