表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/45

第十九話

一年が巡り、進級の季節となった。学園の教師陣にもちらほらと新しい顔が増えている。

真新しい制服に身を包んだ新入生たちも、期待に胸を膨らませていた。


【神の目】がいるという、歪な期待に。


あの日の毒は、未だ令嬢たちを蝕んでいる。


学園内ではところ構わず、リオを見つけるや否や周辺に人だかりができた。

神の目であるリオ、容姿端麗なリオ。

彼女たちの心に火をつけるには十分すぎる理由だろう。


「わたくしこそ、リオ様の婚約者に相応しいです!」


そんな騒音が、連日リオの鼓膜を叩いていた。

今年の新入生は、どうにも肝が据わりすぎているようだ。



「…また…、あの方を見ておられるのですね。

無礼を承知で申し上げますが、あなたのような方が…。あなたが、そこまで憂う理由が、僕には…理解、できません。」


視線の先には、いつもリオがいた。

今はもう、群衆の頭越しにしか、見つめることもできないけれど。

周囲からなんと言われようとも、ロゼリアの目に映るのはリオの姿ばかりで。


「…理解していただく必要はございません。

わたくしは、幸せですよ。」


男子生徒の顔が、歪んでいく。

ロゼリアの葛藤も、己の葛藤も、痛いほどに理解してしまった。

それ以上は、何も言えなかった。


ふと一瞬だけ、リオと目が合った気がした。

すぐに背を向けてしまったから、思い過ごしかもしれない。それでも、ロゼリアはほんの少しだけ、微笑んだ。



その日の昼食時、談話室にて。

一番ふかふかなソファを陣取りながら、アーセルは天井を見上げていた。


「君さ、リオのためにーとか、リオを守れるのは私だけーとか豪語してなかった?

それが何?リオは君のことなんとも思ってないって言ってたよ。何も変わらないじゃん。」


「…申し訳、ございません…。

その、なに分、ご本人との接触以外に、方法が見つからず…。」


震えながらも言い訳をするロゼリアを、アーセルは壊れたおもちゃを投げるように、もう興味がないと言いたげに、大きく息を吐いた。


「接触回数多ければ好感度増すって嘘じゃん…。

いいや、もう。君じゃリオは願わない。

あとは勝手に頑張って。」


一人取り残された空間で、ロゼリアはただ立ち尽くすしかなかったが、やがて、ゆっくりと歩き出した。


その数刻後、

リオが帰宅するために学園の庭を進んでいた時。

目の前の茂みがガサガサと動いているのが目に止まった。

なんの気まぐれか、リオはその茂みに近づくと、見覚えのある令嬢がいる。


リオの気配に気付き振り返ったその人は、目に涙を溜め、必死に何かを探しているロゼリアだった。

お読みいただきありがとうございます。

ニコニコしてる人ほど怖い。

次回、青春じゃ〜〜!お楽しみに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