ホラーだけど笑える話2 俺のおふくろは3年前に逝っちまったはずじゃ・・・
仏壇に今日も手をあわせた。
「おふくろがいなくなってから、そろそろ3年か。
つい最近のことに感じるや。」
仏壇にはおふくろが大好きだった草餅が置いてある。
「それじゃあ今日も仕事、仕事。」
軽トラックに乗り、職場の工務店へと向かった。
汗をたらして、必死に働いた。
おふくろがいなくなってからは、自分一人で生活をしてきた。
工務店でもうまくやってたし、おふくろの死を悲しんでくれた人もたくさんいた。
だから、いつまでも悲しんでいられないと精一杯働いた。
「ただいま。」
家には自分しかいないが、必ず帰って来たら言うようにしている。
いつでも、この家でおふくろが見守ってくれると思っていたから。
帰ってきてすぐに、汚れた服を洗濯機に詰め込み、風呂に入った。
これが毎日の日課だった。
「ああ、いい湯だった。」
濡れた髪のまま冷蔵庫を開け、ビールを手にした。
コップとビールを取り、仏壇の前に座った。
グビッと、喉をならして一口飲んだ。
しかし、仏壇を見て何かに気づく。
「あれ、何か変だ。
そうだ、草餅がなくなっているんだ。」
確かにつまみが欲しいが、仏壇のものまで食ったりはしないぜ。
確かに朝は置いてたんだけど・・・
「今日は酔いが回るのが早いなー。」
その日は、そのままばったりと寝てしまった。
次の日も仏壇に手をあわせて出かける。
「そうだ、草餅を置いてやるか。」
新しい草餅を仏壇に置き、しっかりと鍵を閉めて出かけた。
今日は仕事の帰りに仕事仲間と居酒屋に寄ってきた。
「すっかり遅くなっちまったな。」
鍵を開けて、家に入った。
「ただいま。」
「・・・・・・・おかえ・・りな・・・さい・・・」
「おっ、おい。誰かいるのか?」
電気をつけて辺りを見回した。
「なんだよ。誰もいねーじゃねーか。」
気のせいかと、首をかしげながら居間へ入って行った。
「あれ、また仏壇の草餅が食われてやがる。
誰だよ、昨日今日と食いやがって・・・」
「・・・・私よ・・」
「おふくろ!
おふくろなのか!?」
聞き覚えのある声に驚きを隠せず、後ろを振り返った。
そこには、ぼろぼろの服を着て包丁を片手に持ったおふくろが立っていた。
「お・・ふく・・ろ・・・」
おふくろはその包丁で俺の胸をひとつき・・・
うまく心臓を射抜いていた。包丁を抜くと血が吹き出した。
俺はすぐに意識を失ってしまい、居間が血の海となった。
最期に俺は、無意識におふくろの顔に目をやった。
するとおふくろはニヤリと笑ってこう言い残した。
「早くこっちに来ておくれよ。
お前さんがいないと寂しくて、せっかくの草餅もうまくないわい。」
仏壇に毎日手をあわせるのは、いい習慣です。
By 寺の坊主