第二話
パンを焼くいい香りがする。
いつもはこの匂いで空腹を満たした。
冬は嫌いだ。お金がなけりゃ食べるものが何もない。
おまけに寝床もないときた。
冷めたパンを頬張りながら、リオは雲を数えていた。
ふと、視線に気づく。
自分を見つめる、小さな女の子。
何度か見かけた顔だった。
「…なに?あげないけど。」
「い、いらないもん!」
ぷくっと頬を膨らませる女の子。怒らせただろうか。
その目はまっすぐ、リオを見つめた。
するとふわりと優しく風が吹き、リオの長い前髪から金色の目がちらりと覗いた。
「…きれいな目ね、あのね、おうちないの?」
「…ないよ。」
ぱあっと咲いた笑顔に、リオは困惑した。
家がない、という回答のどこに、笑顔になる要素があるのだろうか。少なくとも、リオは知らない。
「あのね、あのね…!きれいな目の子ね、一緒に来て!」
リオの返事を待たず、女の子は袖を掴み走った。
…なんで、手を振り払わなかったんだろう。
確かに僕は非力だけれども、それぐらいはできたはずなんだ。
でも、だって、…向けられた笑顔は、言い訳になるかな。
…着いた先は、孤児院だった。
こんなにも眉間に皺が寄ったのは、生まれて初めてかもしれない。
読んでいただきありがとうございます。
初対面からホームレスか聞くかなんて、なんて失礼な。多分そんな気持ちです。
次回、リオがご飯食べません。お楽しみに。