グランドフィナーレ
勝ち戦帰りの王子は、出迎えた王女にこう言いました。大理石の広間に二人が佇んでいます。
「二人の若者をこの城に出迎えようと思うんだが、どう思う?」
「どういった若者ですの?」
王子の傍らには、白い服を着た若者がツンとした表情で佇んでいました。
一人は手に剣を、もう一人は本を持っていました。
"剣"は言います
「なんとか養っていく力が欲しいのです」
"本"言います。
「私には有り余る知識があります。王子の力になりたいのです」
王女は言います。「この二人が居れば城の警備が整いますわ」
王子は言います。「剣と本だけで戦争が出来るわけが無いだろう」
王女は報告します。「大変な事に気が付いたわ。城の警備が整ってなくて泥棒が一人迷い込んだようです」
"剣"は言います。
「では私が参りましょう」
「三人で隠れていろ、私が出向く」
"本"は言います。
「私は悲しいです。王子が自ら出向く羽目になるとは」
"剣"は言います。
「仕方がない話しだ。泥棒は宝石に目がないからな」
「私は宝石には興味有りませんの」
王女はそう言うと、二人に向かって「愛していますわ」と言った。
「では、行って参ります」三人は城へと模索しだした。
「宝石を投げるだけで良いだろう」
「いえ、王子そんなことをしたら王女に叱られますよ」と”本”が呆れながら言う。
泥棒は「ここらへんにあるはずだ…」と、何かを探して居る。
"本"は進み出て泥棒の顔を確かめます。大変だ。こいつ目が見えないようだ。
「キラキラ光るものでも見せたらどうだろう」と王子は言います。
「そんなもので釣れるのだろうか」”本”は言います。
「というか、それ王女に貰ったものだろう」
「私におまかせあれ」"剣"は言います。
「先の戦いで傷付いた兵士なのだろう。速やかにこの城を出て行ってもらおう」
「…」
喋れないのだろうか。
”本"は言います。
「ガラクタを集めて何を造っているんだ?」
「…」
"本"はまたも気付く、喋れないのは猿轡をされて居るからだ。王子は猿轡を外すと言います。
「こいつは可哀想だ。ガラクタと宝石を交換しないか」
「ちょっと待て王子、何度も言うがそれ王女から貰ったものだろう」
「しかし、こいつの作ったガラクタ、とても丈夫な守りになりそうだ」
「…なにいってんのあんた」と”剣”が呆れながら言う。
泥棒は気付いたようです。
「…結構です」
"本"は言います。
「お前の犯した罪は大きいが、お前の背負った業も大きいな。一人では背負いきれないだろう」
王子は言います。
「だが、しかし盗みを働くことは、この城に居られない事を意味するぞ」
泥棒はそれでも聞く耳を持ちません。
「ならば、あの戦で折った傷を王女が癒してくれるだろう」
"剣"は言います。
”本”は言う。
「それだけは絶対駄目だ」
「どうしてだ。王女は優しいのだぞ」と、背中をさする王子。泥棒は泣いています。
"本"が泥棒を担ぎ上げると、王子は城の最上階へ急ぎます。
"本"が言います。「"剣"よ。この戦が終わりを迎えたようだ。」
「ありがとうございます」
城の最上階に着くと四人は宝石を空に高く放り投げます。
すると宝石はバラバラに飛び散り、大きな大きな花火になります。
「この光なら見えるだろう」王子は泥棒に笑いかけます。
「はい…はい!!」
泥棒は涙を吹き、皆で空を見上げます。
「戦は終わった!王女に知らせに行こう」
三人は城の中に戻ります。残された泥棒は目を輝かせ何時までも花火に見入って居ました。
お終い。