表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/31

第十一騒動 お別れ・・・はまだ早い!

久々にあの方々が出ます。



私達は、ただただ彼が暴れているのを見ているだけだった。ガベルが作り出した空間は、私達の体力を奪い取り、自由を効けなくする。現に仲間のうちで一番力があるメルさんまでも自分の剣を持てないでいた。ソウジロウさんも例外じゃないはず。にも関わらず、大の大人をほぼ一発で吹き飛ばしていた。魔力ではない別の力を使った遠距離攻撃で弓矢隊がいる見張り塔を跡形もなく粉砕したのを見て、私は自分の目を疑った。泣き叫んで逃げていく兵士達さえすでに視界には入らない。やがてゆっくりとガベルの方へと向き直っていくソウジロウさんの体からは、紛れもない殺気を放っていて、少し呆然としていた頭を起こして身震いさせた。メルさん達も同様だった。殺傷能力が高い武器を手にした敵達に、逆に頼りなさそうな細い金属の棒一本と体術で蹴散らした彼の姿は、まさしく最強の戦士として私の目に映っていた。半狂乱になりながら、ガベルが持てる魔力を使った火球が連続して飛んできて、それらを全て軽々と交わしていき、大きく跳躍しての振り下ろしで、並の武器では壊れないはずの杖が真っ二つに折れて、そのままガベルの兜をひしゃげさせた。その時、彼の棒も使い物になりそうもないくらい原型を留めない程折れ曲がってしまったのが見えた。まだ意識があるガベルは、私達にはもう逃げ場がないのを罵った。元々後戻りできない覚悟で旅をしている私達にとって、それは単なる負け惜しみ程度にしか聞こえない。けど改めて言われると、私達はもう世界から見放された気分になった。心の底から沸き起こる絶望を感じ、思わず唇を噛む。そんな中、ソウジロウさんは平然とした様子でガベルへと歩み寄って踏みつけた後、思い切り鼻を殴りつけて昏倒させた。


「王だか何だか知らねえがどっからでも来い。まとめて足腰立たねぇようにしてやるよ。」


聞いた瞬間、今まで感じたことがないくらい胸の奥が熱くなったような気がした。世界から隔離された絶望に浸っている私達と違い、ソウジロウさんは全く気にせず、帝国に宣戦布告をした。まるで帝国の恐ろしさを知らないように見える。もしかしたら本当に知らないかもしれないくらいの態度。そんな彼を見て・・・鼓動が高鳴った。






「でさ、大丈夫なんかお前?」

ソウジロウさんが私達の下に戻ってきて、背中に火傷を負ったメルさんの傍に屈みこんだ。さっきガベルの魔力が消えたことで、魔力封じの結界が取れたから治癒呪文を唱えて火傷をある程度治したけど、魔力をほとんど奪われてしまってまだ焦げた背中が目立つ。ジュードさんもフィリアも魔力を使い切ってしまって治癒することができない。

「み、見たらわかるでしょ・・・づぅ!」

メルさんが痛みで顔をしかめた。

「あ〜あひでぇなこいつぁ・・・ちょっと待てよ。確か・・・。」

そう言って、ソウジロウさんは腰に付けた変わった袋に手を入れてゴソゴソと漁った。しばらくすると、細長い銀色の物体と何層にも巻いた包帯を取り出した。

「よし、これで・・・。」

銀色の物の蓋みたいなのを取った。

「メル〜?後ろ向けよ〜。」

「へ?何で?」

「いいから早く向きな。」

怪訝そうな顔をしつつもソウジロウさん背中を向けるメルさん。

「では・・・。」


プシューーーーーーー。


「%#?Q!%&!“#%!?」

声にならない悲鳴を上げるメルさん。

「ちょ、何やって・・・!」

メルさんが怒って振り向いた。



グワシ!(頭掴んだ音)



「前向いとけ。」


「・・・ハイ・・・。」


・・・メルさんがソウジロウさんの威圧に負けた・・・(゜□ ゜;)


