隠し事
15分短編です
あ、これは、やばいかもしれない。そろそろだと思っていたんだけど、やばいかもしれない。
そう言えば、この数か月、来てない。
「どうしたの?」
最近付き合い始めた彼が心配そうに私の顔を覗き込んできた。
「ん、っと・・・大丈夫!コンタクト落としたと思っただけ!」
「そっか、コンタクトは大変だよね」
そう言って彼はリビングに戻って行った。
危ねぇ。付き合って、2か月で、まだ何もしてない相手に、妊娠したかもなんて言えるわけないじゃん?ま、まぁ、まだ、生理不順なだけって可能性は残ってる。だからまずは、婦人科に行って、生理不順って診断を貰わないと。いや、もし妊娠しているなら、今日彼とシてしまえば、誤魔化せるんじゃないだろうか。婦人科に行くのはそのあとでも良いかも。
「ねぇ、今日さ、映画行こうって言ってたじゃん?」
「うん、楽しみだねぇ」
「あのさ、帰ったら・・・」
ちょっとだけ胸元を開けて、誘惑する。童貞だから簡単だろう。
「ちょ、ちょっと待って!俺、そう言うのはまだ・・・」
そうだった、こいつ、童貞なくせに、その辺はお堅いんだった。下手な処女よりガード硬いんじゃない!?
「そうだけどさ・・・あたしたちもう付き合って2か月じゃん?・・・そろそろ・・・」
胸を腕に当てて、彼のガードを崩壊させる。ほらほら~陥落しろ~!
「ちょ、本当にっ」
そう言って彼は、慌ててトイレに逃げ込んでしまった。鍵をかけられるスペースに逃げるなんてずるいぞ!!
「ご、ごめん、でもまだ俺にはそう言うのは早いって言うか・・・その、興味が無いわけじゃないんですけど・・・ごめんなさい」
「・・・・いや、いいよ、ごめん、ウチも焦りすぎた」
やばい、これはマジでヤバイ。このまま彼と何もできないままお腹大きくなったりしたら・・・・。まてまて落ち着け、え、この二か月は、彼としか過ごしてないんだから、それ以外はあり得ない。つまり二か月は確実に経ってる。アイツと別れたのは、大体四か月前・・・。あれ、コレ・・・詰んでない?
冷汗がダラダラと垂れていく。どうしよう・・・・どうしよう。
「だ、大丈夫?」
いつの間にかトイレから出てきていた彼が、私の様子を見て背中をさすってくれた。こういうやつなんだよなぁ・・・だから好きになった。元カレはただのクズだった。だから、今の彼を大切にしようって思ってたのに・・・。
「ごめん・・・ウチ・・・」
図らずも涙がボロボロと零れてきた。もうだめだ、洗いざらい話すしかない。これで嫌われたら、私はこれからどう過ごしたらいいんだろう。そんなことを考えつつ、私は泣きながら支離滅裂に現状を話していた。
「そっか・・・うん、事情は分かったよ。今日は映画はやめて、一緒に婦人科に行こう」
「うん・・・ごめん」
「大丈夫だよ。婦人科から帰ってきてからでいいから、元カレさんの話、聞かせてくれる?」
「え、なんで?」
「なんでって、お礼参り、しとかないとなって」
“お礼参り”なんて単語がこいつから出てくるとは思ってなくて驚いた。
「僕も隠してたことがあるんだ。」
そう言って彼が上着を脱いだ。
——背中の立派な龍と目が合った——
まぁ~、ご立派・・・。




