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第13話 異世界の都市『ガイアカグラ』

 3人で目的地であるガイアカグラに歩みを進めた。2人から3人に増えたといっても特変わることはなく。ベネットさんは俺たちを見ながらなにかを考えているだけで、話には極力混ざってこなかったし、なぜかユイカちゃんから着替えるようにと要望されて、服装は自前のロングメイド服へと変わったというくらい。いたって平穏な時間だ。


 森が開けた途端、少し距離があるにもかかわらず巨大な城壁が視界いっぱいに広がった。大きな石を重ね合わせた強固な壁、一定の間隔に建てられた尖塔。監視も防御面もばっちり。これなら魔物やドラゴンの攻撃にも耐えることが出来そう。


「で、でかい…」


 都市を囲う城壁の高さは近づくほどにまるで飲み込まれてしまうかのような錯覚を覚えてしまうほどに高く、ただただ圧倒される。俺が通う三階建て校舎よりも遥かに高い。どうやら城塞都市のようだ。


 遠くから見て石造りだと思っていた城壁は黒光りし金属で補強されているよう。城壁だけではない。二階建ての建物がすっぽり入る位の大きい巨大な門も、金属で補強させていて重厚感があふれ出ている。王都と言うだけあって全てにおいて重厚感が醸し出されている。

 ついでに世界樹らしきものには、全く近づけている雰囲気がない。デカすぎるだろ。


 ユイカちゃんをチラッと見ると、俺を凝視していてばっちり目が合い、心臓がドキッと跳ね上がった。どうしたんだろう?


「立派な建造物ですね。ここまでの城壁を見るのは初めてです。行きかう方々の服装は古きヨーロッパ式のチュニックのような格好もあれば、露出の多いワンピースやスカートなど、ピアスをつけている方々もいて所々に現代ファッションが混じり年代もバラバラですね」


 気が付けば、石畳で舗装されている道になってきていたし、ここら辺まで来ると人もちらほらと見える。異世界での初めての街…楽しみであり不安だ。さっきのベネットさんの話によれば俺たちはあまり期待されてないっていうし。


「確かにいろんな人がいるね! 言語は現代日本をベースにしてあるって言ってたけど、もしかしたら服装もそういう感じで現代と過去の服装を混ぜているのかもしれないね。みんな個性的だねー」


「……」


 行きかう人々を見ながら言ったらユイカちゃんはなぜか無言で見つめてくる。


「どうしたの?」


「……いえ。なんでもありません」


 そう言うと俺から顔をそらした。俺には読心術とかないからユイカちゃんの心境はさっぱりわからない。むっとした表情でもなかったし、気になるけど答えは見つからないだろうから一旦置いておこう。それにしてもユイカちゃんのライトグリーンの瞳は綺麗でドキドキするなぁ。


 城壁の周りは水堀で囲まれていて、町に入るには石レンガの橋を渡らなくてはいけない。城跡とかほとんど行った事がないから使われている水堀を実際に見るのは初めてだ。覗いてみると水は透き通り綺麗で、風情があることに煌びやかな朱色の鯉が泳いでいる。


 だが気になるのは門番や見張りの数の少なさ。

 ぱっと見ても5人ほど。こんなにも城壁や堀があり、防衛に力を入れている様子なのに。それに行きかう人も、顔パスといった感じで何も書類などを見せることなく門を通過していく。むしろ何かを貰っている。


 城壁に沿うように、地面に魔法陣らしきものが刻まれていた。漫画やアニメでしか見たことがない形容しがたい独特な模様。特に何か気のような気配を感じるという事はない。


「おや? 君たち、ガイアカグラは初めてかい?」


 プレートアーマーの上からでもわかるくらいに門番らしい筋肉質な体型に、立派な大槍を携えている。ヘルムからは茶髪に少しあごひげが見え、気のよさそうなお兄さんといった感じだ。辺りを不審に見回していた俺にすぐさま声をかけてくるとは、流石門番。


 声をかけられたのは、運がいいことに俺だ。


「はい、初めてです! この魔法陣?も初めて見まして」


「そりゃそうだ! この魔法陣は王都アルビオンと同じく特別製でね、世界樹のマナを直接流し込んでいるんだ。ディアブロにも発見されない隠匿魔法はさることながら、魔物や上位ドラゴン、さらにはディアブロの攻撃ですらびくともしない結界魔法を誇る。しかも通っただけで必要な情報がわかるんだ。受付が見えるだろ?そこの許可書に情報が書かれるんだ」


 そういって橋の反対側を指さす。

 通っただけで判別できるなんて、元の世界よりも便利なシステムだ。これならごまかしも効かないだろうし、犯罪者やスパイなんかも入り込めない。しかも隠匿魔法とやらで発見すらされないとか超高性能だ。