そして再び筒状の物から何か霧状の物をメルさんに吹き付けるソウジロウさん。時たまメルさんは悲鳴を上げるたびに、ソウジロウさんに頭を叩かれて無理矢理口止めされた。あまりの光景に私どころか、カイルさん、ジュードさん、フィリアも唖然としている。

「あ、あのソレは・・・?」

カイルさんがおずおずと聞いてきた。

「ああ、これ火傷専用の治療スプレー。けっこう効くぞ?」

チリョウすぷれーを袋にしまうと、今度は包帯を持った。

「上半身脱いだ方がいいぞ?」


平然ととんでもない事を言いました。


「ちょ「だ、ダメです!!」

メルさんが言うより先に、私が怒鳴った方が早かった。

「?何が?」

「い、いくら何でも女性のは、ハダカを見るなんて事は・・・!!」

「いや別に見たかねぇんだけどな?包帯巻くのに服着たままってのはどうかと思うぞ?」

「それでもダメです!私がやります!」

「ん〜、まぁいいけどそこまで必死になることか?」

「いいからやらせてください!!」

「はいはい。」

半ば無理矢理包帯を受け取った(奪い取った)。

「ぜ、全員あっち向いててください!」

ソウジロウさんどころか、カイルさんもジュードさんもこっちを向いていたから無理矢理向こうを向かせた。カイルさんとジュードさんとフィリア(見てもいいのに)は慌てて向こうを向いたけど、ソウジロウさんは「やれやれ」と言いながら向こうを向いた。口調からして「見てもしょーがない」みたいな感じがした。

「ほらメルさん、上脱いで。」

「う、うん。」

おずおずと服を脱ぐメルさん。背中の焼けた部分以外は、あまり目立たないけど逞しい筋肉と白い肌が見える。女性の私が言うのも何だけど、十人中十人が欲情するかもしれない程綺麗な体つきをしている。

(何で私がやるんだろう?)

自分から名乗り出ておいてそう思った。ソウジロウさんがメルさんに服を脱ぐように促すと、私の中の何かがメルさんに取られるような気がして包帯を奪い取ったのはわかる。けど何を取られるのかよくわからない・・・。

