ユーレイ大騒動・食卓編
「ユーレイだってよユーレイ!」
開口一番、じゅんぺまんがそんなことを言った。
夕食の席での話だ。
ばっとむ町H−Rの皆でレイの作ったびっくり煮込みカレーを食べている。
ちなみに僕のにはししゃもが丸ごと入っている。
ビミョーなもん入れてるなあ、レイちゃん。
「そんでさぁ、そのユーレイってのがさあ…」
僕たちH−Rの大半は、各々担当の星に住み込みで仕事をしている。
ようするに単身赴任だ。宇宙規模のくせに地域性が強い。
更にH−Rは支部、支本部などが……
「……聞けコラァ!!」
頭はたかれた。
どうやら僕に話してたようだ。
じゅんぺまんが顔を近づける。
「聞いてたか?!とっくまん!」
聞いてなかったわけじゃ無いんだけど…さて、どうするか。
ここで下手に答えるとまたはたかれる。
それとなく周りを見てみた。
ひろきまんはこないだの騒動の報告書に目を通している。
聞いてないというより聞こえてない感じだ。
レイはそんなひろきまんをぼーっと見ている。
さすが趣味はひろきまんと豪語するだけのことはある娘だ。
じゅんぺまんの話は…こっちも聞こえてないんだろう。
シカトしてるわけじゃないと信じたい。
たっくまんはホタテの次に嫌いなシイタケをどう処理するか考えるのに必死だ。
その中にちゃんと食べるという選択肢は無いんだろうな。
……なるほど。今日は皆じゅんぺまんの話に乗ってくれそうに無いな。
とりあえず無難に返事しよう。
「はぁ…ユーレイ?それがどうかしたの?」
じゅんぺまんは機嫌を直してくれたらしい。
大きくうなずき、机から身をのりだしてきた。
「何か最近、ここら辺で出るらしいぜ」
口の横に手を当て、内緒話のモーションをしてはいるが、ボリュームは近所まで聞こえるレベルだ。
うるせえ野郎だ、と思ってはいけない。これがこいつのキャラなのだ。
「今日ジョディから聞いたんだけどさぁ」
誰だそいつは。
と言いそうになったがなんとかこらえた。ムダに話を長くする必要は無い。
ていうか外人……?
「ジョディが仕事の帰り、いつものように夜中のばっとむ町の通りを歩いていたら…」
「仕事って?」
思わず口を開いて一瞬、無駄な質問をしたと思ったが、気になったからしかたがない。
「駅前の公園とかでたそがれてるサラリーマンに救いの手をさしのべるとかなんとか」
「…救いの手?」
また思わず口を開いて一瞬(以下略)
「史上最高の宗教メガハッピィハッスル教の信者にするんだと」
やっぱ聞かなきゃ良かった。
どんな友達付き合いしてんだこの男は。
まあ、友達選ばないのはある意味偉いかな…。
「んで、そのメガハッピィ教のジョディさんがどんなアンビリバボーに遭遇したわけ?」
「ジョディが見たってわけじゃないらしいがな」
一度言葉を切る。話し方がこいつは上手い。
「今信者の中でユーレイを見たって奴等が異常に増えてんだと、んでそれと同じ頃から妙な事件も起きてて心配なんだって」
「妙な事件?」
「行方不明とか」
……妙っつーか…
「…それが宇宙人と関係してると言いたいんだな」
あれ、ひろきまん聞いてたんだ。
いつの間にか報告書を置いてこっちを向いている。
「というより面白そうと思ってますね?」
レイが付け足す。
まぁ、彼女が言うなら間違いない、というかじゅんぺまんの顔見りゃ誰でも分かる。
「けどさ、違うんならそれで良し、ビンゴなら…」
捕まえる、と。確かに正論だ。
ひろきまんもうなずく。
「そうだな、明日あたりうかがってみるか」
「明日と言わず今日でよくね?」
いきなりたっくまんが言い出した。
シイタケ食いたくないだけだろお前は。
たっくまんを見る皆の目もそう行いたげだ。
レイがにっこり言う。
「ちゃんと食べろよ♪」
……………
静かな食卓になった。




