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たっくまん  作者: 座布団
4/7

ユーレイ大騒動・突入編

夜のばっとむ町は微妙に静まりかえっていた。

ベッドタウンとしての機能が強いこの町は、静かでも人の気配が消える事はあまり無い。

だから恐怖の都市伝説みたいなのもできやすいといえばできやすいのかもしんない。

「ホントにいんのかよ、ユーレイなんて」

たっくまんが言う。無理矢理シイタケを食わされてご機嫌ななめの様子だ。

「一般的に言って可能性は低いだろう。見間違いか、あるいは精神及び肉体の疲労から来る軽度の幻覚症状か…」

律義に答えるのはひろきまん。聞いた本人は意味分かってないけど。

「いずれにしろ話を聞いてみない限り何とも言えないな。一般的なんて言葉は…あてにならないからな」

ひろきまんの隣りをぴったりマークしてるレイもうなずく。

まあ僕ら自体が一般的でないもんなぁ。

宇宙人なんて地球人にとっちゃそれこそユーレイと同列だ。

僕らは今夕食を終えて例のメガハッピィ教とやらの事務所に向かっている。

夜のばっとむ町を5人並んで歩いてる僕らははたからみたら滅茶苦茶怪しいんだろうけど、気にしてるのは僕だけのようだ。

…しかし、幽霊か。

いるいないなんて僕には分からないけど、いたとしてもおかしいとは思わないな。

宇宙にも迷信じみた話は多い。

あり得ないと思えるものばかりだけど、何故か僕はそれを否定する気にはなれなかった。

「とっくまん?」

ふと気づくと、横からレイがのぞきこむようにこっちを見ていた。

どうでもいいが、僕とたっくまんだけ彼女は呼び捨てだ。

「何考えてました?何かまた変なことですか?」

またってなんだ?

「いや、別に…何でもないけど」


「ふ〜ん……」

疑わしげにまだこっちを見ている。

彼女は人の心を読むのが得意だけど、僕には上手くいかないらしい。それがシャクなんだろうか?

「着いたぞ〜」

少し先を歩いてたじゅんぺまんが振り向いて手を振っている。

意外と歩いてたようだ。

人通りの多い所まで来ていた。

そこは駅前だった。

見たところテナントビルの三階にあるらしい。

麻雀やマッサージや駅前留学できるとこに混ざって、《メガハッピィ教》の看板がある…のだが。

「間違ってません?あの看板」

レイがぼそりと言った。

『間違ってる』僕とひろきまんがハモった。

まず、文字がピンク。

んで、繁華街を思わせるネオン。

看板のスミにはマスコットキャラらしき不細工なネズミが描かれている。

宗教にマスコットとはいい度胸してんなぁ。

「…大丈夫だろうか?」

悩みグセのあるひろきまんはすでに頭痛がするらしく、頭を押さえてうめく。

「んでもいーからよ、さっさと終わらせて帰ろうぜ」

たっくまんが言う。お前が行きたいっつったから今日来てんだけど…

「まあまあ、とりあえず中に入っってから話そうや」

じゅんぺまんが入り口を指差しながら言う。

「そうだね、今めちゃ僕ら目立ってるし」

僕のセリフにたっくまんが

「そうかぁ?」

とでも言いたげな顔をしている。

こいつは行き交う人の奇異の視線に気づいとらんのか…。

三階に上がりながら、僕は思ってた事を聞いてみた。

「怖くて聞けなかったんだけどさ、ヤバい宗教じゃないよね?」

新興宗教なんて最近は物騒なことこの上ない。

「あのなぁ、いくらなんでもそんなんと友達にはならんだろ」

じゅんぺまんは呆れたと言わんばかりだが。なんせお前だからな…。

「んじゃ、教団とかこの事務所に来たことあるんだ」


「いや、無いが」

どっから来んだよその自信。

「ならやばいかどうか分かんないじゃん」


「ああもー、どうせもうすぐ分かんだろ!怖がんなって、腹くくれ!!」

そういう事を言ってるんじゃ…

「そこまでだ。……着いたぞ」

ひろきまんの声だ。

じっと前を見据えている。

三階は静かだった。

ドアには《メガハッピィ教》と書かれたプレート。

表の看板と違い、いたって普通のものだ。

ピンクでも、ネオンでも、不細工なネズミでも無い。

「うーし、開けっぞ」

躊躇なくたっくまんがドアノブを回そうとする。

さすが怖いもの知らず。

こんな時の行動力はすごい。

廊下は意外なほどきれいだった。

なんというか、清潔さより不気味さが強い。

突き当たりは大きめの窓になっていて、今は誰かがこっちを見て笑っている。………。……………………。

「うぉおわああ!??」


「なんだ、どうしたとっくまん?!」

ひろきまんが驚いてこっちを見ている。

すでに武器を構えているのが彼らしい。皆も僕を見ていた。

「今、窓の外に誰かいたんだよ」

皆も窓を見るが、当然窓にはもう誰もいない。

「…いないじゃねえか」


「見間違いじゃないですか?」

「なんだよとっくまんビビってんなよ!」

うう……気のせいだったのかな?ちょっと窓の方に行ってみた。

心のどっかで怖がる自分がいたがそれは無視する。

窓の外はいわゆる路地裏というやつだった。

すぐそこにビルの壁があるが…足場になりそうなものは見当たらなかった。

おまけに落下防止のためか、それとも壊れてるだけなのか窓も半分しか開かない。

………。……時間の無駄だな。人の気配も無いし。

「いやぁごめん気のせいかも」

照れ笑いして戻った。


皆は改めてドアを開けようとしている。



予感がしていた。



見間違いなんかじゃない。

何かが僕らを見ていた。


今のが今回の事件に関係あるんなら、あっちから出向いてくれるだろう。


恐怖のユーレイとやらが……。

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