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第十話

「もし、少しお時間よろしいでしょうか。」


昼休み、誰もいない教室で、本を読み耽っていた時だった。

ミルクティー色の髪をふわりと揺らし、ほのかに甘い香りを纏った少女が、リオにゆっくりと近づいた。


「かまいませんよ。」


「ああ、どうかお掛けになったままで。

お目にかかれて光栄です。わたくし、シュシュエール男爵家の娘、ロゼリア=シュシュエールと申します。お見知りおきいただけますと幸いでございます。」


「こちらこそ。

ギルドラ男爵家の長男、リオ=ギルドラです。

…何か御用でしょうか。」


あ…っと小さく声を漏らすも、誤魔化すようにロゼリアは一通の手紙を差し出した。


「わたくし、近々小規模のお茶会を予定しておりますの。

お名前を呼ぶことをお許しください、ぜひ、リオ=ギルドラ様にお越しいただければと思いまして。」


「…茶会、ですか。」


「はい!我がシュシュエール家自慢の料理長が腕を振るって茶菓子を用意いたしますし、お好きな茶葉があればすぐに取り寄せます。万一苦手なものがございましたら遠慮なくおっしゃってくださいね。ああ、お好きなお花はございますか?あるのでしたらメイドたちに手配させますわ。庭園の準備も進めておりますのでぜひ…!」


ロゼリアの顔が一瞬、引き攣ったのがわかった。

二人の視線が、噛み合わない。

澄み切った空気の中、僅かな沈黙だけがこだまする。


「ご厚意には感謝します。が、…遠慮させていただきます。失礼。」


リオはロゼリアを一人残し、教室を去った。

ロゼリアはただ、呆然と立ち尽くすしかなかった。



放課のチャイムが鳴り、リオはギルドラ家の馬車へと向かった。


「わー!リオの馬車、前より豪華になってるね!」


「まるでドールハウスですね。

…どこから湧いてくるのやら。」


会いたくない声が、聞こえてくる。二人も。

しかし確かに、以前より目立つようになったこともまた事実だ。ルドルフの仕事が早いことを恨む。

リオは二人を一瞥し、軽く会釈を返すだけで、そそくさと馬車へと乗り込んだ。


「あーあ、行っちゃった。あの馬車、揺れなさそうだしそのうち乗せてもらおっと!」



屋敷に着くなり、リオは至る部屋を回った。

訳などない。けれども、今までにない違和感が、彼の目の奥を叩き続けた。

読んでいただきありがとうございます。

ついに話数2桁です。シルバニア可愛いですよね。

次回、紅茶が美味いです。お楽しみに。

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