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第23話 推しと挑む戦い

 魔法陣を飛び出した瞬間、耳をつんざく轟音が聞こえたと同時に、構えた盾に衝撃が止めどなく襲ってくる。衝撃で左手が少し震える。敵の攻撃を全てこの盾で受け止めているのだから当然だろう。


 でも─。


「この程度じゃ止まらない……!」


 幾多の死線を乗り越えてきたか。視界いっぱいに土煙と閃光しか見えないが、影を這わせて敵の位置を確認。盾を構えたまま、敵へと突っ込む。


「なんだこい──」


 弾幕を押し返し、土煙と閃光から飛び出すと瞬時に敵の懐に入り、同時に剣を斬り上げた。


 斬撃が捉えたのは3メートルを超え、黒鋼の刺々しい鎧と悪魔を思わせるような巻き角が生えた鮮血のような真っ赤な兜を纏った兵士。鎧も兜もプレートアーマー風になっているので西洋的な装い。そしてあの禍々しい邪悪なオーラ。


 余裕綽々に構えていたところに、土煙の中から突然現れた人間に気が付いて驚きの声をあげたけど、気づくのが遅かったね。

 セリフの途中で、鎧ごと切り裂かれて上半身と下半身がお別れをした。

 

 斬った瞬間に確かな手ごたえと感じつつ、地面を蹴り次の敵へと駆ける。止まる気も確認する気もない。この感触だけで十分だ。


「敵襲っっ!!! パラディンが現れたぞぉぉおお!!!! 首をとれぇぇええ!!!!!」


 味方一人が一瞬にしてやられても指揮官らしき戦士が冷静に声を張り上げて、指示を出す。

 

 右の方からは怒号に紛れて悲鳴や独特な銃声が聞こえる。ユイカちゃんがOREDRで作り出したあの近未来的な銃の音だ。状況はよくわからないけど、怒号と悲鳴でユイカちゃんが敵を蹂躙しているのだけは分かる。流石ユイカちゃん!俺も負けていられない。


 踏み込むと同時に、ディアブロが火球を放ってきた。

 魔法によって生み出されたものだろう、と思いつつ盾で弾き飛ばし突進。

 

 中々の威力だけど、これで止まるほど軟じゃない。


 距離が詰められていると判断するや否や、すぐさま手に持っていた大斧を振りかざしてきた。切れ味を物語るように、日光が反射して刃先がキラリと不気味に光る。生身で食らえば一瞬で肉塊へと変貌してしまうだろう、なんて…ガーゴイルの時と同じ感想が浮かんだ。


 背中がひやりと寒くなるのを感じながら、大剣を横に振り、駆け抜ける。後ろから聞こえる短い断末魔と、風に乗った鮮血を置き去りにして。


 単騎では分が悪いと判断してか、取り囲むように一斉に襲い掛かってきた。合計8体。集団でかかれば、多少の犠牲が出ても仕留められると思ってのことか。確かにこの大剣では切れても3体程度。盾でガードしても1、2撃は入る。目には多少の恐怖心が浮かんでいるものの、闘争心の方が遥かにそれを凌駕していて、まっすぐと俺を捉えていた。


 いいねぇ、そう来なくっちゃ。でも俺も、黙って食らうわけにはいかない。


 もう影は這わせている。


 影がある場所の情報は全て頭の中に入ってくる。敵の場所も、行動も見える。


「【影ノ水面(かげのみなも)槍ノ草原(やりのそうげん)】」


 影が槍の形状に変化。鋭利で尖った影の槍が兵士に突き刺さる。鎧をものともせず貫通し、血がしたたり落ち、敵は短い断末魔をあげた体を大きく痙攣。永遠に動きを止めた。


 石化し始めた肉塊となった者の間を通り抜け、次の敵へと刃を向ける。止まることなく縦横無尽に駆け巡り、飛んでくる魔法を叩き落し、敵を次々に切り裂く。


 ちらちらとユイカちゃんの方へと視線を向けてみる。華麗に敵を薙ぎ払い、悠然と突き進む姿が見えた。闘志の炎が宿った綺麗なライトグリーンの瞳が爛々と輝きを放ちつつ、ただ目の前の敵を捉え、敵をちぎっては投げ、一帯を蹂躙していく。鬼神の如くカッコいい!活躍に見惚れしまいそうになるのを我慢しながら、目の前の敵を薙ぎ払う。




