第十二騒動 とりあえず今後の相談+メシ
〜いろいろあって作者視点からお送りいたします〜
「いやいやスマンスマン。何か目先の事に気ぃ取られちまったみてぇで♪」
「い、いえぜんぜんきにしてませんよ?」
「あ、あはははは・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
一番最初のセリフがソウジロウ。二番目のがメル。思わず棒読み状態になっております。で明らか嘘笑いしてるのがカイル。他の三つのがあまりの事で何しゃべればいいのかわからずセリフで『・』ばっかなのがそれぞれリリス、フィリア、ジュードといった配列になっている。今現在何してるのかと言うと、二階で散々暴れた後、とりあえず気を取り直して五人を家に迎え入れて一階のリビングにあるテーブルを囲んで床に座っているといった形。長方形のテーブルの左側に座っているのがメル達。向かい側がソウジロウとサキ。テーブルの傍には頭に包帯巻いたマサシと、それ以上に重症で全身包帯グルグル巻きにされているトオルがぶっ倒れている。五人はなるべくこの光景が目に入らないように視線をソウジロウ達に向け続けた。
「ソウジロウ・・・この人達誰なの?」
サキがソウジロウの袖をクイクイ引っ張った。そりゃあ全員(約一名除く)堂々と武器持ってるのに不審に思わないわけがないが、ソウジロウは当初全く不審に思わず、平然としていた。それが彼の特徴なのだが、図太いにも程がある。
「あぁ、ここで知り合った奴らだ。ほれ自己紹介しろテメェら。」
「は、はい!えええっとカイル・ハーゲインです!」
「メ、メル・アントよ・・・。」
「リリス・フィルアンと申します。」
「ジュード・フェルスです。よろしく。」
「フィ、フィリア・フィン・・・です。」
カイルとメルとフィリアはまだ緊張が抜けてないようだが、リリスとジュードはもう慣れたようで、落ち着いた声で挨拶した。
「で、こいつが・・・。」
ソウジロウの手がサキに向いた。
「こ、河本 佐紀よ・・・。」
「コウモト?」
メルが言った。
「そ、そうよ?」
「ふ〜ん・・・ソウジロウと同じで変わった名前ね。」
「んな!?」
サキが何か言おうとしたが、ソウジロウが小突いて止めさせた。
「ま、変わってるっちゃあ変わってるな。さっき言った通り、俺らは異世界から来たわけだ。あっち側じゃあ名前が後ろに付くっつーこと。」
「え?ここって過去でも未来でもないの?」
サキが聞いてきた。そりゃタイムマシンだっつーのにタイムスリップしてねーもんなぁ。
「まぁそうゆうこった。」
「え・・・じゃあこの家は・・・。」
「あっちの技術で作られているってこった。何でここにあるのかは後で説明する。因みに俺ん家。」
「ソウジロウの家?」
「そ。」
「・・・。」
全員押し黙った。
「・・・じゃあ・・・やっぱり本当だったのか・・・異世界というのは。」
ジュードが重そうに口を開けた。というよりあまり信じられないといった感じである。
「さっき言ったじゃん。」
ソウジロウ、あっけらかんとした感じ。
「だーからそう簡単に信じれるわけないっての。」
メル、相変わらずの口調。
「まぁこれは事実だ。疑ったってしょーがないじゃん。それより、これからどうするかが問題だ。」
「へ・・・?」
五人揃って呆気に取られた。
「?何だよ?」
「ソウジロウさん・・・帰るんじゃないの?」
「あぁ・・・その事はだな・・・。」
ムクリ。
「いてててて・・・。」
いきなり起き上がったマサシ。
「きゃ!?」
突然の事で驚くリリス。
「はぁ〜あ・・・こいつは・・・(-。-;)」
「相変わらずよね〜\(´w`)ノ」
相変わらずの復活の早さに呆れるソウジロウとサキ。
「・・・。」
「・・・?」
で、フィリアを見つめるマサシとそれで困惑するフィリア・・・。
「・・・。」
「・・・。」
沈黙・・・。
「・・・ロ・・・。」
「ロ?」
「ロリっ娘萌えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!\(`□´)ノ」
「「「「「!!!????」」」」」
「燃えてろ。」
ボン!