「はい終わりです。」

そう思っている間、無意識のうちに包帯を巻き終えていた。

「ありがとう。」

メルさんは背中に大きな穴が開いた服を再び着た。

「終わったか〜?」

まだ合図も出してないのに、ソウジロウさんは振り向いた。ちょうど服を着終わった後だから問題はないけれど・・・。

「あの・・・ソウジロウさん・・・。」

「?」

フィリアが改まった表情でソウジロウさんを見上げて言った。瞳はまだ赤いまま。まだ感情が高ぶっているのがわかる。

「その・・・私・・・。」

「ん・・・その瞳、カラコンじゃなくて地なんだな?」

・・・今度こそ見破られた。

「・・・。」

「何で嘘ついたんだ?言ってみ?」

ソウジロウさんは屈んでフィリアと同じ目線で尋ねた。

「私・・・・・・。」

「ん?」

「ソウジロウさんに・・・忌み子だっていうのを知られたくなかったから・・・それで・・・。」

フィリアの声は尻すぼみになっていって、最後は啜り泣く声だけが聞こえてきた。

「あぁ、それね。つか忌み子ってさっぱりわかんねぇんだけど?」

「・・・ホント?」

「ん〜、エルフ?と人間のハーフだっつーのはわかったけどさぁ・・・目ん玉赤いからってどうよ?」

本当にわからないみたい。忌み子は世界中に知れ渡っているのに・・・知らないなんておかし過ぎる。

「いや、でもな?忌み子だろうが何だろうが、お前はお前だろ?んなモン気にすんな。」

『忌み子だろうが何だろうが、お前はお前』・・・今の世界では絶対に言わない言葉・・・私はこの言葉に惹かれた。

「・・・。」

「あ〜・・・そんなら。」

いきなり目を擦り始めた。

「え、ちょっとアンタ何・・・。」

理解できない行動に、メルさんも戸惑っている。


数分後・・・。


「ほれ。」

手を放してみると、ソウジロウさんの目が真っ赤に純血している。擦り過ぎてメルの瞳と大して変わらないくらい赤かった。

「どうだ?これで俺も立派なレッドアイズ。お揃いだぞ。」

目から涙を流しながらフィリアに明るく笑いかける。その笑顔には同情と言うより、純粋に楽しんでいるかのような笑顔だった。

「ソウジロウさん・・・。」

フィリアは涙目だったけど、少しずつ赤から青へと変わっていった。気持ちが落ち着いてきているのがわかる。

「な、ナヌ!?青くもなるのかその目!ちくしょう〜、青くする方法がわかんねぇ!」

「・・・プ・・・。」

本気で悔しそうにしているソウジロウさんを見て、フィリアが吹き出すと、私達も釣られて笑ってしまった・・・。

「・・・てゆーかアンタ、さっき私の裸見たくないみたいな事言わなかった?」

「言った。」

「そこは普通言い訳するでしょ!?」

「見たかないもんは見たかないんじゃ。」

「んですってーーーー!!??」

いきなり殺気を全開にするメルさん。思わず縮こまる私達。

「ほれ。」

「ぐほ!」

・・・いきなり折れた鉄棒でメルさんの頭を叩いたソウジロウさん。

「ア、アンタって人はぁ〜・・・。」

「それ以上言うとスプレー吹き付けんぞ。」

「ぐ・・・す、すみませんでした。」

「わかればよろしい。」

フフンと鼻を鳴らすソウジロウさん。それを見て悔しがるメルさん。何だか似たような光景を最近見たような・・・そんなやり取りの中、私達は魔力が無くなった事で霧が晴れて、久しぶりの朝日に照らされている城を出た。



「ぐっ・・・。」

ソウジロウ達が城を出て行った後、見張り塔の上でガベルが呻きながら起き上がった。眩しい日の光で目を思わず閉じるが、すぐ様起き上がって忌々しげに足元に落ちていた杖の残骸を踏みつけた。

「おのれぇ・・・この私をコケにしおって・・・こうなったら皇帝陛下にまた新しい武器をもらって・・・。」

「そんな必要はない。」

「!?」

背後から声がして振り返った瞬間、腹に激痛が走った。目を走らせると、巨大な槍が腹部を貫通している。

「な・・・。」

「『ゲンシュベル牢獄城』最高管理者ガベル・ハーベス。貴様は忌み子を取り逃がし、反逆者一味を殺し損ね、さらには皇帝陛下からの贈り物である杖さえも破損した失態・・・これらを全て大罪とみなし、貴様を処刑する。」

「な・・・しょけい・・・だと・・・?」

「安心しろ。これは皇帝陛下による命だ。貴様には名誉の死を与えてやるというお達しだ。ありがたく思え。」

「な・・・ばかな・・・へいかが・・・。」

「死ね。」




槍が赤く発光すると、ガベルは断末魔の叫び声を上げて灰と化して床へと落ちた。









今、俺らは城から出て森の中を歩いております。最初の頃みたいに霧は全く出てません。視界もハッキリしていてとても歩きやすいです。足元相変わらず安定しません。ついでに最初に会った熊みたいなのに出会いました。定番ですね、ただでは通してくれないという意味ですね。


