試作型異世界 短編集
短編1 ハジメとお見合い
俺はクラウスしがない騎士だ。ちょっと頼りなさげに見えるがこれでも一応国王親衛隊候補になるくらいの腕前はあるのさ。
さぁ、今日の騎士団食堂は朝からある団員について盛り上がっていた。
「そういや、マレハジメって奴が技術部にいるじゃん。あいつまだ独身らしいぜ!」
「おいおいマジかよあいつ20過ぎてるだろ?そういやクラウスお前あいつの同期だろ?何か知らないか?」
「そうですねー。そういえばあいつ他の国からきたらしいしそこに妻を置いてきたんじゃないかな?」
「いや、それは違うな。」
「レオン隊長⁈」
「奴は独身だ。つまりまだ坊やなわけさ。」
「フハハッハ!隊長!名案がありますぜぇ、」
「それはなんだ?ルドルフ。」
「あいつを結婚させるんですよ〜。独身でもあれだけ頑張ってくれてるんだ。妻ができればさらにやる気がでるんじゃないかぁ〜。」
ルドルフが悪そーな笑みを浮かべる。まぁ、じょうだんだ...
「それは名案だな。よし!騎士団主導でマレハジメのお見合いを行う!君達はお見合い相手を探してきてくれ!」
どうやら期待は外れちまったようだ。クソ!今日は休暇の筈だったのにィィィィ!
隊長は嬉しそうに去っていきやがったし。
「ルドルフザァァァンッ‼︎俺、これから一週間ぶりに家に帰る予定だったんだぞー‼︎」
「ワリィ。まさか団長があそこまでアホだとは思わなかった。まぁ、酒奢るから許せ。」
チッ、まぁ友人の為と思えばまだ納得できなくも無いと思いたいかなぁ。
でもあいつのお見合い相手を探すのにもまずはあいつを知らなきゃな。なんせ歓迎会以来会ってないし。おっと技術部についたな。さぁてとあいつはいるかな?
「フォ〜〜あっァ〜!やっぱAKは最高だぜ!でもライフルレンジが粉々⭐︎になっちゃたんぜ。レオンの奴に修理費を請求...」
アレは何なんだ?なんだよアレ?銃もヤバいけどお前が一番やばいよマレハジメ。大人しくて人見知りな奴だと思ってたけどあれが本性なのかぁ。でもそれならそれに合わせればいいだけ!探し出してみせるぜ!
「フハハッハハ、ハ...あれ?リベル誰か来てたか?」
「いや来てないよー。どうかしたの?あっ!もしかしてカ・ノ・ジョ?」
「居たらよかったんだけどなぁ〜」
「もしよかったらわ、わたしが...」
「やっぱ黒髪のピシッとしてる長身の人とかがいいよね〜。そうだよな、リベル!」
「うっ、うんそうだよねー憧れちゃうね!」
一方その頃町では。
「もう既に二人集めたけどあと一人くらい欲しいなぁ、はぁ。」
俺は必死に友人の為にお見合い相手を探している。だが、既婚者とガキばっかしかいねぇ〜。
「そこのアンタ!」
振り向くとそこにはめっさ美人な人が
「なん、なにか用ですか?」
「そうよ、マレハジメって人のお見合い相手を探しているんでしょ私も呼んでくれないかしら。」
「ありがとうございます!それではこの紙に詳細が書いてあるので是非!」
勝った!勝った!これで一週間ぶりに我が家に帰れるぅ。あと、誰が一番の人を連れてこれるかの賭けにも勝ったな。ともかく俺の仕事はここまでだ。あとはお前次第だぞマレハジメ!
るんるんと男は去っていった。そして残された人は何故か危ない笑みを浮かべていた。
二時間後
騎士団基地は盛り上がっていた。なんせ事務作業の奴らの殆どがサボって一目見ようと集まるくらいには盛り上がっているのだ、あの男のお見合いは!
「本日はマレハジメさんのお見合いに集まって下さりありがとうございます。私騎士団団長レオンも彼がこの歳になっても独身な事に不安を感じておりました。しかし、それも今日で終わりそうで私も嬉しいです。さぁ、マレハジメ君、君も挨拶したまえ。」
「えー。どうもマレハジメです。本日は集まって下さりありがとうございます。はい、以上です。」
主役である筈のハジメの顔は明らかに嫌そうだ。
「それではエントリーNo.1の人からどうぞ!」
「ちょっとまてレオン!」
「どうしたんだ?」
「エントリーNo.って!何人いるんだよ!」
「だいたい20人くらいかな。」
ハジメは絶句したかのような表情を浮かべながら力なくまた静かになった。
「気を取り直して。それでは、エントリーNo.1の人どうぞ。」
「は〜い!」
出てきたのは不細工なおばさんだ。なんとなくまずい気がしてきた。俺は逃げようと思った。でも、悲しいかな俺の足は椅子にチェーンでいつのまにか繋がれていた。とりあえず拒否しまくって耐えるしか無い。
「私はアグネスよぉ!よろしくねぇ!」
ダメだ圧がやばい。これは早く終わらせないと俺が潰れる!
