ユーレイ大騒動・激動編
僕はこれまで生きてきて、宗教というものには得体の知れない不気味さを感じてきた。
ばっとむ町にやって来る前はH−Rの戦闘補給員をしていた。
分かりやすく言えば戦争とかが起きた時に、補給部隊を守ったりする仕事なのだけど…おかげで嫌というほど地獄を見てきた。
宗教が原因で起きた大戦も数多くあった。
こいつはタチ悪くて、両方潰さねえと終わんねえんじゃねぇかってくらい長引く。
そんで何だか知らないけど信者の皆さんは他宗教の人にやたら冷たい。
何のための宗教なんだか…人を救うのが宗教じゃないんかね。
……とはいえ、その宗教を心の支えに生き抜いている人達も沢山知っている。
そんなわけで、まるで宗教に踊らされてる気分なのであった。
だけど…このメガハッピィとやらは…
「いらっしゃあ〜い☆」
ドアを開いた途端、ずらりと並んだ女の人達。
部屋は薄暗くて、なんともいえない怪しさが爆裂四散してる。
う、うさんくせえ…
これには幾多の戦いをくぐりぬけてきたばっとむH−Rの皆も言葉が出ない。
「………何だ?これは」
ひろきまんがたっぷりと間を置いてつぶやく。
この人はこーいうとこに全く馴染みなんて無いはずなのに、動じたような感じが少しも無い。
「みたとこキャバクラな感じですねぇ。ホントにここなんですか?…じゅんぺまんさん」
ドアに名前があるのだからここで間違いない。
それなのにこういうことを聞くのは非難してる証拠だろう。
もしくはからかってる?
当のじゅんぺまんは彼自身予想外だったらしく驚いてるようだ。
「あ、あのさぁ…君達、ジョディて人知らない?俺らメガハッピィ教の事で来たんだけど」
並んでる娘たちに話しかけると、真ん中の娘が口を開いた。
「ええ、店長から聞いてますょ♪だからお出迎えしてるんです。さ、中へどぅぞ☆」
どうやらジョディは店長をしてるらしい。
怪しい店内…なのか事務所内なのか…どっちでもいいけど。
とにかく中に入ると、前髪のカールした大人っぽい女性がソファーに座っていた。
「おぅ、ジョディ!お前店長だったんだなあ!」
「あら、ずいぶん早いわね。早くても明日だと思ってたのに…」
この人がジョディか…ホントどこでこんな人と知り合うんだろ?
いや、それより…
「どー見ても日本人だな」
たっくまんが言う。
「…確かに。てっきり外人だと思ってた」
宇宙人が外人とか言える立場じゃないが。
「ふふ…ジョディって名は新名って言ってね、メガハッピィで改名したの。昔は普通の名だったわ」
なるほど…そういうのよくあるな。たっくまんも納得したらしい。
「なるほど。カルーセルなんたらて奴が名前変えたみてーなもんか」
それは何の関係も無い。
ジョディが艶っぽい笑みをたたえて話しかける。
「立ち話もなんだから、奥にある事務所用の部屋で話しましょ?」
てなわけで皆で奥の部屋に行った。キャバクラ兼事務所なのかな?
「私達今困ってるの」
いきなしそうきりだしてきた。
確かに事務所用というだけあり落ち着いた内装だ。
後ろで並んでるお姉さん達が果てしなく不自然だが。
「うちの信者が何人も失踪してるの。店の皆も幽霊を見たっていうし…」
僕の脳裏についさっき見た窓の人影が浮かんだ。
ユーレイ、ね……。
「私達けして楽な暮らししてるわけじゃないわ。教団の運営にはお金がかかる。だからこういう真似もしてる」
「寄付みたいなのさせないんすか?」
思わず口が開いた。
ジョディはどことなく陰のある顔をこちらに向ける。
「してないとは言わないわ。でも元がリストラされた人ばかりだから…」
ふうん…珍しい教団だな。
キャバクラはどうかと思うけど。
「……経営に関して私達がしてやれることは何もありません。残念ですが」
ひろきまんが口を開く。
「友人の仲間にそこまでさせようとは思ってないわ、でもあなた達探偵なんでしょ?今回の事件…調べてくれないかしら」
はぁ……タンテーねぇ。適当なこと言ってんなじゅんぺまん。
とはいっても他にいい嘘思いつかないけど。
「もちろんだって!そんなユーレイ野郎俺がぶった斬ってやる!」
がばっと立ち上がるじゅんぺまん。
後ろでお姉さんがたがキャーとかカッコイイとか言っておられる。
さすがおだてるのが仕事のだけはある。
そんなのは無視して話は進んでいた。
「どうします?ひろきまんさん」
「どうにも見えない部分が多いが…まぁいいさ。私達が調べればいいだけの話だ」
結論が出たようだ。
「いいでしょうジョディさん。引き受けます。報酬もいりません」
「本当?良かった。これ以上信者を失うわけにはいかないわ、お願いね」
話は決まった。んじゃ明日から…
「うっしゃじゃー今から調べにいくぜぇ皆!」
はい?
「い、今からぁ?!」
またこんなこと言い出すしこの不運剣士は。
風水の効果どうせ全然ねーんだろ…って関係無いか。
「もういいじゃんかじゅんぺまん。明日からにしようよ」
時刻はまもなく深夜だ。
「バーローとっくまんてめーユーレイを夜調べねーでいつ調べんだよ!!」
そう言われればそんな気もするが…
「善は急げだ!先行ってるぜ皆ぁ!うおおおぉぉぉ……」
ドアをぶっとばして走ってってしまった。詳しく聞いてないのに…
しばらくしてたっくまんが口を開いた。
「ドコ行くんだアイツ?」
…………………確かに。