もちろんヤりました♪


あ、言っとくけど殺しちゃいねぇぞ?いきなり出てきてメルとカイルが戦闘体制に入ろうとした所で、熊のどてっ腹に直蹴り食らわした後脳天に拳骨落として頭揺らしながら倒れた。軽く脳震盪起こしたんだろう。気絶に留めといた。まぁ最初本当にヤっちゃったからその時のが何かこう、心のどっかで後悔してるっつーか・・・とりあえず今回は気分で。メル達が唖然として俺を見ていた。それに構わずとっとと進むと、今度はウサギ?猿?みたいな可愛いようで気色ワリィ奴らが茂みん中から数十匹単位で出てきた。ジュードとフィリアが呪文を唱えようとしてる間に、俺は向かってくる奴らにチョップ、パンチ、キック、エルボー、頭突き、じゃく気合球、ニードロップ、真空跳び膝蹴り、パイルドライバー、パワーボム、スープレックスetc・・・をかまして気絶させてやると、残った奴らは全員泣き喚きながら逃げてった。メル達が唖然として俺を見ていた。再び構わず先に進むと、今度は鷲みたいな猛禽類な感じ丸出しの、にしては一回りでか過ぎの奴らが今度は五匹で上空から奇声発しながら襲い掛かってきた。リリスが弓を背中から取り出して構えようとしてる間、俺は足元にあった小石をビュンビュンと次々に投げつけた。それぞれ連中の羽に命中、もしくは頭に命中。血を撒き散らしながら地面に残らず墜落、気絶。メル達が以下略・・・。そんなこんなで半日やってくと、茂みから気配がするにも関わらず、俺が振り向くとガサガサって音がして何かが遠ざかっていった。全部奇声(悲鳴or泣き喚き)を発していた。で、今やっと辿り着いた場所は、何と俺が最初にこの世界に来たときに倒れてた場所だった。特に何も無く、変わってるモンと言えば、辺りは平面で安定している、鬱陶しい根っこがない、家が入るくらい十分な広さ・・・ようは広場っつー感じ。うん、確実に。

「歩くの疲れたから休憩しよーぜー?」

俺はどっかと座り込んだ。メル達は物珍しそうにじーっと俺を見ている。失礼な。

「何だ?」

「いや・・・アンタホントに何者?って思って・・・。」

あっはっは、何かそれ俺が人間じゃないみたいな言い草だなぁオイ♪・・・ちょっと面貸せやコンチクショウ。

「す、すみませんでしたぁ!!!!!」

メルさん、俺の殺気でビビッたのか堪らず土下座。何かこいつサキみたいな奴だなぁ。もしかしたらこいつとあいつ、友達になれるかも。

「メルちゃんが・・・土下座・・・。」

「何て言うか・・・新鮮な感じですね。」

「同意します・・・。」

「うん・・・。」

その光景を見ている他の方々は感心してるのか畏怖の念を抱いてるのかわからない表情をしていた。日頃何されてるんだお前ら。

「まぁいいか。ところで蟻。」

「あ、アリ?」

「お前だお前。あだ名。」

「あ、アリって何よ?」

むぅ、この世界には蟻はおらんのか。ならうるさくはならんな。

「とりあえずいいあだ名っつーことで納得しとけ。」

「・・・わかったわよ。」

納得してない顔で納得した蟻ことメル・アントさん。口で言うとうるさくて俺が暴力行為に走りそうなので思いますが、お前本当にバカだろ?

「で、一体何?」

まだ納得してない顔しながら言うメル。

「あぁ、この森なんつー森だ?お前らが脱出躊躇ってるの見てると、結構有名な森なんかな〜とか思って。」

「ああ、この森?ここはこの辺りでは誰もが知ってる森で・・・あ、けなしてるつもりはありませんから、そんなに睨まないで・・・名前は地方の名前にちなんで『ゲンシュベルの森』。で、さっきの城が『ゲンシュベル牢獄城』。この付近で一番危険と言われてる森の中の牢獄ってことで有名よ。」

「なるほど・・・で、この森のどこらへんが危険なんだ?」

「広くて迷いやすいことと・・・住んでる生き物が全て魔物っつーこと。」

「ほぉほぉ。」

「・・・アンタにとっては問題なしみたいなようだけどね・・・。」

何となくムカついたが、今は無視しておいてやろう。説明してくれたんだからわざわざ。

「・・・ん?ちょっと待ってよ。確かフィリア達の里ってアフィールドだよね?」

カイルが突然言い出した。こいつらがフィリアの生まれ故郷を目指して旅してるっつーのは、こないだフィリアと友好を深める為に話し合った時にわかった。でも場所は聞いてない。そん時はまだ信用されてなかったからな。

「それがどうしたのよ?」

「確か、アフィールドからゲンシュベルって結構離れてなかったっけ?」

「・・・・・・。」

これメル

「・・・・・・。」

これカイル

「・・・・・・。」

これジュード

「・・・・・・。」

これリリス

「・・・・・・。」

これフィリア

「・・・・・・。」

これ俺














「・・・・・・(ギロリ)」メル

「・・・・・・!!!!」ジュード










スパパパパパパパパン!!