「ぶぎゃあああああああああああああ!!!!?????」
ソウジロウがライターでマサシの尻に火を点ける。あまりの熱さに、マサシ、ベランダの窓から飛び出してどっかへと走って消えていった・・・。
「あ・・・あの・・・ソウジロウ・・・さん・・・。」
「気にすんな。」
ライターを置いてとりあえず一息つくソウジロウ。
「で、あんなのほっといて・・・。」
((((((ほっとくの!!??))))))
五人含めてサキまで心の中でツッコミ。
「さっきの話だが・・・とりあえず俺がここに来たわけを話すか。」
とゆーわけで、ソウジロウはトオルの作ったタイムマシンことクローゼットくんのマシントラブルが原因でここに来たことを話した。
「つまり、意図的に来たわけじゃあないわけよ。」
「は、はぁ・・・。」
「んで、帰る方法だが、そこで死んでる奴から事切れる前に聞いてみたら、クローゼットくんが・・・そのまぁ・・・。」
「ぶっ壊れちまった。」
「「「「「・・・。」」」」」
「それって・・・つまり・・・。」
カイルが言いにくそうに聞いてきた。
「つまり帰れん。そんだけ。」
「・・・。」
どんだけ〜・・・・・・・・・(?)。
「・・・マジ?」
「大マジだ。」
「・・・。」
「とにかく、帰る方法が無くなった以上、ここに留まるしかあるめぇ。」
「え、でも学校どうすんのよ?」
サキが聞いてきた。
「サボれんなモン。」
「はぁぁ!!??」
「何だよ?」
「何言ってんのアンタはぁ!アンタはよくても私はダメなのよ今回の期末テスト点数とらないと本当にやばいんだって空手の全国大会の練習とかで勉強ちょっとおろそかにしちゃったんだって勉強しないとダメなんだってとにかくダぐはぁ!!」
ソウジロウのパンチがサキの頬を捉えた。
「お前なぁ・・・この状況でテストかよ?どっちみち帰れねぇからテスト受けるの無理に決まってんだろーが。んでもって空手の全国大会とか出て勉強おろそかにしたのはテメェ自身のせいだろうが反省しろ反省。ついでに勉強なら家でもできるだろーがアホか。」
「うぅ・・・納得・・・。」
「わかればいい。」
渋々納得のサキ。
「で、このままっつーのはさすがによくない。とりあえず帰る方法を捜さんとならん。」
「まぁそうだけどさぁ・・・帰るのにあれ(クローゼットくん)どうやって直すのよ?」
「・・・。」
ソウジロウは少し悩んだ後立ち上がって、包帯ミイラ男状態になっているトオルの傍へ・・・。
「よっと。」
「ぐはぁ!?」
そしておもむろに胸部をふんづけた。なるべく軽く。
「な・・・何をするのだソウジロウ?」
起き上がりながら微妙にしんどそうに答えるトオル。これだけの重症でありながら、何とか喋れる程度には回復したらしい。伊達に坂本一家の一員やってるだけはある。
「何するんだじゃねえよバカ野郎。とりあえず聞きたい事があるから答えろ。」
「へ?何だよ?」
「あのクローゼットくんだがよ・・・どうやったら直るんだ?あれないと帰れねぇんだろ?」「・・・。」
押し黙るトオル。
「・・・言っていいか?」
「ああ。」
「怒らないか?」
「多分。」
「・・・。」
「俺がまともだと思う理由だったら許す。」
「マジ?」
「マジだ。」
「・・・じゃあ話すぞ?」
「よし。」
「あのな・・・クローゼットくんに搭載されている装置、通称『次元空間亀裂発生装置』。あれがクローゼットくんの全てと言っても過言じゃあない装置で、あれのおかげで次元を行ったり来たり出来る。しかし大切な分、かなりデリケートでな・・・一日に三回、メンテナンスをしなけりゃならないわけなんだよ。で、そのぉ・・・。」
急に口ごもるトオル。
「早く言えよ。」
ソウジロウ、ちょっと殺気を出した。
「は、ははい!でそのぉ、さっき俺ら飲み会やってたろ?そん時もメンテナンスしたんだけどさぁ、朦朧とした状態で大事な部分を変にいじっちまったみたいで、つまりその・・・。」
「取替えしが付かないくらいに壊れちまって・・・修理できない。」