「すいませんNOで。」
そう言うと騎士団の団員が突如おばさんを抱えて有無を言わせずにつれて行った。正直怖い。
そしてこんな茶番じみた出来事が何度も何度も続いていった。一応たまに美人も居た。けどだいたい喋らすとキチガイばっかだ。俺はもう疲れたよ。精神が擦り切れかけたその時神は俺に救いを与えたのだろう。そう目の前には170はあろう黒髪のベッピンさんがいた。しかも真面目そうだ。まさしく俺の好みにドストレートだ!
「お名前は?」
「ビアンカよ。以後お見知りおきを。」
お、お嬢様系かこれも好きだ。多分庶民だろうけどリベルの奴よりもよっぽど高貴さを感じる!
「へへ〜。俺はこの子に.、...」
俺がそう言いかけた瞬間。ビアンカは俺の後ろへと回り込んだ。俺も戦おうとする。しかし、体が拘束されてて対応出来ない。これは死あるのみだと感じた。そしてゆっくりと目をつぶった。だが、現実はもっと喜劇的だった。俺が目を開けるとそこには鏡を持ったビアンカがいた。
俺は生きている。だが、鏡を覗いた瞬間それは崩壊した。俺は死んだのだ。正確には社会的に死んだのだ。騎士団のみんなも唖然としている。
鏡に映る人は黒髪の綺麗なメイドさんだった。
「これは、俺か?はは。」
「えぇそうですわ。美しいですわねぇ。惚れ惚れしますわ!」
確かにこの世界のご飯は栄養が少なく、もとより少食よりだった俺はかなり華奢な体になっていた。(しかし、少しサイズが大きめな長袖メイド服とメイクだけでこんなにも女ぽくなるなんて…俺のプライドと折れてはいけない何かが折れちゃったよ。)
私は今起きた事を半分ほど理解できていない。いや、出来ちゃダメな気がする。いきなりハジメさんがお見合い相手の方に女装させられたのだ。しかも割と可愛い。もしかしたら私よりそれっぽい気もしなくもないかも。
「ははははははは!!!」
明らかにダメな笑いがハジメさんから出ている?
「大丈夫なのハジメさん!?」
「リベルさん?どうしたのですか?私はこの通り大丈夫ですよ。」
「ふふ、完璧ね。私の探し求めた最高の女装メイドの完成ですわ。この日の為に練習した甲斐がありましたわぁ。」
「何も完璧じゃないよ!レオンさん早く中止にして!あとビアンカさんは危険だから出入り禁止!」
「酷いですわ。せっかくメイドに相応しいお方を見つけましたのに。」
「お嬢様、大丈夫ですよ。私はここにいます。」
「もう、お前はしゃべるなぁ!ビアンカさんはまずその性癖をどうにかして下さい!あとこれはお見合いなのでここでメイド探しをするなぁ!!」
リベルの気迫に押されビアンカも遂に折れる。それにつられるように騎士団員達もようやく状況を理解し、ビアンカを連れていった。
「大丈夫ですか?ハジメさん!」
「先程も申した通り大丈夫ですよ。では私は失礼します。」
「いや、どこに行くつもりですか!!」
「私はお嬢様のメイドなのでこのままついていくつもりですが?」
「何がついていくつもりだー!そもそもなんでそうなるんですかぁぁ。」
どうしてこんな事になっちゃったんだろう。さっきまでいつもみたいにちょっと自己中だけど優しいいつものハジメさんだったのに。
「あれ、涙が出てきたなんか悲しいよ。私だって好きだったのに。こんなのなんか変だよ。」
「泣かないで下さいよ。綺麗な顔が台無しですよ。」
「ぐすっ、今綺麗って言ったよね。」
「はい。」
「なら、私のメイドになってよ、今までのハジメさんじゃなくてもいいよ!でも私の側に居てよ!」
「お、お嬢様!?私はどうすれば?」
「良いわよ、もう。こんなの見せられたら連れて行きづらいじゃない。」
「……分かりました。リベルさん。いつまでも貴方の側に居ますよ。」
「ありがと…う。」
おぉー!