「もぉ〜!また逆戻りじゃないのよ!!」

「・・・本当にすみませんでした・・・。」

大変憤慨しているメルの足元には、ビンタされて顔パンパンにしてご丁寧に正座して反省の色をギンギンに出しているジュードさん。見た感じ年長者なのに・・・いいのかそれで?あ、トオルがいい例か。にしても顔、本当に哀れなほどに腫らして・・・。



『ジュード、新しい顔だよ!!』



・・・言ってみてぇ、このセリフ。でも顔なんて常人だと交換できねぇし、つーかあの某アニメの顔アンパン野郎の首の辺りどうなってんのか見てみたい。もしかしてあいつの正体、サイボーグ?

「でもあの時は咄嗟の事だから仕方なかったでしょうし・・・。」

「そうだよ。ジュードさんは悪くないよ。」

俺が全く関係ない事考えてる間、ジュードに救いの手を差し伸べる女神達リリスとフィリア。見てて何か年配のジュードさん、可哀想。本当はどうでもいいがな。

「でもどうする?」

カイルが不安そうな顔をした。

「しょうがないじゃない、歩くしか。」

まぁメルさん正論。メルの言い様だと、こっから結構遠いらしい。だが何事にも行動、行動。




〜〜〜〜♪〜〜♪〜〜〜〜〜〜♪〜〜〜〜♪〜〜〜・・・・・・・




「「「「「!!??」」」」」

突然流れてきた音楽に身を構えるメル達。

「あ、ごめん俺のだ。」

音楽はどうやら俺のケータイから流れてきていた。因みに音楽はベートーベン作曲『交響曲第7番イ長調』である。あの壮大な音楽を聴いた時、俺はすぐさまこの音楽をケータイの着メロにした。この曲が知りてぇ奴は『の○めカンタービレ』を見ろ。ドラマかアニメかコミックで見れるぞ。まぁとりあえずどっかの作品の宣伝を終えて、俺はポケットからおもむろにケータイを取り出した。

「な、何ですかソレ?」

リリスが恐る恐る聞いてきた。口ではうまく説明できん。そーゆーのはトオル辺りに聞け。あれ?そういやここ異世界だよな?何でケータイの着信鳴ってんだ?とりあえずケータイを開いて相手の名前を見てみた。

『トオル』

あいつ?あの野郎もここに来てんのか?でもケータイの基地局がないから掛けられんだろうし、第一ここ森ン中だから圏外のはずだぞ?電波を示すバーも圏外になってるし・・・とりあえず出てみた。

「もしもし?」

『もしも〜し!元気かぁソウジロウ?はっはっはっはっは!!』

・・・・・・・・・・・・・・・・。

「・・・何してんだオメェ?」

なるべく声を震わさないように言った。

『いやぁ〜、何つーかさぁ、お前の送別会やっててさぁ〜。あ、安心しろよ?酒は控えてるし、食いモン代とかも全部俺の自腹だから。いや〜にしても電話してみたら生きてるとはなぁ!全くしぶとい奴だぜお前は相変わらず!もう送別会じゃなくてお祝いだお祝い!!あ、つーことは実験は大成功!?やっぱ俺は天才だ!月だ星だ太陽だ!!俺を崇めんか貴様らぁ!!がはははは!!!』

『いよ!大統領!世界一の発明王〜!!』

『わはははは!くるしゅうないくるしゅうない!お前には後で褒美をやろう!はーっははははは!!!』

どっかから聞こえるバカ(マサシ)と、なぶり殺したくてしょーがないトオルのバカ騒ぎがものっそい耳障りだ。てか明らか酔ってるなお前ら。酒は二十歳過ぎてからにしろバカ。そんでもって送別会だろうがお祝いだろうがテメェらの状況からして大して変わらんだろうが。他にもツッコミ所が多すぎてもうツッコミたくない。メンドイ。