「「「「「「「・・・。」」」」」」」
ハイ、当然と言える反応。全員無言。トオルもかなりオドオドしている。そりゃあトオル自身のミスが原因なんだから八つ裂きは必須だろう・・・。
「・・・プッ・・・。」
「?」
っと思ったらいきなりソウジロウは吹き出した。
「あっはっはっはっは!何だよメンテナンスミスかよ!明らかに笑っちまう失敗談だな!」
「へ・・・そ、そうか?」
「まぁ間違いなら誰にでもあるって!気にすんなよ!あははははははははは!!」
「は、ははははははははは!」
「あははははははははは!!」
ソウジロウはトオルの肩に手を置いて爆笑している。トオルもつられて爆笑。サキ達はその光景をキョトンとした顔で見つめていた。
「あははははははははははははははははは!!」
「ははははははははははははははははは!!」
尚も笑いは止まらない。
「あはははははははははははははははは!!」
「はははははははははははははははははは!!」
二人揃って大爆笑。
「あっはっはっはっはっはっはっはっは!!!」
「はははははははっはははっはははははは!」
ソウジロウの笑い声がさらにでかくなった。トオルの声が段々小さくなっていく。
「あっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!!!!」
「はははははははははは・・・。」
そしてゆっくりと殺気が辺りに立ち込めた。
「はは・・・ははははは・・・はは・・・は・・・。」
もはやトオルの顔に生気はなく、笑顔のまま滝の如く涙と冷や汗を流している。
「あっはっはっはっはっはっはっはっはっはっアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
ドガボグベキボキブチグシャバキブシボコプチポキ
「さて、これからマジでどうするかなぁっと。」
顔に付いた血を手の甲で拭いつつ、思案顔になったソウジロウ。
「そ、そそそそそそそそうですよね!?ははは早く何とかしないといけませんよねぇ!!」
冷や汗を流しどもりながら言うリリス。他全員も冷や汗を流しつつ何度も頷いている。てゆーかトオルも壊れるまでの過程を話さなけりゃ無事で済んだのに、正直に丁寧に話しちゃうもんなぁ・・・あ、ソウジロウがテレパシーで『白状しやがれコンチクショウ』って言ってたからかな?コイツならやりそうだ。
「まぁ念じはしたな。」
語り手(作者)に話しかけんな。
「・・・そういやこの森の近くに村か町はあんのか?」
「え?まぁあるにはあるけど・・・どうすんの?」
「いや何、装置の代わりになりそうなモンでも捜そうと思って。ここ魔力とかあるだろ?だったら魔力で出来た何かで代用できるかもしんねぇじゃん。だから情報収集がてらに。」
「ああ・・・なるほど。確かにそういう魔力の塊みたいなのはあるにはあるわね。」
あらためてファンタジー丸出し。
「でもそれって希少価値スゴイよ?簡単には手に入りそうもないし・・・。」
「ま、そん時はそん時だ。」
ソウジロウ、持ち前のマイペースな性格を曝け出す発言。
「で、でもこの森どうやって抜けるの?迷わず抜けれる確立はゼロよ?」
「それは明日考えよう。」
「でもアンタ達武器あるの?それがないとさすがにここ出るのは無理よ。さっきみたいにはいかない奴ならまだこの森にかなりいるわよ?」
そう言われて、ソウジロウは手持ちの武器を見た。腰にひん曲がってもう役に立ちそうにない火掻き棒がささっていた。因みにちょっと血が付いてる。
「あ〜・・・俺なら大丈夫だ。」
そう言って立ち上がって和室へと入っていくと、タンスの下の引き出しをゴソゴソと漁ってある物を取り出した。そしてそれを持って再びリビングへと出てくる。
「お待たせ〜。」
「え・・・ソウジロウそれって・・・。」
サキが言う前に、テーブルの上に乗っかってたリンゴを右手でポイと上へ放り投げた。
「覇っ!!」
ヒュンヒュンカチン!!
