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第十五騒動 あ〜うるせぇ(怒)

「足りない。」



ぼそりと呟いた女性は、細身の双剣を左右の腰に括り付けてある鞘に収めて目を閉じた。風が吹けば、ポニーテールにした金髪が優雅に揺れる。

「ぐぅ・・・。」

途端、背後から男の呻き声が聞こえる。男は頭から血を流し、地に伏していたが、頭だけなんとか持ち上げる。そしてキッと女性を睨みつけた。

「化け物め・・・今に・・・見てやがれ・・・。」

苦しげに男は喋る。女性はフゥとため息をついて振り返り、男の髪を鷲掴みにして男と目を合わせた。男が濁った目に対して、女性は澄んだ鳶色の目をしていた。どのような者でも魅了するであろうその整った顔立ちには呆れと哀れみの色が浮かんでいた。

「だから初めに言ったはずだ。貴様らでは、束になっても私には勝てないと。」

「何ぃ・・・。」

「私はな・・・貴様らのような、金ばかりに執着した弱き者など興味はない。それでも貴様らが私の首を取ろうとするから、私は仕方なく剣を抜いたまで。これ以上歯向かわないというなら見逃してやるが、どうだ?」

途端、男の顔は怒りで歪んだ。

「ふ、ふざけるな!テメェには莫大な賞金が懸かってんだ!んなとこでひけるかよ!」

男の喚きに、女性はさっきより深いため息を吐いた。

「・・・哀れな者達だ。」





「ぎゃああああああああああ!!!!!」





男の絶叫が、累々たる屍がそこら中に転がっている荒野に響いた。













「いやぁやっと着いたぜ♪」

「ホントあっと言う間でしたね・・・。」

「この森こんな小さかったっけ?」

「坂本号が早かっただけでしょ?」


とまぁ口々にいろんな事言いつつも、俺ん家(坂本号)のおかげで森の外に出れた俺達。現在地は森からちょっと離れた場所で待機している。もちろん家の中で。

「にしても道中ちょっとケツ痛かったぞ。」

「うむ、確かにそうだな。今度改良するよう努力する。」

「そうしてくれ。」

いや、ホントに少しケツ痛いんだわこれ。四脚っていうのが悪いのか?ドスンドスン音たてながら揺れるから、おちおち立ってもいらんねぇよ。まぁ家具とかは全部無事だけどな。何故かって?前話で話した『移動するのに欠かせない物』を苦労して取り付けたって言ったろ?あれな、『衝撃吸収マット』っていって、家具の下とかに付けると、あんま揺れないようになってんだよ。地震対策だとさ。この家に越してきた時に引っ越し屋さんの兄ちゃんがサービスで付けるって言ってたんだけどそん時の俺は相手に気を遣って丁寧に断って、そのうち自分で付けると言ってもらった。あんなに苦労するんだったらあん時の兄ちゃんに頼んどけばよかった。ああ後悔。ついでにマットはトオルが改造を施してより接着力が強くなってるから動くことはない。だから坂本号の揺れに耐えられたって話だ。いやぁすごいなマット。惚れ惚れしちまうぜ。

「って俺が改良したから揺れなかったんだろーが!」

「は?何言ってんのお前?」

思考読まれたんで冷たく返す俺。つーか最近思考読まれるの多いと思うの俺だけ?俺の周りの奴らどんだけエスパーなんだよ。小説の特権か?ムカつく。因みにケツが少し痛いと感じたのは俺とサキとメルとリリスとトオルだけだ。後の奴らは止まってからケツを抑えつつ悶々言っていた。悶々の意味を間違って解釈かいしゃくしている奴、俺が介錯かいしゃくをしてやるから腹を切れ。マジで。

「あ、あれ村じゃないの?」

サキが窓の向こうを指差した。そう遠くない場所に家っぽいのが建っている。因みに辺りは荒野になっているから見通しがいい。それとちょっと離れているわけは、近すぎると目立つからだ。だってさ、動く家だぞ?目立たないのがおかしいって。

「うん、間違いないね。」

カイルが地図と見比べながら言った。やっぱ地理に詳しい奴がいると楽だわ、うん。あぁ、昨日地形調べてたのは、家の移動ルートで何か障害になる物があるかの確認のためだったんだけどさ、幸い何も無かったから万々歳だったよ。全く。

「なぁちょっと考えたんだが。」

俺の一言で、全員俺の方に振り向く。

「全員で行ったら、何かいろいろ目立ちそうだろ?てゆーわけでここは一つ、俺が一人でお先に村に行ってくる。」

「えぇ!?何それぇ?」

「ソウジロウ!そいつぁズリィぞ!」

サキとマサシがブーブー文句言ってくる。正直うるせぇ。

「んじゃあ誰か連れて行ってやるから名乗り出ろ。」

「「「「「はい!!」」」」」

一斉に手を挙げたのは、サキ、マサシ、メル、リリス、フィリア・・・男性陣が一人だけって・・・しっかりしろよ男共。

「・・・私が行くわ。」

「冗談。あたしよ。」

「私が行きます。」

「私も行きたい!」

「俺も「「アンタは黙ってなさい。」」・・・ハイ・・・。」

よっわ!マサシよっわ!あんくらいで下がんな。

「私の方がソウジロウと付き合い長いんだから、私が行くのが妥当でしょ?」

サキの意見。

「いいや!いざという時、まともに戦えるのはあたしだけよ。」

メルの意見。

「ソウジロウさんが傷ついた時に癒す人がいないといけませんし、私が行くのがいいのでは?」

リリスの意見。

「わ、私だって呪文使えるから治癒くらい出来るもん!」

フィリアの意見。



「「「「む〜〜〜〜〜〜・・・・・・・!」」」」



・・・互いに睨み合う女性陣。ああ、男性陣が全員縮こまっている。いいのかお前らそれで?情けな。

「よぅし!こうなったら・・・。」

「勝負ね・・・。」

「望む所です・・・。」

「む〜・・・。」





これじゃいつまでも行けねぇじゃねぇか。





「ちょっとお前ら・・・。」

俺は業を煮やして間に入った。

「何?ソウジロウ。」

「今忙しいから後にしてくれる?」

「後で話しは聞きますから。」

「そうそう。」





イライラが頂点に達した。





「ほぉ・・・じゃあ聞くが、ここでいい子にお留守番してるのと一人ずつ俺の鉄拳くらうのと刀か銃による血祭りを見るのかどれがいい?今すぐ選べやコラ。」





殺気放出。すぐさま黙り込んで口を閉じる女性陣。しかも冷や汗ダッラダラ。

「わ、わかったわよここにいるから・・・。」

「お願いだから鉄拳と血祭りだけはやめて・・・。」

「すみませんでした・・・。」

「ゴメンナサイ・・・。」

全員謝罪。一件落着♪話し合えば何でもわかるね人間て♪

「やれやれ・・・じゃ行ってくるからお前らは適当に待ってろ。何かあった時は携帯に電話するからな。」

「「「「「「「「は〜い・・・。」」」」」」」」

気のない返事を受けつつ俺は立ち上がって刀を左腰に括り付け、銃を右腰のホルスターにしまって玄関を出た。ああ、風が気持ちいい。

「じゃ何する〜?」

「俺ゲームした〜い!」

「「黙れ!」」

「ぐはぁ!!」

あぁ・・・何かトオルの声とテンション上がっているマサシの声とサキとメルのハモった声と鈍い音と呻き声が聞こえてきた・・・とりあえず無視して村に行こう。離れてるから歩くのはしんどいがな。


第ニ小説『三つの刃』もよろしく〜(あんま書いてないけど)。

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