第7話 試練 ―― 報告
「ラクス……私たちは本当に現地調査依頼任務を受けたのよね?」
高速輸送機がアヴァロンに到着した。
「荒巻隊長の端末からこのようなファイルを見つけました。まずはご確認してください。その方がお話が早いかと思われます」
転送されたテキストファイルを確認する。
福永の端末に表示された依頼内容は……。
「なにこれ? リリト旧ファーレン007基地偵察……」
現地調査任務ではなかった。
どこで情報が改ざんされたのか……。
誰がなんのために嘘を付いたのか……。
疑心暗鬼になっていく。
思わず三人がお互いの顔を見て意見を求める。
「荒巻隊長は全てを知っていたのよね?」
「恐らく。ただこの任務皆さんが出発する前に修正依頼として送られているようです。事実当初は皆さんが知っていた現地調査任務だったのですが、敵影らしきものを観測したと言うことで出発5分前に変更になっています。通常このようなことはありえません。少なくとも一度任務中止命令が出て、部隊調整をしてからの再依頼任務になります。もしかしたらメッセージに気付いていなかった可能性も否定できません。事実私が強制アクセスした時点では未読状態でした。しかし開かなくとも通知から件名を確認していた線もあります。作戦2分前にデバイスの電源を入れた痕跡が残っていましたので」
福永は首を横に振った。
「ここで考えていても仕方がない。とりあえず星野さんを医務室に運びましょう」
「そうね」
納得はできていない。
それでもここにずっといるわけにはいかない。
和田の表情にはその感情が出ている。
無意識に握った拳に力が入り、震えている。
「……了解」
美琴は大きなため息を吐いた。
それからおんぶした星野に「よく頑張った」と褒める。
特殊なレーザー感知器で身元確認をする。
認証成功。
厳重に管理された巨大で分厚い金属製の扉がゆっくりと開いていく。
これが突破された時、アヴァロンは落ちるとまで言われている。
この扉は特殊なレアメタルを豊富に使い、タングステンを超える融点を持ち強度もその数百倍を持つ謎の金属扉とまで言われている。
不気味なのはルカロイと呼ばれる金属の特性《《など》》も持ち合わせていること。
実はこのような場所は地上に幾つかある。
これが地上と地下を隔てる境界であり聖門。
奥に進み認証キーを入力。電気錠が付いた鉄の扉が開く。
SF映画に出てくるような廊下を抜けて、地下に続くエレベーターに乗り込む。
強化ガラス越しに見える街並みが教えてくれる。
地下に築いたこの街こそ人類最後の希望なのだと。
最大人口を誇る地下巨大都市――アヴァロン。
ここには最新の技術や英知が集約されている。
ただし……一般人、適合者、隊長・副隊長と言ったものたちでは一生知ることがないであろう闇も多く存在する。
光ある所に闇もある。
それはエレベーターの中で静かに街を見つめる三人も知っている。
ガラス越しに差し込む街の光が心を照らし悩みを産む。
情報とはどれだけ統制しても隙間があれば水のように少しずつ零れる。
規制することだけが全てではないということだ。
■■■
「……わかった。それにしても嫌な予感がするな」
白い煙を口から吐く中年の女。
座っていた椅子の背もたれに体重を預ける。
ギギッと指揮官用の高価な椅子が悲鳴をあげる。
けど女は気にしない。
音声だけで繋がれた通信。
モニターから聞こえる若い女の声。
「嫌な予感ですか?」
「私も年を取ったもんだ。頭の回転が鈍くなってすぐに結論がでないとは」
サラサラの茶色い髪。
女の肌感は二十代のようにもちもち肌のように麗しい。
だが、それは見せかけ。
人を見た目だけで判断すると痛い目を見るのはいつの時代も変わらない。
「御冗談を。それで荒巻隊解散に伴い穴埋めはどうしますか?」
「部隊名を持たない隊長ということは副隊長あがりの新米隊長か?」
「はい。転生して三年隊長補佐を務め、四年副隊長として活躍、雨宮指揮官の推薦を受け3ヶ月前に隊長になったようです」
カタカタとデータベースを検索する音が声と一緒に聞こえた。
それを聞いた女は「ふ~ん」と興味がない素振りを見せる。
女は視線を移す。
机の片隅に極秘と書かれた機密文章に目を向けて少し考える。
「問題はいつの時代も同時にやってくるもんだな」
「はい?」
「例の新米隊長補佐が目を覚ましたら、すぐに私の所に来るように指示を出せ。これは命令だ」
「承知いたしました」
通信が切れた。
その時には、手に取ろうとしたタバコは灰になっていた。
天童はもう一本タバコ取り出して火を付けた。
上に立つ者、命の危険は少ないが……ストレスは想像以上に溜まる。
戦場が性に合っていた。
そこでの功績が認められた。
それから半ば強引に今の立場になった女にその席はストレスしかなかった。




