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第21話 雰囲気で異世界を楽しむ

 だが周囲の反応は冷ややかで完全にアウェーな空気。


「本当にこの2人に頼むのですか? 避難を最優先にした方がよろしいかと」


「そうですよ。パラディンなんてどうせ勝てない。悲しいですが、現実を受け入れなくては」


「もう16になりましたでしょう。無理なものは無理だと理解する年齢です」


「円卓の騎士もいるらしいですよ。尚のこと、諦めるのは早い方がいいと思います」


「こんな幼き者どもに何ができるとお思いで。夢物語ですぞ。領主ならわかりますよね」


 口口に発せられたのは、期待は微塵もしていない諦めの声だった。ガラスのように鋭い言葉だし、冬の凍てつきよりも冷たい声色だけど…どうでもいい。

 期待させていなくても、自分たちのやるべきことをするまでだ。どうなっても止まることはない。


「僕たちの覚悟をお見せしましょう。シュヴァリエさん─俺達に、敵を殲滅する許可を」


 周囲がざわめく。誰からも信頼などされていない。漏れる言葉は疑念の声。表情は曇り、冷たい視線を向ける。でもこの状況を、全てを変えてみせる。

 次々に上がる声を無視し、部屋の中に声が響く。


「今、ガイアカグラはディアブロによって攻め込まれています。どうか……敵を殲滅して私たちを救ってください」


 目の前まで来て、深々と頭を下げてくれた。最後の望みと鬼気迫るその声は、空気を震わせ、魂が込められ強い意志を持った勇ましいものだった。そのお願いしかと受けました。


 ユイカちゃんを見れば、視線が重なった。微笑みながら頷いてくれた。これほどまでに頼もしいことはない。不安なんて一切ない。


「期待に応えてみせます。俺たちの……パラディンの実力を示します!」


「その任務、しかと承りました!」


 ユイカちゃんも気合が入っているようで、ライトグリーンの瞳に爛々と輝く闘志の炎を宿していた。見るもの全てを飲み込みそうな瞳と、気迫によって周りにはオーラのようなものが見える気がする。『エレクトロン・アカデミー』でも難題に挑む前の気合の入っているユイカちゃんは描写されていたが、直接見た方がやっぱり何倍もかっこいい!


 そんな彼女の隣で戦えるのだから、俺も恥ずかし所は見せられない。


 お見せしよう。俺たちの力を。



 今ある情報を騎士の人に教えてもらいながら戦場へと移動。ベネットさんだけではなく、領主であるシュヴァリエさんまでもが周囲の反対を押し切ってついてきてくれた。


 残念な事に移動の間に第2結界も突破されてしまい、残るはガイアカグラに来た時に通ったあの魔法陣のみ。そこが最終防衛ラインとなった。

 戦闘開始地点は、来る時に通った広々として草原。周りに町や村、木や岩など隠れられそうな遮蔽物もない。真っ向からの衝突となりそう。


 この世界に来た場所から始まるなんて、なんか不思議な気分だ。


「そういえばディアブロってなんか特徴あるの? ガーゴイルしか知らないんだけど。ディアブロってみんな、あんな感じの化け物みたいな感じの奴?」


「多種多様で名前がついている方が珍しい。しかし最大の特徴は『邪悪なオーラ』。ガーゴイルにもあったのでは? そして1つ……絶対に教えておかなくてはいけない情報が」


「何でしょう?」


「敵の一体には【スペリオル】……すなわち『円卓の騎士』の姿が確認できたと報告が上がっています。今はまだ合流できておらず後方にいるようですが、戦線に加わるのも時間の問題。円卓の騎士から攻撃されれば、おそらく今の結界は有って無いようなもの。酷なお願いかもしれませんが、円卓の騎士が合流する前に決着をつけた方がよろしいかと。なんて言っても……お二人はスペリオルとか円卓の騎士とか知りませんよね」


「緊張感が高まっている場面で本当に申し訳ないんだけど、一切知らないです! 何かまずいことが起きているのだけは伝わってきました!」


 シュヴァリエさんの護衛や騎士からは呆れたようなため息が聞こえ、瞳からは希望の光が薄まり不安と『こいつら大丈夫か?』みたいな疑いの色が強まった気がした。


 さっきまでの高らかなる宣言も格好がつかない形になって少し恥ずかしい。ユイカちゃんまで眉を八の字にしてしまっている。それはそれとして可愛いけども。



【スペリオル】─種族で類まれなる戦闘能力を誇る者に天より与えられる称号。人類ならパラディンや騎士団長クラス。ディアブロならば円卓の騎士クラス(推定)。

 この称号を保有する者同士の決闘は【リミテッド・トリニティ】で行われる。 


【円卓の騎士】─ディアブロの幹部の総称。


 なんか色々出てきたけど、とりあえず今は時間がないから詳細は省かれた。俺は雰囲気で異世界に順応する。でもゲームみたいに称号がいっぱいでテンションが上がるね。


「人類なら、パラディンでなくとも天性の実力を誇れば、守護者アルカナが授けてくれる称号だと言われています。ユグドの騎士団長にランスロットという方がいるのですが、その人もパラディンではありませんがスペリオルの称号を持っています。どの程度の実力で【スペリオル】が宿るのかは解明されておらず、まだまだ未知数。人類ですらもそうなのでディアブロの中ともなると想像でしかありませんが、おそらく円卓の騎士になるのが条件かと。どちらにせよ、実力は天から与えられた折り紙付きです。十分にお気をつけて……」


「オッケーです! いきなり敵の幹部との激突だと理解できた。いいね。じゃあ……行こっか!」


「え……ちょっ!? 作戦は!?」


 困惑の声が漏れる。特に作戦とか考えていないのだけど、まずいのだろうか。


「作戦ですか? ちゃんとありますよ」

 

 『何を当然なことを?』とばかりに、不思議そうな表情を浮かべている。流石、ユイカちゃん。作戦を考えていたようだ。えらい!周囲は不安そうな目を向けているけど、俺は彼女に全面的に信頼しているから不安はない。どんな作戦でも遂行します!してみせます!



「真正面から私たちが敵を倒す! 以上です!」



「おぉ……流石ユイカちゃ……さん!」


 周りの空気を揺らすほどに威風堂々と宣言されたのは、作戦とは呼べないような作戦だった。

 

 だが本人的には自信はたっぷりらしく、腰に手を当て、胸を張り、そしていつもの得意顔を浮かべている。溢れる自信と太陽の光によって神々しく輝いて見える。可愛い!


 あまりにも堂々と勇ましい様子で強行突破を図る姿に胸がキュンとして、人前にもかかわらず“ちゃん”付けしかけた。セーフ。

 たまにこうやって真面目な顔でパワープレイに走るから、そのギャップによる可愛さで毎回やられるんだよね。


 チラッと周りを見ると明らか不安そうで、そして少し呆れて雰囲気で天を仰いでいた。


 まぁ…この反応も仕方がない。今はまだ信頼も信用もないだろうから。でもそんなのは関係ない。『ユイカちゃんと一緒に戦える』─ただそれだけで自信が湧き出てくるのだから。負ける気なんか一切にしない。むしろ勝利以外見えない。


「一緒に頑張ろうね!」


「夢叶君と一緒に戦えることを心待ちにしていました。楽しみです」


 和気あいあいとしている俺たちと違い、周りの人は不安そうにこちらを見つめている。まるで壁があるかのように空気が違う。煌々と輝く3つの太陽に照らされて、暖かな空気に包まれている俺達と、まるで冬の大気を浴びているように陰鬱な雰囲気。


 まさに陰と陽。


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