会場中から歓声が上がる。
「ほら、じゃあ戻るよ私たちの仕事場へ。」
「えぇ、そうですね。」
二人は少し変わった形になったものの同じ道をこれからもすすんでいくのだろう。
……いや、それでいい筈がない。
「不味い!リベル達が出ていった方向は工事中で床が穴だらけだ!」
「団長、そういうのは早く言わないと。とりあえず止めにいってみます。」
「ハジメさん。そういえばあのAKとかって言うの耐久性大丈夫なのかな?」
「多分大丈夫だと、思うのですがぁぁっっ!?!!?」
「ハジメさん⁈」
「いってぇ。誰だ?こんなとこに落とし穴作りやがったのは!リベルお前か?」
「⁈は、ハジメさん⁈元に戻ったんですか⁈」
「元も何も俺は俺だろ?あれ、そういやここまでどうやって来たんだ?もしかして寝ぼけてた?いや、ほらあのお見合いがつまんなすぎて寝かけただけなんだ!だからごめん。」
「えっ?もしかして何も覚えてないんですか?」
「はっ?なんかあったのか?」
「いや、じょそ……。何もなかったね〜。さぁ、技術部に戻ろうか!」
「おうよ!でも、その前に助けてくれよ〜。」
一生側にいてもらうのは嬉しいけどそれもいつものこのハジメさんだからこそなんだ。だからあんな変なのじゃなくて本来のハジメさんに戻ってくれてよかった。でも、女装姿のハジメさんはもう一度見たいかも。
その後
食堂にて、
「なーんか最近周りの目が怪しいんだよなぁ。レオンは何か知らないか?」
「それは、、いや、やめておこう。ま、君とリベル君が仲睦まじくやってるのに嫉妬してるんじゃないかな!あと女装すれば分かるんじゃないか?ふふっ!」
「なんか気持ち悪いなぁ。あと、女装にはあんまいい思い出がないからやだぜ。」
そうだよ。昔女装でバイトしててお持ち帰りされかけたなんて言えるわけねぇよなぁ。あぁ、最近その事を夢でみてなかったのに、また見そう。睡眠薬作ろうかなー
短編2 私がアイドル
俺の名はクラウスしがない友達思いの騎士だ。
この間、友人の為にお見合い相手を探してきたらそのせいで友人は精神崩壊したらしい。だが、些細な出来事だ。さて、今日も朝から食堂は騒がしい。
「おい、クラウス聞いてくれよ〜。」
「なんですかぁ?ルドルフサン。」
俺と話してる男はルドルフ。正直いって厄介事を毎回引っ張ってくるので関わりたく無いが俺を気に入ってるらしい。
「いやさぁ〜、アイドルって知ってるか?」
「知ってますけど何か?」
「いや、その反応は知らない反応だなぁ?」
「いや、知ってますよ〜。リユキちゃんでしょ?」
「知ってるのかよ、まぁいい。」
そう、リユキちゃんとは急に現れて自らアイドルと名乗り出した娘だ。ミュベンではそういった娯楽にかける余裕がつい最近までなかったせいもあって男女問わず大人気なのだ!
「で、ルドルフサンはリユキちゃんのライブの自慢でもしに来たんですか。」
「違うぜ〜俺はなんとチケットを3枚も手に入れられちまったんだ!」
ルドルフはポケットからチケットを3枚取り出し誇らしげに見せた。
「凄い!あの倍率15倍とも言われるチケットを3枚も!」
「だろ?抽選券3枚買ってそれが全部当たるとは思わなくてさ、それでお前に2枚あげようと思うんだ。」
「ありがとうございます!でも、2枚はいりませんよ。俺の家族はリユキちゃんに興味ありませんし。」
「あー、それはだなぁ、俺の提案したお見合いのせいで酷い目に遭ったマレハジメに渡しといて欲しいんだ。」
マレハジメは俺の友人で俺らのせいで廃人になりかけた奴だ。
「ルドルフさん分かりました。では、早速渡しに行って来ますね!」
「よろしくな」
そして、俺は食堂から500mほど歩きいつもの技術部についた。
「すいません!マレハジメさん居ますか?」
「ハジメさんならお出かけ中だよー、クラウスさん。」
扉から出てきた少女はリベル。一応この国の王族の一員だが、技術部でマレハジメと共に武器を作ってる変なお方だ。
「そうか、ならリベル様からマレハジメさんにこのチケット渡しといてもらえないかな?」
「これは?」
「最近流行りのアイドルのチケットですよ。こないだのお見合いのお詫びに。」
「ふーん。まぁ分かったよ。じゃあねー!」
さぁ、このチケットは来週のライブ用らしい、実は一度も観たことないかな楽しみだなぁ!