『ソウジロウ!?大丈夫!?』

「この声はサキか。」

唯一、まともな奴が出てきた。

『よかった〜!無事だったんだ!』

「たりめぇだ。んなわけわからん所で死ねるか。そんな事より、どうやって電話かけてんだ?」

『ああ、コレ?トオルが改造した携帯電話で、コレに登録されたアドレスと電話番号は、どこにいたって電波が届くってゆー奴らしいよ。』

また便利なもん開発しやがって。ケータイ会社にでも行って来い。

「そんで?そこの自称天才バカ野郎は俺をそっちに戻す方法考えてあんだろうな?」

『あ、それならとっくに考えてるって。』

「マジで?」

『うん。ソウジロウの名前を入力すればこっちに戻れるらしいわよ。』

「・・・そんだけかい。」

『そんだけ・・・らしいわね。』

「・・・ものっそい嫌な予感がするが・・・まあいい。それで俺は戻れんだな?」

『すぐに戻れるって。今から準備するから待ってて。』

「ああ、頼む。それとついでに・・・。」

『?』

「トオルに言ってくんね?もう怒ってないぞ〜って。」

『何で?』

「とりあえず、な。」

『・・・。』

何となく苦笑が聞こえる。やかましいわ。

『と、とりあえずまた後で。』

「ああ。」

プツン

「ソ、ソウジロウ・・・さん?」

フィリアが声を掛けてきたが、俺は未だに電話を放してない。

「アンタ一体何と話してたのよ?てゆーか何なのソレ?」

「・・・。」




ゴゴゴゴゴ・・・・・・・




「「「「「・・・。」」」」」

「ふふふふふ・・・あの野郎・・・人を実験台にしやがって・・・そしてちゃっかりスイッチ押しやがって・・・人が苦労してる時に送別会とかふざけたことぬかしやがって・・・そして今度はお祝いとかほざきおって・・・悠々と酒飲みやがって・・・バカ騒ぎしやがって・・・殺す・・・絶対殺す・・・。」

殺気をムンムン出しながら一人でブツブツ呟いた。俺傍から見たら超危ない奴になってるだろうが知らん。とにかく知らん。とりあえずアイツら(サキは除く)は帰ったら跡形も無く消してやる・・・。

「ソ、ソウジロウさん・・・。」

リリスの声で我に帰った。

「あ、わり。ちょっとトリップしてた。」

今は異世界トリップしてます・・・。

「さっき何か言ってませんでした?戻すとか、方法とか・・・。」

サキと会話していた内容か。そりゃ声出してたからな。聞こえるか。

「ん〜ま〜・・・ぶっちゃけて言うと、俺お前らとは一緒に行けんわ。」

「「「「「へ?」」」」」

綺麗にハモったなぁまた。チームワーク抜群♪

「な、何で?どうして?」

フィリアが泣きそうな顔になった。そりゃまぁ、何でって言われてもなぁ・・・言えねぇなぁちょっと。さて何て言おう。

『俺異世界から来たから帰らないと。』

シンプル過ぎるぞ俺

『実は異世界から来たんじゃね?』

聞くな俺

『お家が別世界だから帰らんといけんのだよ〜ん♪』

死んでくれ俺。

「・・・。」

ダメだ思い付かん。こうなりゃダメもとで・・・。

「いろいろあって。」



これはさすがにダメだった。



「何で・・・?」

やばい!これはやばい!本気でフィリアが泣きそうだ!子供を泣かせるのはダメだ!俺が俺を許さん!