ヒュー・・・ポトン。コロリン。
「・・・へ?」
サキのセリフ。
「うん、腕は衰えちゃいねぇな。」
そう言って目の前にかざしたのは、黄色い紐が括り付けられた上等な黒鞘に収まっている日本刀だった。そしてテーブルの上には綺麗に食べやすいように切られたリンゴが乗っかっていた。
「え・・・何が起こったの?え?え?」
メルがすでに混乱状態。
「今のは俺らの世界の剣術で、居合い、又は抜刀術。鞘から勢い良く抜いてそのまんま切るっつーモンだ。因みに銘は『火鵺』。鵺っつーのは昔いた空想上の化けモンのことで、いろんな動物を混ぜ合わせたような奴だ。声も独特だったらしいぞ。THE,豆知識。」
「いえ・・・豆知識とかそーゆーよくわからないんですが・・・。」
リリスも混乱中。
「何て言うんだろ・・・これは・・・。」
カイルも落ち着いていない。
「ソウジロウさんって・・・。」
フィリアも動揺中。
「明らかに・・・。」
ジュードはとりあえず落ち着いてる?かも。
「「「「「強過ぎ。」」」」」
また綺麗にハモった五人方。
「え、てゆーかソウジロウ。アンタそれどこで・・・。」
「ああ、これも爺ちゃんがくれたモンだ。手紙読んだら何でも国宝級らしいぞ?だから大事に隠しとけってよ。」
「・・・アンタのお爺さん、ホント何者?」
「人。」
「だといいんだけどね・・・。」
サキは苦笑いした。
「それと・・・。」
懐から取り出したのは・・・『イングラムマック11サブマシンガン』。
「?何それ?」
当然のようにメルが聞いてくる。
「あ、それは大丈夫でしょ。弾丸入ってないし・・・。」
ズガガガッ!!!!!
「・・・。」
サキが言い終わる前にソウジロウは開けたベランダの窓に向けて発砲した。弾丸は遥か先にある木の幹に命中。
「やっぱいいわコレ。サイコー♪」
ソウジロウは『マガジンの入った』銃をじっくり眺めた。
「・・・弾、あったんだ・・・。」
「あったよ?」
「・・・銃それだけよね?」
「いや?グロック26ハンドガンもあるし、コルトパイソン6インチマグナムもあるし、スパス12・ショットガンもあるし、5.56ミリ機関銃『MINIM』もあるし、果てはデザートイーグルに、対戦車ライフルに、84無反動砲『カールグスタフ』に、四連ロケットランチャーに・・・。」
「アンタ国際テロでもする気?」
「うちのジジイに言え。」
「・・・アンタのお爺さん、ホントに何してんのよ?」
「世界中を旅してるって言ってたぞ?」
「世界征服するつもりなんじゃない?」
「・・・あり得る・・・。」
二人揃って真剣な顔をしてホントにあのジジイ何者だと考え始めた。つーか銃とか刀とかよく空港で引っ掛からなかったなぁソウジロウのじーさん。
「ね、ねぇちょっと。さっきの何なの?」
「ほへ?」
メルの問いかけにソウジロウは呑気な声を上げた。
「あ、銃こっち無いんだ。」
「銃?」
おもむろに銃口をリビングのカウンターの上に置いてある女の子の人形に向けると、ソウジロウは引き金を一回引いた。弾丸が鋭い音をたてて一発飛び出すと、人形は粉々に粉砕した。
「「「「「ええ!?」」」」」
またハモった。ハモるの好きだなぁ。ソウジロウはリンゴを一つ口に入れた。
「ま、そっちが遠くの敵を攻撃する武器が弓矢なら、こっちはこれだ。」
「す、すごい・・・。」
リリスが感嘆したように呟いた。
「っつーか銃刀法違反なんだけどね。」
サキもリンゴを一つ拝借。
「この際この世界では関係ねぇさ。」
「・・・ん?でも私達の世界の武器がこっちにあるって事は目立つ確立が高くなるんじゃない?」
「あ、そうか。じゃなるべく控えるか。弾丸節約の為にも。」
「そうね。」
「・・・でもそれ城の時に使わなかったのは何でなの?」
カイルが聞いてきた。
「ああ、気分で。」
「気分!?」