 でも…『この世界の住人じゃない俺達』はどんな風に書かれるんだろうか。


「そのおかげで盗賊や闇の魔導士も通さないで、ガイアカグラの平和が保たれてるってわけだ。まぁ百聞は一見に如かず。早速君たちも体験してみるといい」


 そう言って、手でどうぞどうぞと促される。ユイカちゃんと目を合わせると、小さくうなずいて返してくれた。やましいことはしてないから堂々と行こう。


「そういえば、ベネットさんは他にやましいことはしてないですか?」


「問題ない」


「ガイアカグラに来たのは初めて?」


「初めてだ。知ってる情報も…領主が女ってことと、上質なマナが噴出してることから、魔王軍がここを狙ってるって噂を聞いたくらいしかない」


「…ちょっと待って? 初耳なんだけど。それ本当? 結構重要な情報じゃないの!」


 ここ狙われてるの?じゃあいつ敵襲があってもおかしくなさそうじゃん。危険地帯じゃん。まさかアルカナは、そのことを知っていて真っ先にここに送り込んだのか…あり得る。


「あくまでも噂だ。そう言ったって早々に来ないだろ」


「そういうのをフラグを立てるって言うんですよ。まぁ…私たちが倒すだけですがね」


「カッコいい!」


 そうだ。たとえ来ても俺たちで倒す。でもそれはそれとして妙な胸騒ぎがするから、フラグは立ったと思う。

 

 そう言っている間に、3人同時に魔法陣に入った。眩い光に包まれるとか、体から力が抜けるとか、そんなことは何も起きない。体には全く異常がない。ただ─。


「…おぉ!?」


 許可書を確認していた受付側にいる門番が叫び声に近い驚きの声をあげた。今、魔法陣に入ったのはユイカちゃんと俺のみ。絶対に何かあったよな…嫌な予感。


「ん? 君達なんかしたの?」


「いや、何もしてないですよ…うん」


 門番さんが俺たちを少し警戒した感じで見ると同時に重心を下げ、槍を持つ手に力が入る。すかさず戦闘予備動作に入るとは流石門番。でも本当に何もしてないから信じてほしい。


 受付の門番が凄い勢いで走ってこちらに向かってくる。焦ってはいるが敵意はなさそう。


「あ…あなた方、お二人は【パラディン】ですね!!」


「…あぁー」


 そういえば、さっきベネットさんからそう言われてたね。ちゃんとそういう称号的なのもわかるんだ。便利だね。この驚きよう、やはり勇者的なものって希少なようだね。

 周りを見れば、歩いていた人たちはパラディンという言葉に反応して、ちらちら視線を送ってくる。しかし……その目に光は宿らない。黒くどんよりとした感情が色濃く出ているだけ。何度か見たことがある。期待していない目だ。中には睨みつけてくる人までいる。


「パラディンだったのか! まだ若いだろうに、魔王に立ち向かうなんて勇気があるなぁ。元騎士団のお付きも雇って、気合も入ってるね!」


「えぇ。見ての通り若輩者のパラディン故、様々な事を調べたくガイアカグラに来ました」


 流石ユイカちゃん。こういう時に不自然にならずに咄嗟に返せるなんて凄い!ベネットさんがどういう扱いなるかと思ったけど、お付きの人か。元騎士団とか出るんだ。この魔法陣凄いな。元の世界にも導入してほしい。


「そうかそうか! ならまずは領主様に挨拶していくんだな。パラディンが来たらお連れするようにと頼まれている。それと、俺たちもパラディン派だから嬉しいよ。頑張ってくれよ! 期待してるぜ!」


「やっぱりその…パラディン派じゃない方々も多い?」


「ん? そりゃね…これだけ成果もでなかったらユグドの主要都市であるガイアカグラとはいえ、そういう風になるよ。魔王による侵攻が始まって約300年。我々人類は、領土を取り返すどころか徐々に奪われ続けているわけだし。【ドラゴニック】や【ウンディーネ】や【エルフ】なんかと違って、ディアブロに対して防衛しきれているとは言えない。まぁ…なんでかは知らないが、ディアブロは他種族への侵攻は人類に対するほどは力を入れていないようだから、他種族の連中は対処できている感じではあるんだが。他種族の連中もなぜか人類を狙っているし…勝機が見えない以上、命だけは助けてもらう、代わりに領土を放棄するって気持ちは…ね」


 長きに渡って何ら成果を得ることができずに心が折れて、侵攻に対して抵抗するのを諦めてしまっている。ベネットさんの言う通りというか聞いていた話よりもひどい状況かもしれない。先が見えないとどうしても気持ちを維持するのは厳しくなってしまうから、なんとなく気持ちはわかる。こういう所はどこの世界だろうと同じ。


 それにしても聞き慣れない単語がたくさん出てきたぞ。


『エルフ』はわかる。創作だと魔法学に優れた種族として描かれる種族だ。


『ウンディーネ』は、水を司る精霊だった、はず。ゲームで見た。


『ドラゴニック』は…ゲームの武器でそんな名前の武器があったような気がする。意味はさっぱり分からないけど、雰囲気的にドラゴンに関係ありそうな感じだね。


 どれも強そうだな。多分人類より色々と優れているのだと思う。しかも協力体制にないどころか、狙ってきていると。なにが目的なのかはわからないけど、人類にとって希望が薄れていく状況に拍車をかけているのは間違いない。


「でも、俺たちには世界樹と【守護者アルカナ】がついてる! だから─」


「アルカナ!?」


 今、アルカナって言ったよね?つい門番さんが熱く語っているのに、途中で口をはさんでしまった。バッとユイカちゃんを見ると同じく驚いた表情を浮かべている。

 門番さんどころか、ベネットさんも不思議そうな表情でこちらを見てきてしまっている。


「ん? ユグドの守護者アルカナがどうかしたかい?」


「いえ何でもないです! どうぞ話の続きを! 僕の声は小鳥のさえずりだとでも思って」


 ユグドの守護者、か。ならこのユグド国、ひいては人類はアルカナの領地というわけか。


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