「・・・。」

何を言えばいい!?俺!?やばい死にそう。俺今死にそう。死んじゃいたい。マジで。

「フィリア・・・。」

リリスがフィリアを抱きしめた。俺は軽く混乱中(軽くない)。

「どうして・・・行けないのですか?」

・・・お前も軽く涙目やんけ。

「・・・。」

皆して俺を見ている。大注目。ああ気まず。

「はぁ〜・・・もう言うしかないか。」

俺は覚悟を決めた。










「俺異世界から来た。だから帰る。」









「「「「「・・・・・・・・・・。」」」」」

オイ、何だその目。人がせっかく白状したのに何となく目が疑っとるぞ。失礼極まる。

「・・・異世界?」

メルが口開いた。

「そ。」

「何なのよ・・・ソレ・・・そんなの信じれるわけないじゃないの。」

まぁごもっとも。文句あるなら俺をこんな目に合わした神とバカに言ってくれ。

「ま、信じる、信じないはオメェらの自由だ。どっちにしろ、俺はお前らと行けない。」

全員押し黙った。まぁ俺も結構残念だけどな。こいつらに出会えて意外と楽しかったし、仲良くなったし。まぁその分、別れがキツくなるのは覚悟してたけどな。

「また・・・。」

俯いてたフィリアが顔を上げた。

「?」

「また会える?」

「知らん。」

「・・・。」

また俯いた。

「でも多分会えるんじゃね?」

「!」

うん、確証はない。マジで。でもトオルに頼べば、もしかしたらまたこっちに来れるかもしれねぇな。そう思えば、アイツの発明もまた違った意味で素晴らしいかもしれん。アイツとりあえずシめた後に誉めてやろう。シめるのは確定済み。

「ま、そのうち会えるだろ。」

「・・・うん。」

フィリアは聞き分けはいいらしい。ただ泣きそうだ。できれば泣かせたくないが、まだ子供だからな。そうゆう年頃っつーことで。

「でもいつ帰るんですか?」

詰め寄ってくるかと思ってたら、リリスがマジな顔で聞いてきた。

「さぁ?多分そのうち・・・。」












ズドゴーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!!












「「「「「「!!!!?????」」」」」」

いきなりだから俺もビビッた!!

「な、何よ一体!?」

メルが剣を引き抜いた。辺りは土煙がたっていて五人以外確認できねぇ。やがてゆっくりと土煙が消えていって音の全貌が明らかになってきて・・・・・。

「・・・へ?」

「な、何だ、コレ・・・?」

「これって・・・。」

「何で・・・。」

「どうして・・・。」

「・・・・・・・・・。」

そこにあったのは、白を基調とした二階建てで、全体的に西洋な感じを醸し出していたが、純西洋ではなく、どことなく日本家屋を連想させるような独特な感じ・・・。

















それは紛れもなく・・・『俺』んだった・・・。
















「家・・・よね?」

「家だよね・・・?」

「家ですね・・・。」

「家でしょう・・・ね。」

「家・・・。」

「・・・。」




何か体の底からものスゴイ力を感じた。

「ふ・・・。」

「?」

「ふふふ・・・。」

「ソウジロウ?」

「ふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ・・・。」


((((゜A ゜;))))


「い、いきなりどうしたの・・・よ。」

メルが俺に声をかけてきたが、そんなの今は興味ない。アイツ誉めんのやっぱナシ。俺はすぐその場からダッシュし、玄関の戸を勢いよく開けた・・・。





一方、サキ達は・・・。





私は電話を切った後、リビングで騒いでいたトオルとマサシを無理矢理酔いから醒まさせて(それぞれビンタをした)、トオルにソウジロウから頼まれてた事を伝えて二階に上がった。二人共微妙に千鳥足だったけど、何とか無事に二階のトオルの部屋に辿り着いた。何でここまで来るのに体力使わないといけなのよ。

「フゥ・・・とりあえずクローゼットくんの状態の確認やっといたし、ソウジロウの名前も入力してあるからすぐに起動できるけど・・・サキ?」

「何よ?」

「ソウジロウさ・・・帰ってきていきなり俺殴ったりしないよな?」

「・・・。」

何とも言えない。ソウジロウがさっき電話で許すとは言ってはいたけど、何となく声から怒気を感じた・・・さっきのトオルの状態を知って許すとは思えない。多分、嫌確実に半殺し決定かも・・・最悪、粉砕・・・。