メル、ナイスツッコミ。
「ま、俺の武器はこれで何とかなったな。後はサキとそこで死んでるバカとどっか行ったバカだな。」
Wバカ呼ばわりである。
「あぁ・・・あんまり思い出したくなかったのに・・・。」
リリスが物凄い哀れみを込めて呟く。さっきのソウジロウの暴走を記憶の端っこに置いとこうとしたようだが、『そこで死んでるバカ』でつい目が行ってしまった。慌てて逸らしたから問題はないみたいだが。
「それも明日考えよっか。」
「そだな。」
グゥ〜・・・。
「あ・・・。」
フィリアの腹から音がした。
「ああ・・・腹減ったようだな。そういや俺もカロリー○イトしか食ってねぇや。」
「・・・そういやあたし達も・・・。」
フィリアの腹の音を合図に、あちこちから空腹を訴える音が聞こえてきた。よく今まで鳴らなかったなぁ腹の虫達。
「んじゃま、メシにするか。」
ソウジロウはおもむろに立ち上がった。
「あ、それと喉渇いてんなら何か入れてやるぞ?サキは何にするよ?」
「あ、じゃあ私オレンジで。」
「あいよ。でお前らは?」
明らかに困惑するメル達。
「いや・・・そっちの世界の飲み物ってよくわかんなくて・・・。」
「あ、そうか。じゃあ上げてくから好きなの選べ。え〜と・・・
・水
・ウーロン茶
・牛乳
・リンゴジュース
・オレンジジュース
・アク○リアス
・ポカ○スエット
・コーヒー(アイスorホット)
どれにする?」
箇条書きかよ・・・。
「えと・・・牛乳って何よ?」
メルが言った。
「牛の乳。英語で言うとミルク。」
「ミルク!!??」
いきなり身を乗り出してきたメルさん。
「どわ!?何だよ一体?」
さすがにドッキリのソウジロウくん。
「え、えっと・・・ミルクというのはこの世界では高級品で・・・主に貴族の間でしか飲めない物でして・・・。」
リリスが説明した。つか貴族って・・・すんげぇ格上げだな牛乳。
「で、それをメルちゃんがいつだったか貴族の人間から掠め取って飲んでみたら虜になってしまったという・・・。」
カイルが遠い目をして言った。その時コイツ(カイル)がどんな目に合ったのかは想像に留めておこうと思ったソウジロウとサキ。
「ほ〜、そんなに貴重なのか牛乳。」
「でもうちらの世界ではそこら辺の店で安く売ってるわよね?」
「学校の給食も牛乳だよな。」
「まさに庶民の味方よね。」
「クリームシチュー作れるしな。」
「あ、あれおいしい。」
「また作ってやるよ。気が向いたら。」
和やかな二人を除いて、ガクンとうな垂れるメル。
「あれ?どった?」
「ミ、ミルクが庶民に出回ってる世界って・・・羨ましすぎる・・・。」
想像以上にショックを受けているメルに、少なからず罪悪感を覚えたソウジロウとサキ・・・。
「ま、まぁメルは牛乳っつーことで。他は?」
「あ、じゃあ私は水で。」
遠慮の塊リリス。
「えと・・・お、おれんじじゅーす?」
聞くなフィリア。
「私はコーヒーという物を。」
見た目通り優雅にいくジュード。
「僕はアク○リアスという物を・・・。」
不安そうな顔で挑戦するカイル。
「はいよ。ちょっと待て。」
さながら喫茶店みたいな感じになってきた坂本家。『CAFE・DO・SAKAMOTO』。おしゃれだ。
「センスだっさ。」
だからツッコムなっての。
「はいお待ちど〜。」
俺はそれぞれの飲み物を皆に配った。ホントマジで喫茶店に見えてきた。
「メシが出来るまで待っといてくれ。それとメル。」
「ん?」
牛乳を幸せそうに飲んでいたメルが見上げた。口に白ヒゲ付いてる。子供っぽさ満点・・・。
「お前は後で背中の包帯を取っ変えろ。それと服を着替えろ。そんな背中スースーするようなモンいつまでも着てんじゃねえ。」
「あ・・・。」
メルは自分の背中に触れた。包帯で体に巻きついている様は、まさにサラシ。それが背中から丸見えである。