 大勢のディアブロに覆われていた草原もほんの数分後には、石化した屍が乱雑する大地へと変貌していた。石化した体も、流れていた鮮血も砂と化し、風に吹かれ徐々に崩れて土に還っている。先ほどまで指示を出していた指揮官らしき兵士も今は石化して地面に横たわり、ピクリとも動かない。凄惨な血塗られた大地にならなくてよかった。


 恐怖におののき撤退するディアブロもちらほらと見え、遠くの方で『撤退っ!!!』と叫ぶ声が聞こえる。逃亡を図っていない者もこの凄惨たる光景を目の当たりにして恐怖で距離を取り始めていて、接近戦を仕掛けてくる者はもういなくなった。遠距離から魔法を放ちつつ撤退に向けて動いている。


 ユイカちゃんの方も同じ状況で、死体が積み重なり、返り血も浴びていない綺麗な状態のまま草原に1人でぽつんと立っている。距離を取る数少ない敵に銃を連射して仕留める勇ましい姿が見えた。


 最早、戦いにすらなっていない。


 俺も逃がすつもりはないので、遠くなっていく敵を追い、邁進する。残念ながら俺には遠距離攻撃は備わっていないからね。


「!」


 だが距離を詰めようとした時、遠くから高出力のエネルギー反応を感知。バックステップを踏むと同時に眩い光が向かってくるのが視界の端に見えた。


 少し離れた瞬間、逃げる兵士たちが一気に光に飲み込まれ、その先にある結界にぶつかり、けたたましい轟音と地響き。さっきのディアブロによる弾幕攻撃とは比べ物にならないくらいの眩い閃光が、結界を駆け巡った。至近距離で雷を見たかのような眩さ。


 光が消えた時には地面はえぐれ、焼かれているようにあちこちが赤く光っていた。石化した屍が無残に転がり、焦げ臭い不快な匂いが漂ってきて眉間にしわが寄る。レーザー光線か。


 直撃を食らった結界もどことなく揺らめき、少しだけ亀裂が入ってしまっている。見るからにダメージが入ってしまった。たった一撃でこれほどまでとは、何て破壊力だ。自分にはできない芸当だから、敵ながら素直に尊敬しちゃう。流石に今の攻撃をもろに食らえば、影を纏っていても致命傷になりかねない。さっき以上に背筋が冷えてきた。


 光線が飛んできた方を見ると、2体のディアブロが立っている。


「やれやれ……我が前線に来るまで待てばよかったものを。そうすればこのような情けない姿を晒す事もなかっただろうに……ディアブロの恥だ」


 そう言って右手に立っている方が嘆く。

 黒鋼の鎧に金色の装飾が加わり、節々が鋭利に角張った感じになっている。兜もより刺々しくなっていて、赤のコントラストが際立つ感じ。背中から悪魔のような刺々しい漆黒の羽が生え、先ほどまでの兵士とはヘルムの形が違い、口元と真っ赤な瞳がかすかに見える。この惨劇を目の当たりにしてもその瞳は揺らぐことなく、むしろ不敵な笑みを浮かべていて雰囲気も、邪悪なオーラも桁違い。今までの兵士とは明らかに格が違う。

 おそらく【円卓の騎士】と呼ばれる存在の1体。


 左手側に立っているのは全体的に尖りがなく滑らかな流線形の鎧を纏った兵士だ。鎧の表面は魚の鱗のように連なっていて不気味な赤黒い光を反射している。こちらは顔全体がヘルムに覆われているので表情は読むことはできない。焼き尽くされた地面のスタート地点が足元にあることから、レーザー光線を仕掛けてきたのはこちらの方なのだろう。


(本命がきたか……これは気合を入れ直さないと─死ぬな)


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