第26話 ラスボスとの邂逅と決戦開始
正直強さを見せるなら、ユイカちゃんの方がいいとは思う。少ししか動きが見れていないが、攻撃性能も戦いにおける経験値も俺より上だと感じた。あと戦い方が派手で見ごたえがあってカッコイイ。
対して俺の戦い方は、忍者のように人目に晒されないように静かに人知れず戦うのが主流だったから、少し地味。銃を撃てるわけでも、派手な技があるわけでもない。そして最大の欠点として俺の方が実力は低い。
でも─。
「自分に行かせてください!! 期待に応えてみせます!!!」
気合を込めて手をあげながら志願すると、ユイカちゃんはにっこり微笑んでくれた。
「気合十分ですね。いいでしょう!敵幹部との大切な初戦、これからの行く末を占う先鋒を、夢叶君にお任せします。期待していますよ」
「はい! 頑張ります! カッコいい所も見せていきたいです!」
つい欲が漏れながらも、気合十分にグッドサインをしながら宣言すると微笑んでくれた。
カッコいい所を見せたい!
「フフフ……相変わらず素直ですね。先ほど戦っている姿を見ていたのでその点は心配しなくても大丈夫ですよ。私の方をちらちらと見ながらも敵に対して的確に対応していて素晴らしい動きでしたよ。見ていて楽しかったですし」
「見てくれてたの!? ありがとう! 褒められるなんて光栄だよ! ユイカちゃんも華麗な動きでかっこよかったし、鋭い目つきで敵を見てたのも胸がドキドキしたよ!」
喜んでくれた後、ユイカちゃんの目が一瞬できりっとした真剣な眼差しへと変わった。
「では夢叶君……健闘を祈ります」
「うん! いってきます!」
その言葉に頷き、石板へと向き直る。そして時雨で【SOLO】の石板を斬った。
刹那、石板は光の粒子となって消え去り、ユイカちゃんが光に包まれたと思った時には光の壁の外へと瞬間移動していた。
参加者以外は出される仕組みなのはさっきのでわかっていたが、あまりの速さに少し驚いた。なんだか寂しい。
突如として背筋の凍るような視線を感じた。今まで感じたことの無いような異質な感覚。
視線を感じる方はバルバロスの背後。急いで視線を向けると、空に先ほどまでは存在していなかった得体の知れない者が半透明で映し出さていた。
黒を基調と金で装飾された玉座にローブを被った何者かが座っている。顔の部分も影になり見えないが、闇に包まれているその奥から、深紅の瞳がはっきりと浮かび上がり、俺を睨みつけていた。瞬きもせず、感情はまるで読み取れない。しかしその目は全てを凍てつかせるほどに冷たく、奥底が見えない。
その深紅の瞳と視線が重なった瞬間、全身に寒気が走るほどの鮮明で純粋な殺意が襲ってきた。じかに心臓を握られているような生きた気のしない感覚。今まで感じたことのないような圧倒的な悪意。陽気な天気に包まれて暖かいはずなのに、身震いしてしまいそうだ。
「まさか……」
誰かはわからないが、おそらくあれが─。
『君の予想通り、あれが【魔王ルシファー】だ』
唐突に後ろから聞こえた聞き覚えのある声にばっと振り返ると、バルバロスの方と同じようにこちら側の空中にアルカナが映し出されていた。こちらは玉座に足組しながらラフに座り、にやりと笑っている。
「アルカナ!? なんで!?」
『【リミテッド・トリニティ】を行う時はその種族における守護者が観戦するのがルールだ。ディアボロならルシファー。そして人類の場合は、僕だ。見守らせてもらうよ。見ているだけだから死にそうになっても助けることはないけど。頑張って』
楽しそうに笑い、頬杖をしながら話すアルカナ。この状況を楽しんでいるようだ。むしろ、この状況を心待ちにでもしていたかのような雰囲気すらもある。アルカナの顔は口しか認識できないため目がどのような物かはわからないが、子供が好きなおもちゃを目の前にしているようにキラキラと輝かせているだろう。やっぱり上位存在の考えは理解できない。
チラッとユイカちゃんを見ると、出現したアルカナとルシファーを興味津々に眺めている。情報収集しようとして偉い!かわいい!リラックスできて身が引き締まる思いだ。
癒された後に視線をバルバロスの方、その奥のルシファーへと戻す。
「あれがいずれ、俺たちが倒すべき相手……だね」
『そう。宿命の相手ってやつだね。どうだい? 初めて見て。怖い?』
「聞かなくてもわかるだろ。凄く怖いよ。足が震えそうだ。でも…」
『でも?』
─絶対に勝つ。なにがあろうとも。
氷点下のような冷え切った瞳を睨み返しながら、そう心の中で改めて誓った。
『いいね…! それが見たかった!』
俺の言葉にアルカナが笑ったような気がした。本当に楽しそうだ。何を考えているのか、思惑は全くわからないけど、今はそんな事はどうでもいい。目の前に事に集中しよう。
倒すべき相手であるバルバロスへと視線を戻す。相変わらず不敵な笑みを浮かべている。しかし戦闘に向けて集中力を高めているようで放たれた殺気は先ほどよりも鋭く、空気を震わせる。歪な形をした大剣を真っ直ぐ俺に向けて構えている。いいね、やる気満々だ。
俺も姿勢を低くし、時雨を構える。瞬きせずに、火花が散るくらい視線がぶつける。
フッと視界の上から何かが落ちてくるのが見えた。光輝くコインのようなものだ。
「なにあれ?」
『戦いの合図を告げるコイン。【アーク・オリジン】。あれが落ちた瞬間が─スタートだ』
刻一刻とコインが地面に迫ってきている。緊張感からか時間の流れが遅くなったように錯覚して、コインが落ちてくるのがスローモーションに見える。地面に近づいてくるにつれて徐々に心臓が加速していく。ついに戦いが始まる。
勝つよ…絶対に!夢を掴む第一歩へ。
コインが地面に触れた瞬間、滾る思いを胸に地面を蹴った。




