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第25話 戦いの選択

「スペリオル同士の決闘は【リミテッド・トリニティ】によって行われる。これは神々のルール。決して破ることはできない。ルールは単純。どちらかが死亡、戦闘不能、又は降参の宣言をするまでフィールドから出ることはできない完全決着ルール。フィールドはバリアによって内と外でそれぞれ完全に不干渉状態となり、横やりが入ることはない。内部の戦いに影響を与える行為は禁止される。【絶対否定の闘技場】の中で発生した攻撃は外に漏れることはなく周りに対して影響を及ぼすこともない。第三者が攻撃に巻き込まれる、第三者が乱入するなどという興ざめな展開にはならないという事だ。これが選ばれしスペリオルの誇り高き戦いだ。存分に楽しむがいい」


「成程ねぇ……逃げ出すことも邪魔されることも周りに影響を与えることもない戦いか」


「そういう解釈で合っている。そして今、お前たちの目の前にあるのは『選択肢』だ。この崇高なる戦いにおいて各種族には様々な項目で3つの選択肢から選ぶことができる。人類ならば【人数】だ。SOLOは一人、DUOは二人まで、UNLIMITEDは制限なし。戦いにおいて重要な要素である人数の選択権は、この世界で“最も弱小な存在”である人類に優先的に与えられる。その石板を斬れば選択される。自信がないならDUOで1対2でも構わんぞ?前に人類のスペリオルが挑んできた時はUNLIMITEDで3人がかりだった。残念なことに少しも滾ることの無いつまらない戦いであった。傷一つも付けられはしなかった」


 そう言いながら愉快そうに笑いながら吐き捨てるバルバロス。


 ずいぶん舐められたものだ、という悔しさはあるが人類のスペリオルが3人がかりで挑んで敗北したのであれば、それは調子づかせることになっても仕方がない。というか人類視点から見れば、それは結構絶望してもおかしくないレベルの事だ。こんなことが毎回続けば、それはもう希望を持てなくても仕方がない。


 『エルフ』、『フェアリー』、『ドラゴニック』、『ウンディーネ』─名前を見ただけでもこの中で人類が一番弱いのは間違いないし、戦闘において影響力の大きい【人数】の選択権を貰えるのはありがたい、なんて思っていたが、むしろそこまで差があると当然の権利なのかもしれない。


「人類は人数を選べますけど、そちらは何が選べるんですか?」


 確かに。バルバロスの前にも石板がある。その言葉に少し感心したように笑みをこぼすバルバロス。口元の鋭利な牙がきらりと不気味に光った。


「我々は─【環境】を選ぶことができる」


 背中の漆黒の剣帯から禍々しいオーラを纏った剣を抜き、サッと目の前の石板の1つを斬った。その刹那、バトルフィールドの景色が一変した。


 大地を揺るがす衝撃音と共に、緑が茂る大地がみるみる変化していく。触れたらその箇所が切れてしまいそうなほどに鋭い岩肌がせり上がり、土煙が舞う。草木は一瞬にして姿を消し、心地よく吹いていたそよ風も髪をなびかせるほどの強めの風へと変わった。凹凸の少ない地面から踏み外せば転んでしまいそうな足場の悪い岩場へと変貌。地面を軽く蹴って感触を確認する。衝撃が足から膝に伝わってくるほどの強度。まるで鉄のような硬さだ。随分と鋭利だ。転んで手をついたら血が出そう。あぁ…考えたくない。


「なるほど。【環境】とはフィールドの環境ということですか。自分のホームで毎回戦えるなら、それは優位でしょうね…数的優位も無意味に近いかも、しれないくらいに」


 周囲を確認した後、目を細めて力強くバルバロスを睨みつけるユイカちゃん。しかしその表情に対して声色はどこか嬉しそう。たぶん知らなかったことに触れられて嬉しいんだろうね。でも真剣な場だから表情は意識的に凛としようとしている。あくまでも俺の憶測の中のユイカちゃんの心境だけど…その気持ちはよくわかる。


 人類が【人数】の選択権を貰えているのは、種族間での差を縮め極力平等に力関係を保つためだと思っていたがそうではなさそう。戦いにおいて数的優位は勿論重要だが、それと同じくらい【環境】も大切だ。自分と相性のいいフィールドを選ぶことができれば、戦いを優位に事を進めることができる。


 しかもここは魔法が存在する世界。フィールド環境にとって魔法やマナに影響を与えるみたいなゲームとかでよくある設定。もしこの世界でもそれがあるなら…少し不安だ。


 夕方に本屋の前を通ったので、軽くだけどこの世界の仕組みやマナや魔法に付いて調べた。アークの魔法にはゲームのように炎、水、地、風、光、闇という属性がある。そして発動した時の状況によってバフ、デバフが付くと記されていた。詳しく見たかったけど、残念ながらそれ以上の情報はなく。情報不足の中で敵の幹部との戦いとは…きついな。


 岩場のようなフィールドに変化してからバルバロスが纏っているオーラのようなものが強まり、空気が震えているのが伝わってくる。これはバフ付いてますね!


「我がホームフィールド【ファースト・グランド】。まぁ……見ての通りだ。地属性魔法に強化がかかる岩場だ」


 相手のホームグラウンドとなれば、こちらの勝率が1番高い選択肢は間違いなくDUO。ユイカちゃん&俺VSバルバロスで2対1の構図にする。勝てる気しかしない。


 他の選択肢はSOLOを選択して俺かユイカちゃんがバルバロスとの1対1。UNLIMITEDは現状ありえない。こっちは2人が最大値だけど、相手はまだどこかに【スペリオル】が潜んでいるかもしれない。下手をすれば多勢に無勢。ユイカちゃんと一緒なら負ける気はしないと思ってはいるが、世界を知らない以上はこれ以上のリスクは冒せない。


 チラッとユイカちゃんの方を見ると、ライトグリーンの綺麗な瞳とぶつかった。かわいい!それはそれとして覚悟が決まった瞳はもしや、俺と同じ意見!…かもしれない。


「もしかして同じことを考えてる?」


「そうだと思いますよ。互いの性格を考えれば…あれでしょう」


「じゃあ、せーの」


「「SOLO!」」


 声が重なった。嬉しい!心が震えるほどに感動していて、胸の奥がじわりと熱くなっていく。同じ考えになっているのが嬉しくて笑って見せると、嬉しそうに微笑んでくれた。心臓がドキッと跳ね上がり、恥ずかしさで顔全体が熱くなる。


 『好きな人と考えていることが一緒になるのはめちゃくちゃ嬉しい!天にも昇る勢いだ!』と、恋愛漫画に描いていたが嘘偽りなく事実であることが身をもって体感できた。


「おぉ~! 同じ答えだったね!嬉しいよ!」


「無邪気ですね。でもそんなにも喜んでくれるなんて、私も嬉しいですよ」


 微笑むユイカちゃん。そして続けて。


「勝利を考えるならDUOを選ぶべきですが……私たちが求められているのは、そういうことではないですからね。リスクを冒してでも、実力を見せつけなくてはいけません」


 この初戦において、ただ勝つだけでは意味がない。複数vs単で勝っても、見ている人の希望になれるような戦いでなくてはならない。ならば正々堂々と1VS1がベスト。


「では……どうしますか?私か、夢叶君か」


 選択の時だ。

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