第2話 緊急事態 ―― 合流
おはようございます。
「マズイっ!! このままじゃ押し切られる!」
負傷者の血が止まらない。
敵の攻撃も止まらない。
負傷者の血と弾薬の焦げ臭さが混ざる。
それが奇妙な臭気を醸し出している。
だが今は気にならない。
「連絡は繋がった?」
「ダメ……通信が妨害されてる」
「隊長のように私たちもうダメかもしれない」
「諦めないで! 最後の一秒まで戦うのが私たちの使命よ!」
「さっき聞いたでしょ? 向こうから聞こえた銃声が!」
二人の適合者が三機のファーレンが近づけないように応戦する。
焼けた民家跡地に、赤いコアが不気味な光を放って動く様は恐怖しかない。
事実、一人の男が先ほど死んで動かなくなった。
戦力差は明らかだった。
ここから生存できる確率は限りなく低い。
「まだ死亡報告は入ってきてない」
「いい加減にして。通信が妨害されてる時点で一生その報告が入るわけないじゃない!」
苛立ちを隠せない和田唯は不機嫌さを表に出す。
それを見た福永さよは前方の敵を警戒しつつチラッと和田を見た。
「だけど二人が生きていた場合、合流ポイントとなっているリリト07152番ポイントを離れるわけにはいかないでしょ?」
適合者の力を増幅させる力を持つ異世界転生者の一人だった荒巻を失い二人の戦闘力は大幅に低下している。
「作戦が破綻している以上、撤退以外に賢い選択はないわ」
唯の言葉を引き裂くかのように、後方から一筋の光が飛んできた。
視界を覆う光の中、二つの影が福永さよと和田唯に素早く近づく。
二人の適合者はそれを敵なのか味方なのか、光の中を見て判断する。
神経を尖らせ、最新の注意を払う。
一人は光の中、ファーレンになにかをしてから近づいているように見えた。
もう一人は、手で腹部を抑え逃げるように一直線に近づいて来る。
そして――。
マシンガンを持ち、白色の髪を揺らす。
しばらくして駆けつけた星野に和田が驚く。
さらに――。
少し遅れて、黒髪短髪でツンツン頭をした少年に和田は
「うそっ……!?」
目を大きくして驚いた。
「……ッ!!」
「二人共大丈夫? 夜空は少し隠れてて。ここは私たちがなんとかする!」
「荒巻隊長の加護がない状態で合流? えっ、てか……あの激しい銃声音からして加護の力すら発揮できない人間が生還? 貴方本当にただの人間?」
「失礼な奴だな。どう見ても純度百パーセントで人間だろ?」
疑いの目を向けられた星野はこれが当然の反応だろうな、と内心思った。
事実、星野は今自分がこうして生きていること自体奇跡だと思っている。
本来なら……、少し遠目に見えてしまった血の池の中で眠っている男と同じ末路を辿っていたのだろうから。こうして二本の足で立っていられること自体が奇跡としか言いようがない。
「……怪しい。まだこの世界に来て一年未満の人間が不足の事態にあった場合の生存率知ってる?」
「さぁ?」
「十パーセント未満よ」
「奇跡が味方した。と言ったら信じてくれます?」
疑心暗鬼の和田。
そこには理由がある。
それは人類とファーレンの戦争が始まったきっかけに遡る。
初代ファーレンシリーズのルミナスは完璧な人間の容姿を持っていた。
外見や動きが人間と遜色なく特別な機械がないと、それが本物の人間か機械か判別が付かないぐらいに精度よく作られていた。
時代が進化した今ならより完璧に近い偽装だって可能かもしれない。
疑うことで戦場を生き延びてきた和田の警戒心に星野が困る。
「疑う時間はどうやらないみたい。ちょっと失礼」
福永が星野の手を握る。
生体認証システムを使い検査を開始する。
小さな文字列が緑色の画面の中を泳いでどこかに消えていく。
しばらくして生体認証システムがある結論を導き出す。
「異世界転生――星野夜空。98パーセント一致。荒巻隊長の死亡により全ての権限を別の異世界転生者に一時的に移行――確認」
まるで機械のように淡々と。
星野には理解ができない言葉。
それを静かに見守る。
「荒巻隊長のように加護が発動出来ない貴方に全てを任せることはできません。それに全面的に信じることも。ただし指揮権が移行した今私たち分隊は貴方と今まで以上に密に繋がることができます。言い方を変えれば貴方が回路を開けば強引に私たちの方から貴方の力を借りることができます。もし私たちに力を貸していただけるなら目を閉じて心の奥深くにある扉を開けるイメージをしてください。そうすれば私たちで後はなんとかします」
異世界転生時に与えられた力。
まだ星野はそれを上手く扱えない。
なにより理解していない。
その力が何なのかを。
それを実践で学んでいる最中なのだ。
教科書のようにただ文章で説明された一年前。
その時は理解できなかった。
それは最近戦場にでた今でも理解できていない。
だけど今はやるしかない。
覚悟を決めた男はそっと目を閉じて言われた通りにする。
すると、突然血が熱くなる。
まるでなにかに呼応するように……熱くなっていく。
なにか目に見えない物が体内から三人の適合者である彼女たちに流れて行くのを感じる。
「美琴。弾薬は?」
「この数なら問題ないわ」
「オッケー。最後に確認させて。美琴もこの男を信じるのよね?」
星野をチラッと見て美琴は微笑む。
それが星野の答えであると判断した福永は言う。
「いいわ。二人が信じた貴方を私も信じてあげる」
「「「オーバーリミット!」」」
三人が配置に着き戦闘態勢に入る。
福永はアサルトライフル、和田はグレネードランチャー、美琴はマシンガンをそれぞれ構える。
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では次話でお会いしましょう!