「でも服ったって持ってないわよ。」
「・・・服汚れねえ?」
「時々洗濯とか街で服買ってるわよ!」
「前のはどうした。」
「売った。」
「完璧ゲームじゃねぇか。」
安物の防具をしばらく着て強い防具が手に入ったらはい、さよーなら。RPGの定番みたいなモンである。
「しゃあねえ。サキ、悪ぃが服貸してやってくんねぇか?ついでに包帯も交換してやってくれ。和室で。」
「え〜?しょうがないなぁ。」
サキは二階へと上がっていった。プロポーション抜群のサキにとって、服にはこだわりがあるらしい。だからあんまり服とかは貸したくないタイプ。
「はい。」
降りてきたサキは赤いTシャツをメルに手渡した。
「ありがとう。」
メルはシャツを受け取って和室へと入っていった。何か仲良くなりそうな光景である。
「く〜!美女二人って絵になってるね〜!」
「・・・いつ戻ってきたテメェ。」
台所で野菜の下ごしらえをしているソウジロウの横には尻丸出しのマサシがいた。
「ふふふっ、俺はそう簡単には死にはせんぞ?」
「あ〜はいはい邪魔だからあっち行ってろ。」
「ひど!人を邪慳にしといて!」
「あ?風穴開けられたいか?」
ソウジロウはマック11をマサシの額に突きつけた。それに対し、マサシはフンと鼻を鳴らした。
「ふ、もう何度も食らわんぞ。その銃には弾丸が入っていない事ぐらい・・・スンマセン撤回させてください(_ _;)>」
マガジンが込められているのが目に入ってすぐに謝罪へと移るマサシ・・・哀れ。
「わぁったらとりあえず向こう行ってなさい。」
「・・・はい。」
マサシが回れ右した。
「あ、あの、ソウジロウさん。」
「?」
リリスが台所に入ってきた。
「わ、私も何か手伝えることがありますか?」
「何で?」
「いえ、お邪魔した上に水までもらって、何もしないというのはちょっと・・・。」
「ならボクの部屋の掃除を手伝ってくれませんか?」
リリスの手を握って口調を変えるマサシ(バカ)。見てみると眉もキリっとしている。
「え、あの・・・。」
「申し遅れました。ボクは清水 正志といいます。よければついでにボクとお友達以上のお付き合いを・・・。」
サクッ♪
「向こう行ってろ。」
「・・・ひゃい・・・。」
頭に包丁が刺さったままマサシはすごすごとリビングへ戻っていった。リリスはもちろん、それを見たカイル達も微妙に引き気味だった。
「ん〜、まぁ無理は言わないが、手伝ってくれるならありがたい。」
「あ、じゃあ私も「お前は黙っとけ。」・・・。」
包帯を巻き終えたサキが和室から出てきて名乗りあげたが、ソウジロウは容赦無く切り捨てた。以前、サキが料理をすると台所はまさに地獄絵図となるという事件があり(その後しめあげた)、それ以来サキには一切料理をさせないと固く誓ったソウジロウ。
「あ、じゃあたしが「却下だ」・・・。」
メルが言い出そうとした所をすかさず口挟むソウジロウ。
「・・・何でよ?」
「リリスが一瞬泣きそうだったから。」
「!?」
メルは瞬時にリリスへと目を向けた。
「ちょ、な、なな何言ってるんですか!?」
そう言うリリスの目は・・・確かに涙目だ。
「・・・リリス?」
「!!」
メルの言葉にビクリと体を引き攣らせるリリス。
「どーゆー意味?その目。」
「え、えっとその・・・。」
下手な答えを出したら死、決定。
「料理がくそまずいからじゃねえの?」
ソウジロウ、あっさりとした口調。
「はい。」
リリス即答。
「んですってーーーーーー!!??」
しまった、という顔になったリリス。ほれ見ろ、という顔のソウジロウ。
「とにかく二人ともとっととリビング行ってろ。」
「ちょーっと!いくら何でもその言い方はひどくない!?」
「そうよ!もうちょっと女の子に対してのいたわりってモンを・・・。」
ヒュン カッ!
