第22話 実力を見せる開戦
結界付近に到着。近づくにつれて轟音と微かな衝撃と共に、薄紫色をした雷のような閃光が縦横無尽に駆け巡っているのが見える。結界の外は、敵の攻撃による土煙と閃光によってほとんど何も見えない。
「結界に魔法陣の防衛反応です。あの色になっているという事は相当なダメージが蓄積している証です。もう長くは持たない……って感じですね」
近づくにつれて閃光が強まり、まるで雷雨の真ん中にいるような眩しさが襲ってきていた。魔法陣の中だからか衝撃波も轟音もなく、ただただ激しく脈を打つような閃光がひた走っている光景が目に入る。
この一歩先からは、運命をかけた戦場となる。
「どうですか? 怖気づきましたか?」
「領主ともあろう人でも、こんな場面で冗談を言うのですね」
微笑みながら返すユイカちゃん。その目は爛々と闘志の炎を宿し、ただ前を見据えている。俺も小さくうなずいて返す。その様子の周囲は少しだけホッとしたようで口元を緩ませた。自信が伝わったのだろう。
「おい」
ここまで口数が少なかったベネットさんが話しかけてきた。腕組みをしながら真剣なまなざしで俺たちをまっすぐ見ている。
「あんな大口を叩いたんだから……アタシらに見せてくれよ──実力ってやつを」
期待と不安、様々な感情が絡み合った瞳には確かに光が宿っている。人生で初めて、人に対して希望を持たせることができたような気がする。なんだか嬉しい。
「任せてください! 目にものを見せてやりますよ!」
「それは敵サイドに言う言葉では?」
ガッツポーズをしながら宣言する俺に、視線を魔法陣に戻してから微笑むユイカちゃん。横から見る微笑みもかわいい!
「勝ってお二人の楽しい時間を増やしてあげますから、安心して待っていてくださいね」
「べ、べつにさっきまでの時間だって、そんなに楽しく、なんか……」
「あら? もしかしてああいうのはイヤでしたか?」
「別に! い、い……イヤでは、なかった……けど……」
「フフッ、知っています。二人きりの部屋であんなにも“情熱的”に触れ合いましたからね」
「勘違いされるようなことを言うな!! ただお前が一方的に勝手にマッサージしてきただけだろ!!!」
「ちゃんと許可は取りましたよ? あんなところや……こんなところを触って、ずいぶんと嬉しそうな、楽しんでくれた様子でしたね」
「…っ~!! た、単にマッサージが気持ちよかっただけだっ!! それに触ったのは肩とか背中だろ!紛らわしい言い方をするなっ! それとどさくさに紛れて手を握るな!!」
恥じらいからか顔を真っ赤にして吠えまくるベネットさん。いつの間にか握られていた手を離そうとぶんぶん振るも、思いのほか力強く握られているようで全く離れない。諦めて睨みつけてじっとしていたらスッと離されて、少し驚いた表情を浮かべた後に悔しそうに軽く地団駄を踏む。
ペースは完全にシュヴァリエさんが握っているね。
「あぁ……だからチョーカーを」
ユイカちゃんに言われて今になって気づいたけど、ベネットさんの首には数時間前までになかったチョーカーがしてあった。
「わたくしがプレゼントしておきました。フフフ、よくお似合いで」
凄く生き生きとした表情だ。楽しそうで何よりだよ。ベネットさんもなんやかんやでそれを外さないという事は……いい感じなのかもしれないね。
「さて…そろそろ行きます」
「あなた方に、アルカナの加護がありますように……ご武運を」
そう言って深々と頭を下げて見送ってくれたシュヴァリエさん達を背に、結界へと歩みを進めた。振動と閃光が激しさを増す。
でも怖くはない。
だって隣に『最高の推し』がいてくれるんだから。
「緊張していますか?」
「ユイカちゃんの隣を歩いてることには緊張してるよ!」
「夢叶君は相変わらずですね」
「エヘ、それほどでも~。ユイカちゃんは?」
「戦いの場は、いつも適度な緊張感を持つようにはしていますけど、緊張はしていませんね。平常心と、自分の力を信じるのみです」
「流石! そういえば、この弾幕どうする?」
「普通なら弾幕がない場所から出て、強襲を仕掛けるのが正攻法ですけど……実力を見せてあげましょう。敵にも味方にも。いけますよね?」
そう言ってOREDRを発動。可愛い服が光の粒子に包み込まれ、一瞬にして純白の戦闘着へ変わった。右手には前と同じように金色の大剣。そして左手にはユイカちゃんがすっぽりと入るほどの群青色の円盾。
(か、カッコいい!! 待ちわびていた変身シーンを目の前で見れるなんて嬉しすぎる!!)
戦いの前なのであまり浮かれないようにはするけど、もし落ち着いた場所で見ていたら卒倒していたかもしれない。
結構浮かれているけどこれ以上は悪化しないようにしながら、気持ちを押さえつつ【影纏い】を発動。体に影の鎧を纏い、右手にいつもの大剣、そしてユイカちゃんに習って左手に盾。デザインも少し真似てみた。
「もちろん! さて……みんなに見せようか。俺たちの実力を!」
「えぇ、行きましょう! 私は右手側で!」
「オッケー! 左を一掃するよ!」
その言葉と共に同時に地面を蹴った。風を切り、弾幕が降り注ぐ戦場へと飛び出した。




