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温泉に行く

作者: WAIai
掲載日:2026/07/16

「あ、気持ちが良い」


俺は温泉につかると、はあと大きく息を吐き出した。


まるで母胎にいるような安心と安堵と、色々と混じっている。


「肌に良いみたいだから、ゆっくりつかっていこうと」


俺は温泉を両手で顔にかけると、全身をリラックスさせ、寛いだのだった。


そまそも、どうして温泉にいるのかというと、時を巻き戻して、下校途中にある。


いつもと同じく、彼女と帰路を歩いていると、彼女が「あ」と言ったのだった。


俺は何だろうと眉根を寄せると、彼女はスーパーの駐車場を指す。


「温泉のマイクロバスがある!!」

「…は? それがどうした?」


気軽に質問したつもりが、口調が硬かったかもしれない。

しかし彼女は気にせず、俺の手を引っ張っていく。


「おい!! どうしたんだよ?」

「あのね、私の知り合いが運転しているの!!」

「え? 運転?」

「うん!! あ、こっちを見た。おーい!! おじさん!!」


彼女がマイクロバスに近づくと、窓が開いて40代くらいの男性が顔を出してくる。


鹿のような柔らかい顔をしており、穏やかそうな人だった。


「どうしたんだ? 学校の帰りか?」

「うん!! そんなところ。おじさんは?」

「俺は宴会の人達を送ってきたところ。そろそろ温泉に戻ろうかと思って」


そう言うと、おじさんは俺に目を向けてくる。


「彼氏か?」

「えっと、その、秘密!!」


手を繋いでおいて秘密はないと思うのだが、俺は礼儀として頭を軽く下げた。


するとおじさんが言ってくる。


「デカいな。いい身体しているし。…うん、じゃあ、温泉に行くか」

「…は?」


話の流れが分からず、俺は思わず地を這うような声を出してしまった。


鹿に似ているおじさんは、少し驚いたようだったが、年の功か、俺に笑みを浮かべてくる。


「温泉はいいぞ。傷に効くし、美肌効果もある。…さあ、乗れ。連れて行ってやるから」

「え…どうする?」


彼女の顔は安堵したもので、おじさんという人に、いつもお世話になっているのが分かる。


俺はスマホで時計を確認すると、耳を伏せたうさぎみたいな彼女に言う。


「俺は別にいいけど。お前は?」

「私も大丈夫!! まだ空も明るいしね」


彼女はそう言うと、空を見上げる。


子どもがペンキを塗ったかのように、ところどころ、橙色の空。


スーパーに入る車も少なく、これから買い物客で賑わうのだろうと推測する。


「よし、行こうか。おじさん、お願い!!」


彼女は俺を引き寄せると、マイクロバスに乗り込んだのだった。


「…で、今…お風呂に入っているんだよな」


俺は露天風呂に移動し、外の景色を眺める。


森林の多い山奥のような場所。

目にも優しく、安らいでいくのが分かる。


他に客は2、3人おり、おじいちゃん達だった。

若いのは俺だけで、肩に湯をかける。


「そろそろあがるか」


彼女はどうしているだろうと、隣をちらりと見るが、カードされていて見えるわけがない。


俺は身体を拭って脱衣室に入ると、おじさんと遭遇した。


「ああ!! 君か」

「は、はい。あの、ありがとうございました。タオルまで貸してもらって」


俺は緑色のタオルを手にしており、後で洗って返そうと思ったのだが、おじさんが受け取ってくる。


それからバスタオルを渡され、にこやかに言ってくる。


「温泉はどうだった?」

「はい、とても気持ちが良かったです。汗が全部洗われたというか…」

「そうか。それは良かった」


おじさんは俺の背中をばしばし叩くと、

「バスタオルは受付のスタッフに渡してくれ」

と言って去っていった。


俺は素早く着替えると、彼女が廊下で先に待っていた。


「あ!! やっと来た」


彼女の顔は艶っぽく、いつもよりも美人に見えた。


1人で危ないな、このうさぎはと思いつつ、俺は彼女に聞く。


「気持ち良かったか?」

「うん!! 少ししかお客さんがいなかったから、ゆっくり入れたし」

「そうか。俺のところも少なかったぞ。これから混むのかもな」


そう言うと、俺は彼女の手を取る。

まだほかほかして柔らかく、まるで羽毛みたいだった。


「おじさんにお礼を言わなくちゃ。ただで入らせてもらったんだから」

「さっき会った時に言ったんだけど。また一緒に言いに行くか」


俺が表情を崩して言うと、うさぎは耳をぴょんと立てた感じで、可愛かった。


今日くらいご褒美をもらってもらってもいいかと思い、受付に向かうのだった。


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