表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生先は崩壊した未来世界~世界再生機構Venus~  作者: 光影


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/9

第6話 緊急事態 ―― ホワイトガーデンを突破せよ!


 敵陣ど真ん中に落ちたグレネード弾が爆発する。

 数百キロあるファーレンの体を吹き飛ばす破壊力は一級品。


「うそっ!? また強くなった?」


 想像が良い方向に裏切られた。

 敵密集地を狙い弾を撃ち込みリロード。 


「気のせいじゃない。共鳴率が上がってる……」


 爆発音に続いて衝撃波がやってきた。

 体を吹き飛ばされないように気を付けて、追撃を始める福永と美琴。

 アサルトライフルとマシンガン。

 近づいて来るクモ型のファーレン。

 その体を躊躇いなく、撃ち抜いていく。

 足を破壊されたファーレンを踏み台にして、第二波が襲いかかる。

 

 敵が瓦礫を吹き飛ばしながら近づく。

 それに合わせて福永と美琴が素早く動く。

 まるで忍者のようだ。

 素早い動きが二人の機動力を物語っている。

 加えて正確な射撃が敵を惑わせる。

 反応が遅れたクモ型ファーレンから動かないガラクタとなっていく。


「美琴!」


 ファーレンが体当たりをしてきた。

 脆い肉体が悲鳴をあげる。

 ミシミシと骨が鳴る。

 肺が押しつぶされる。


「きゃあ!」


 まだ、死にたくない。

 そう言わんばかりに抵抗するがビクともしない。


「おりゃああああああ!」


 そこに雄たけびをあげ援護にやってきた和田。

 気合いが籠った回し蹴りがファーレンを蹴り飛ばした。


「…………ッ!?」


 思わず「えっ!?」と驚く星野。

 美琴を助けようと構えた護身用の銃の引き金を引くことを忘れてしまう。


「いたぁ~い。アンタは大丈夫?」


 脛を擦る和田。

 強靭な脚力を得ても痛い物は痛いらしい。


「え、えぇ……結構な怪力なのね……」


「まぁね。ってもバリ痛いし、加護なしじゃぜぇ~たい無理!」


「とにかく助けてくれてありがとう」


 立ち上がった美琴はお礼を言ってマシンガンを構え撃ち始める。


 ドドドドッ!


「どういたしまして!」


 気合いが籠もった返事をしたのは和田。

 一発のグレネード弾がジャンプして近づいてきたファーレンを粉々に吹き飛ばす。


 彼女たちは生を掴むまで止まらない。

 死に物狂いで生きるために戦う!


 敵の銃弾が服を切り裂こうとも。

 白い肌を赤く染めようとも。

 和田の勢い止まらない。


 ピンク色の髪が戦場を踊る。

 それは蝶のように舞う。

 しかし嵐の如く過ぎ去っていく。

 福永の前に立っていたファーレンは、ガラクタとなった。

 

 最新の注意を払いながら敵に自ら近づく美琴。

 火力不足を補うため、可能な限り至近距離から敵のコアを狙い撃ちすることで銃弾の節約もする。

 一見圧倒的なように見える構図。



 しかし違った。



 星野は気づいていた。

 彼女たちの息があがり始めたことに。

 激しい運動をすれば息が苦しくなる。

 それは人間の弱点の一つ。

 機械のように無限の体力はない。

 星野から見た戦況は消耗戦だった。


「敵の数が多すぎる。それに向こうは修理をすれば生き返ることができる。けど俺たちはそうはいかない」


 言葉通りだった。

 人間である以上リトライはない。

 死んだら終わりの人生を皆歩んでいるのだから。

 ファーレンたちの注意は幸い三人の適合者たちに向いている。

 星野は周りを見渡す。

 なにか自分にできることはないか、と。


「あれは。もしホワイトガーデンを無力化できれば、この状況そのものをなんとかできるかもしれない。やってみるか」


 姿勢を低くして動き始める。

 途中事務室に忍び込みガムテープを手に入れた。

 そのまま一本の巨大鉄骨の所にやってきた。

 巨大鉄骨に持っている爆弾を付けてガムテープで固定していく。

 まだ聞きなれない銃声とクモ型のファーレンが鳴らす威嚇音、さらにはなにかの指示と思われるホワイトガーデンの咆哮などが星野を焦らせる。

 爆弾と鉄骨の位置関係を考えながらしっかりと固定した星野は急いでその場を離れる。

 薬を飲んでいるはずなのに、再び訪れる頭痛と吐き気。

 手足の痺れはまだ残っている。

 つまり薬は効いているはず。

 それなのに症状が出るということは、加護の使い過ぎなのかもしれない。

 でも今加護を使うのを止めれば、視界の隅で動き戦う適合者の三人が危険な目に合うかもしれないと不安に煽られる。

 自分が我慢すればいい、自分には我慢することしかできない。

 自身に言い聞かせて鼓舞する。

 戦場で一人足手まといのまま終わりたくない。

 そんな強い気持ちが生まれる。

 だが強い頭痛に足が縺れて倒れてしまう。

 それに気づいた四体のファーレンが進行方向を変える。


「◯※_/!☆■」


 人間には意味がわからない音なのか声なのかを発している。

 一歩。また一歩と近づいて来る。

 

「ここまで……なのか」


 目の前に迫るファーレン。

 体が恐怖で動かない。

 逃げれない。

 星野が諦めかけた瞬間。

 四体のファーレンのコアが撃ち抜かれた。

 顔をあげると、視界がぼやける。

 けどピンクと白の長髪が見えた。

 最後の希望を託して、巨大な鉄骨を指さして力を振り絞って言う。


「アレなら押しt……」


 強い頭痛と吐き気に意識が飛んだ星野。


「ちょ! 汗ヤバいじゃない!」


「これ以上はヤバい! 本当に死んじゃう!」


 白髪長髪の女が星野を抱える。

 そして。


「唯! 右三十七度前! 調整は任せた!」


 大きな声が鉄道局跡地に響いた。

 すぐに「任せて!」と返事が届いた。

 言葉に反応して見た。

 それだけで意図を察した。

 美琴が対ファーレン用特殊スタングレネードを使い、全てのファーレンの動きを一時的に止める。そしてセンサーを一時的に無力化したことを確認した和田が爆弾を起爆する。

 巨大鉄骨H鋼がギギギギッと鈍く重い音を鳴らす。

 自らの重荷を支えきれなくなった音だ。

 それはホワイトガーデン頭上に向かって落ちていく。

 鉄骨の軌道を横目で確認しながら福永が作った道を駆ける三人。

 三人の適合者が出入口から脱出するとすぐに巨大鉄骨がホワイトガーデン諸共押し潰す。慌てて救難信号を放つホワイトガーデン。

 それによりクモ型のファーレンたちは戦闘態勢を解除して救助に向かい始めた。


 作戦は成功だ。


 三人の適合者は星野を抱えて移動。

 迎えに来た高速輸送機に乗り込み戦場を離脱。


「現時刻を持って、リリト現地調査任務を終了。お疲れ様でした」


 無線機から聞こえてくる声に誰一人喜ぶ者はいなかった。

 作戦が終了したことで、アヴァロンに帰還することになった四人。

 星野はまだ知らない。

 これからもっと過酷な戦場が待っていることを……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