背後の壁に包丁が突き刺さった。
「行けや。」
「「はい。」」
ソウジロウの殺気に押されてギクシャクしながら台所から出て行くサキとメルでした♪
「あ、これおいしい・・・。」
メルが驚いたように呟いた。
「だろ?」
で、今晩御飯を皆で囲んで食べている状況。献立は肉入り野菜炒めとダシ巻き卵と味噌汁と白飯。一般的な物ばかりだが・・・。
「ホントおいしいです・・・。」
元々料理が得意なリリスなのだが、実力差というのを見せつけられた為に悔しそうだった。因みにさっきは野菜の皮むきと調味料(この世界にはないのがほとんどだったから教えるのにソウジロウは苦労していた)を取り出したりしていただけなので、調理はしていない。
「コレ何?」
フィリアがフォークでダシ巻き卵を差した。五人とも箸は使えないからスプーンとフォークで食っている。
「ダシ巻き卵。うまいか?」
「すごくおいしい!」
「そりゃよかった♪」
「・・・。」
「いや、ホントおいしいよ。」
「まったくです。とくにこのスープは何となく不思議な味ですね。」
カイルとジュードも二人揃って味噌汁に絶賛中。具は豆腐とニンジン。
「まぁな。味噌汁こそ和の心。そして楽にできるし、食卓にはかかせねぇな。」
「わ、私だって味噌汁くらい!」
「ほぉ?こないだ味噌汁作る〜っつって得体の知れない泥作ったのどこのどいつだ?」
「スイマセンでした。」
前回のミスを指摘されて謝罪するサキ。
「・・・。」
「ん?どうした二人とも。」
頭に更に包帯を巻いたマサシと、全身包帯だが手足が動かせるようになるくらいに回復したトオルが目の前の食事を見ていて硬直していた。
「あの・・・コレなんスか?」
「見りゃわかるだろ。メシ。」
「いや・・・予感はしていたんだけどさ・・・。」
「「な〜んでキュウリ丸々一本?」」
二人の目の前には何の手を加えていないキュウリ一本が皿の上にデーンと乗っかっていた。
「あぁ、お前らはれっきとしたケガ人だからな。栄養つけてもらおうとそれにした。」
そういうソウジロウは加害者である。
「いや、俺らとしてはそちらの方が栄養つきそうなんですが・・・。」
「ほぉ?それだけじゃ不満か?なんなら味噌か塩かマヨネーズ持ってきてやるぞ?」
「・・・お前まさかまだ根に持ってる?」
「何が?」
ニッコリ♪ソウジロウ、満面の笑み。でも明らか作り笑い見え見え。
「・・・。」
「・・・。」
バリボリバリボリバリ・・・・・・・・。
無言でキュウリを齧りだしたマサシとトオル。ついでに二人とも味噌を付けて食べました♪(それを少し哀れみの目で見つめていたソウジロウを除く他全員)
因みに、ソウジロウが銃で粉砕した人形はマサシの私物だったらしく、部屋でしくしく泣いていたそうな。
今月、読者数が大幅にUPしていました。読んでくれたみなさん、ありがとうございました!