「大丈夫よ。さっき言ったでしょ?」

とりあえずここで恐がらせたら帰す気を無くすかもしれないから嘘を言うことにした。嫌がったら嫌がったで実力行使すればいいけどね。

「そ、そうだな・・・とにかくスタートさせよう。」

腑に落ちない顔をしつつトオルはゆっくりとクローゼットくんのスイッチに指を近づけた。私とマサシは固唾を呑んでそれを見守る。

「じ、じゃあ行くぞ・・・。」

成功したら万々歳、失敗したら・・・考えたくもない。

「そりゃ!!」









ポチッ








その瞬間、バン!とクローゼットくんが戸を開け、眩い光が辺りを圧した。

「しまった!ゴーグル!」

「遅いわ!!」

「眩し〜!!」




ヒュン




いきなり光が消えた。そしていきなりバチバチって音がして扉から焦げ臭い煙がモクモクと湧き上がっていった。

「・・・。」

「・・・。」

「・・・。」













沈黙・・・。













「・・・へ?」














「「「ええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!???????」」」













え!?何で!?何でいきなりぶっ壊れたの!?どうして!?

「ちょーーーーーっと!!これどうゆう意味!?」

私は思わずトオルの胸倉を掴み上げた。

「い、いやいやいやいやいや!!何も完全にぶっ壊れたわけじゃないって!・・・・・・・・・・・あ。」

・・・まさか・・・。





「・・・完っっっっっ全にぶっ壊れてる・・・。」






「バカーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」

「ぐはぁ!!」

本気でトオルの頬を殴った。

「サ、サキ落ち着け!!」

「黙んなさい!!こいつは、こいつはああああ!!!」

「ま、待ってくれ!頼む!」

「待てるか!どうすんのよソウジロウ帰ってこれないじゃないの!?この責任どう取ってくれんのよぉ!!!」

散々怒鳴った後、殴りつける気も失せて私はその場に座り込んだ。目から涙が溢れてくる。トオルも顔を腫らして呆然として、マサシもどうしたらいいかわからないでいる。

「・・・本当に・・・スマン。」

トオルが頭を下げた。怒る気さえしない。ただ頭の中にはソウジロウにもう会えないという事でいっぱいだった。私の唯一の幼馴染で、転校したはずのあいつが私達の中学に入ってきて、最初はお互い気が付かなかったけど、そのうち気付いて、その後いろいろあってあいつの家でしばらく住むようになってから、ずっとあいつの事を意識し始めていた。暴力的なのにのんびりした風格のせいで何度も振り回された時もあった。けどあいつのお陰で何度も、何度も救われた。一時の絶望から救ってくれたのもあいつだった。あいつ無しだと、生きていけないくらい、あいつを想ってた。なのに・・・なのに・・・。













タッタッタッタッタッタッタッタッタ・・・・・・・ドガン!!!!












「!?」

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!」

ゴベス!!!

「ブゴバ!!??」

いきなり部屋の中に飛び込んできた何かが、トオルに雄叫びを上げつつ跳び蹴りを食らわして吹き飛ばして本棚にぶち当てた。

「な!?オボェバ!!??」

今度はマサシの顔面に裏拳をヒットさせてトオルと同じ場所へと吹き飛ばした。

「て・・・ソウジ・・・ロウ?」

二人の前に立っていたのは、少し汚れた白いジャケットにいつものGパン、黒いポーチ、そして何より、印象深い髪型・・・紛れもなく、ソウジロウだった。

「え?ソウジロウ?」

「何でここに?」

「はぁぁぁぁぁ・・・・・・・・・。」

「え、ちょ、待て・・・。」

ズドン!!

「アゴハァ!!」

「ソ、ソウジ・・・。」

ズビシ!!

「アビョー!!」

「な、なぁ?お前確か電話で俺の事ゆるす・・・。」

ズゴシャ!!

「グァァァァ!!」

「ま、待ってくれって!話し合おうって!あ、やめて、その血のついた火掻き棒だけはやめて。お願いだからそれだけは・・・それだけはーーーーーーーー!!!!!!!」

















・・・これ以上語ったら、R指定付きそうなので省略します・・・あわわわわ・・・。
















その間、外にいた五人は二階から聞こえる悲鳴と雄叫びと殴ってる時の打撃音とガラスが割れるような音と何かを叩きつけた音で奮え上がっていたそうな・・・。


ちょっとヤバめな表現もありましたが、それはそれで置いといてくださいm(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