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転生先は崩壊した未来世界~世界再生機構Venus~  作者: 光影


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第1話 緊急事態 ―― 奇襲

読者の皆様初めまして。

光影です。



 中央政府適合管理部戦線部隊科の星野夜空ほしのよぞらは、適合者である西条美琴の応急処置によって一命を取り留めた。


 人類を敵と判断した『ファーレン』の奇襲を受けた二人はボロボロになった小さな集落へ逃げた。ただの現地調査任務のはずだった。そのため、二人の装備品は十分とは言えない。運が悪いことに二人の生体反応を確認した敵が次々と集まり始める。

 

「こちら荒巻小隊002! こちら荒巻小隊002!」


 応答がない。

 どうやら通信機器が繋がらないみたいだ。


「夜空! 隊長と連絡が取れない!」


「…………」


「ん? 夜空? 夜空!」


 耳元で大きな声が聞こえた。

 衰弱したことで、遠くの世界に飛び立とうとしていた意識が戻る。


「……だ、大丈夫」


「夜空、よく聞いて!」


 星野が頷く。

 銃弾が腹部を貫いた痛みで弱っている。

 頭も軽く混乱している。

 冷静な判断ができていないかもしれない。

 頬から流れ落ちる汗は焦り。

 生存本能が危険を察知し、顔色も良くない。

 美琴は情報共有と認識一致の意味を込めて状況説明を始める。


「『ファーレン』が破棄した基地に資源があることを掴んだ私たちはリリト村周辺にやってきた。そこで荒巻隊長の指示で二班に別れ周囲を探索中『ファーレン』の奇襲を受け、夜空が負傷したため私たちはリリト村に避難した。今、銃火器の音を聞いた『ファーレン』がここに集まってきている。恐らく資源回収部隊の旧式がメインのはず!」


 頬が痙攣し現実の直視を拒む。

 だが、敵は待ってくれない。


「恐いのはわかる。それは私も同じ」


 その黒い瞳には怯える星野の姿が写っている。

 不安や焦り、緊張と言った様々な感情が混ざり合って今の星野を形成している。

 それを理解したと思われる美琴の口が動く。


「私が敵を惹きつける。援護を頼みたい。できる?」


 息を吞み込んで星野は覚悟を決めた。


「わかった」


「安心して。なにがあっても私が守るから!」


 別れの言葉が終わると、美琴が戦場に飛び出す。

 どんどん小さくなっていく背中を慌てて目で追う。

 その先にいるのは蜘蛛のような格好をした四本足の機械兵器。

 通称『ファーレン』。

 幸いまだ美琴の存在には気付いていないようだ。

 星野は懐から拳銃を取り出す。

 対ファーレン用の弾丸を装填した拳銃が火花を散らす。

 『ファーレン』は即座に身体の中央部を守る姿勢を見せる。

 そこには赤いコアがあり、敵のエネルギー供給源であり心臓。

 二本の腕を使いコアを守りながらまともに動く事ができない星野を見つけて動き始める。


 拳銃が火花を散らし、銃声を鳴らす。


 ドンッ! ドンッ! ドンッ!


 銃声と同じ数だけ。


 カンッ! カンッ! カンッ!


 鋼鉄の鎧に銃弾が弾かれる。


 何発撃っても銃弾が『ファーレン』の心臓部である赤いコアを撃ち抜くことはない。それでも諦めない。この心臓が止まるその時まで……。


 弾倉が空になった。


「流石に護身用じゃ火力不足だったか」


 星野は目の前にやってきた 『ファーレン』に不敵な笑みを浮かべる。


「だけどお前が三世代前の旧式で良かった。おかげで俺はまだ死なないらしい」


 ブォォォン! その言葉に怒りを覚えたのか『ファーレン』の身体から機械音が聞こえた。鎌のような形をした大きな右手を振り上げる。 『ファーレン』の目と呼ばれるセンサーは星野を完全に捉えている。僅かな動きや仕草も見逃さないと言いたげに向けられた視線に星野は一安心する。

 鎌とは別に背後から迫る人影が見えたからだ。

 鎌が星野の身体を切断するより早くゼロ距離連続射撃によるコア破壊の方が一歩早かった。


 ドドドドドドドドドッ!!!


 マシンガンによる怒涛の攻撃が 『ファーレン』の命を素早く奪う。

 車より重い機械の身体を持った兵器が地面に落ちた。


「…………はぁ、はぁ、はぁ」


 全速力で迂回しタイミングを見て駆け付けてくれた少女の息が荒い。


 しかし――。


「今の銃声で私たちの位置が完全にバレた。移動する」


 星野が心配するより先に美琴が言った。

 まるで心配は後だ。

 と、言わんばかりに星野の手を引っ張っる美琴の手は汗で濡れている。

 表情に出さないだけで、同じ感情を心の中に抱いているのかもしれないと星野は思い、今は口ではなく足を動かすことに集中する。

 それに気のせいだろうか?

 地面が僅かに揺れているような気がするのは。


「腹部の痛みはどう? 鎮痛剤効いてきた?」


「まだ痛むけど、こうして動ける程度には……」


「悪いけど今は少し無理してもらう必要がありそう」


 申し訳なさそうな顔をする美琴。


「気にしないで。俺なら大丈夫だから」


 助けもらってばかりの星野はやせ我慢をした。

 それに今は戦争中だ。

 弱音ばかり吐いていても事態が解決しないことは二人共わかっている。

 無理をする場面としない場面の判別を見誤るわけにはいかない。

 これは二人の絆で出来た信頼関係から生まれた会話でもあった。


「なぁ、美琴」


「なに?」


「俺たち今どこに向かってるんだ?」


「非常事態時の合流ポイントとなっているリリト07152番ポイント。臨時メンバーの夜空はその辺まだ知らな――止まって」


 敵影に一早く気づいた美琴に力いっぱいに手を引っ張っられたことで夜空も間一髪のところで止まる。

 後一歩でも足を踏み込んでいたら、敵のセンサーに引っかかっていた。

 危うく敵に囲まれてハチの巣にされかけた星野は思わず息を吞み込んだ。

 数は三機。

 今回の敵は先ほどと同じ胴体を持つ敵だが武器が違う。

 両腕に鎌ではなく機関銃。

 つまり銃撃戦を得意とするらしい。


 なにか、おかしい。


 星野と美琴はお互いの顔を見た。


 よく見ると、前方の三機は既に戦闘に入っていた。

 一体誰と?


 ドドドドドドドドドッ!!


 激しい銃声が二人の耳に入ってくる。

 敵が狙う先を見ると見慣れた面影が見えた。

 しかし今は再会を楽しんでいる時間はない。


 二人は急いで仲間の援護に入った。





最後まで読んで頂き、ありがとうございます。

続きが気になった方は、作品のフォローや評価を是非よろしくお願いします。

作者のモチベーションに繋がります。

では、次話でまたお会いしましょう!

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