第十六騒動 その者、己より上を行く者を求める。
「ここか・・・。」
私は今、小さな辺境の村に来ている。そう遠くない場所にかの有名なゲンシュベルの森がある。そこで迷った者は、遥か奥地にある鉄壁の牢城に閉じ込められ、脱走したとしても森で迷って衰弱死するとさえ言われている魔の森。その森に一番近い場所にある名もない村。森が近いから、魔物が出れば盗賊も出る。まさに安全とは言えない村。そのせいか、村には不安な面持ちで歩いている人間がほとんどだ。明日に希望を抱いていない、絶望しきった顔。
(哀れ過ぎる。)
心の中でそう思った。このような小さな村の現状を見て何とも思わない帝国の者共が憎たらしい。私が帝国に仇なす者と知ると途端に指名手配し、執拗に私の命を奪おうとする。全ては自分達の身の安全しか考えていない愚か者どもが、この世界を治めているというのか。所詮は先ほどの奴らと同じということか・・・。
「さてと・・・。」
感慨に耽っていた所で、私は辺りを見回した。崩れかけた家と暗い人間達がいるばかりで、私が探し求めているような人間は一人もいない。案外このような場所にいると思ったが・・・やはり骨折り損だったのか?
私より強い人間は、この辺りにはいないというのか?
「・・・やはり他を当るしかないか・・・。」
もはやここにいる理由はない。しかし、疲れてはいないがやはり休息は必要だ。宿を探して一服するか。そう思って正面に目を向けた。
(む?)
見ると、痩せこけた男性に話しかけている少年が見えた。まだ十代の中頃といった少年だった。だがその外見は、大陸中でも一際珍しかった。変わった黒い服装に、目立つ程のツンツンした茶色い髪。そして腰にぶら下げた、漆黒の鞘に収まり、僅かに反り返った長い剣。そこまでならまだいいが、この村の人間にはない、少年の瞳に宿る純粋で強い意志を秘めた何かを感じた。
(もしや・・・。)
半ば確信に近いものを感じ、私は彼に歩み寄った。
「お〜、結構小っちぇえな。」
まずそれがこの世界に来て初の人が住む場所に対する感想。最低だと思う奴ぁ、思えばいいさ。後で俺がドロップキック食らわしてやるだけだからな。でもさ、この光景見てそう思わないわけねぇと思うぞ?家は何かボロいし、道は微妙に狭いし、つーかこの村走ってたったの三分で一周出来ると思うぞ?それを小さいと思わずに何と思う?しかも、しかもだぞ?
道行く人間、み〜んなDarknees(*)
(ダークネス、つまり暗いってこと)
何かね、もう生気さえ感じないの。もうやばいってなんのって。あ、そこの人。俯きながら歩いてると猫背になるぞ。
「ったく・・・。」
思わず呟いた。でも情報を集めねえと、どうしようもねえからな。何か図書館的なモンか、武器屋的なモンを探さにゃあな。と、さっそく数少ない通行人発見。やせ細ったオッチャンだった。この際、誰でもいいや。
「ちょとすんませ〜ん。」
俺は声を掛けた。で、オッチャンは返事せずに顔だけ俺に向けた。いや、せめて返事しろよ。まぁこの際気にしない。
「あんさ、この辺に武器屋か、本とか売ってる所ないか?」
「・・・。」
むご〜ん・・・。
「・・・他を当ってくれ・・・。」
へ、それだけ?
と思ってたらもう行っちまったし〜・・・。
「お〜い・・・。」
ああ、虚し・・・。
「ちょっと・・・。」
「ちょっと!ちょっとちょっと!!」
「!?」
あ、いけね!ついあの双子コンビのギャグを言ってしまった。くっそ〜条件反射というものか。でも俺双子じゃねぇし。さっきのギャグも一人で言ったぞ。虚しさ倍増しちまったじゃんよ・・・あ、声掛けてきた人軽く引いてる。そんなに引かんといてぇなぁ♪
「?何の用だ?」
とりあえず聞いて相手の反応を待つ。で、その相手なんだけど・・・マサシが叫び出すんじゃねぇか?というくらいの美人な姉ちゃんだった。長い金髪を後ろに束ねて、ポニーテールにしているし、瞳は鳶色って言うのか?そんな色してて、顔は多分文句無しなんじゃねぇのってくらいで、大人の綺麗さっていう奴があった。しかも全身黒いフィットした服だし。腰には茶色のレザーベルトしてて左右の腰には細い剣が二本差してあるし。どっからどう見ても一般人じゃねぇだろ。何なんだ一体この女。
「・・・。」
しかも反応しねぇどころか俺をじーーーーーっと見つめてるだけ・・・何がしてぇんだよオイ・・・。
「すまないが、ちょっと来てくれないか?」
しかもいきなり誘われた。よくニュースとかである勧誘詐欺か?そうだとしたら半殺しじゃすまねぇぞ?過去何人、潰してきたと思ってんだコラ?でもまぁ、付いていかない限り何するのかわかんねぇから、大人しく後に続く・・・ってあれ?どんどん村から離れてんじゃん。普通暗い路地裏とかだろ詐欺は。あ、喫茶店でもありか。でもあの村、そんなシャレたもんあんのか?否、無いね多分。探せばあるかもしれんが・・・あ、女が立ち止まった。場所は村から少し離れた荒野。はは〜ん・・・ここで西部劇並みなガンマン勝負でもするってのか?あ、詐欺でもすんのかね?だったら場所変えをオススメする。殺風景過ぎて気が滅入るわ。
「で?マジで何するつもりだ?」
とりあえず何すんのかだけは聞いておこう。といきなり突然、女が振り返って両方の剣を左右の手で引き抜いた・・・ってあれ?
「私と・・・勝負しろ。」
わ〜い、詐欺とかの方がマシだったぁ♪
TO BE A CONTINUE!!(訳:続いたら続いたでとりあえずUFO来るように祈っとけ!!)
*嘘!!訳:『続く』!!
っつーわけで、第十六話です。文字数を抑える事で、更新を早めるという事を思いついたんで、これでやってこうと思います。時々。