クラウスが帰ってすぐにハジメさんは技術部に帰ってきた。
「ハジメさん!」
「お、リベル!遂に造船計画が始められたぞ!」
最近テンションが高いのか少し前よりも高くなった声でハジメさんが語ってくれてる。
「いやー感動的だね〜。要塞みたいな船を作ろうと言い出した時はハジメさんがおかしくなっちゃったと思ったけど案外上手くいったね!」
「あぁ、アレが出来れば魔物のいない海側から砲撃出来るし、他の国にも行きやすくなるからなー。楽しみだなぁ。」
「そうだね。そう言えばクラウスさんからハジメさんに頼まれてる物があるんだ。」
私は机の上に適当に置いてたチケットをハジメさんに渡す。
「なんだ?......!こ、これはリユキのチケット!なんでこんなものを持ってるんだ⁉︎」
ハジメさんが驚きと疑問が混ざり合いながら興奮した表情で私に聞いてきた。
「え、え〜と、クラウスさんがこないだのお見合いのお詫びだって。」
ハジメさんの表情がますますおかしくなる。それもそうだ、ハジメさんはお見合いでビアンカとか言う悪女に女装させられた上でメイドにされかけてメンタルを破壊されたたのだから。
「そ、そうなのかぁー、でもまぁうん。そうだな、俺はその日用事があるんだ。だからな、クラウスの奴に返しといてくれないか?ちょっと用事を思い出したんだ!」
そういってハジメさんはいってしまった。クラウスのせいでハジメさんと話せる時間が減ったんだ、後でクラウスは痛い目に合わそう。
けど、ハジメさんも知ってるアイドルってどんなものかな?私は気になって仕方がない。そうだ、どうせ誰も使わないチケットなんだし、私が使ってもいいよね?
そして、一週間が経ち遂にその日がきた。最近ハジメさんが忙しいのもあり、これを楽しみに頑張ってきたのだけど果たしてその甲斐はあるかな?
「「「ふゥゥゥオーー↑↑‼︎‼︎‼︎リユキヂャァァァァァァンンン!」」」
そう考えてるとどうやらリユキちゃんとかいう子が出てきたらしい。
「ハーイ!みんなのアイドル。リユキでーす!みんな今日も帰さないかんねぇー!!覚悟は決まったー?」
「「「ミュベンとリユキちゃんに栄光あれぇー‼︎‼︎‼︎」」」
周囲の人達がみんなして答えになってない返事をする。でも、リユキって人可愛いなぁ。長身で黒髪で......アレ?これってよく考えたらハジメさんの理想の女性像に近い?新たなライバルか!そう思いながらもやっぱり素敵だと思うよ。歌も上手いし、しかも歌いながら激しいダンスを息を乱すこともなく平然とこなす、そして凄く優しさ...いや、恋心すら感じるだから余計悔しい、お、おのれぇぇぇぇぇ!リユキちゃんサイコー!
「「「「リユキちゃんサイコー!」」」」
この一体感、皆んなハマる訳だ。よく見るとレオン団長や特殊部隊の皆んなまでいるしみんな自作の応援グッズなんかをもってる!ガチだ。んっ?アレ、アイツは......ビアンカ?!そう、何度見返しても、見る場所を変えても何故かステージの横にビアンカがいるのだ!きっとハジメさんの次はリユキちゃんを狙ってるに違いない!なんせ二人とも長身で黒髪だ。私はリユキちゃんを守るためライブの途中で抜ける罪悪感と悲しみを背負いビアンカの元へと走る。そしてその勢いでビアンカを弾き飛ばして馬乗りになる。ビアンカは困惑と痛みで動けなさそうだ。
「ハッハハ!ざまぁみましたかビアンカサン!」
「なっ何をするんですか⁉︎リベルさん⁉︎やめて下さいませぇー!」
「うるさい!!ハジメさんの次はリユキちゃんまでぇぇぇーー!!私の好きな人を奪わないでえぇぇぇ‼︎」
「‼︎」
「ウェルトの名において断罪!!」
「お待ち下さい‼︎貴方は勘違いしてますわ!」
「いまさら何を⁉︎」
「貴方に真実を教えますわ。丁度今ライブが終わりましたので、きっと控え室に入ったらすぐにわかりますわ。」
ビアンカさんが真剣そうに話す。多分これは嘘をついてない。私はビアンカさんから立ち上がると案内されるままに控え室の扉の前に着いた。
「本当にこの扉の先に真実とやらがあるのですか?」
「えぇ。では開けますわ。」
扉は開いた。そしてその先にはリユキちゃんが居た!
「あっ、ビアンカさ......リベル⁉︎なんで⁉︎」
「リユキちゃんだ!こんなに近くに!」
「えっ!ちょ?ビアンカさんどうなってるんですか!?」
「リベルさんいい加減にしなさい。目の前の人が誰だかわかる?」
「誰も何もないよリユキちゃんだよ!」
「しっかりとみてごらんなさい。」
しっかりと??しっかりも何も私の目の前にいるのはリユキちゃんだ。あれ、でも何処かで見た気がする。確かメイドさんで......
「ま、ま、まさか?ハ ジ メさんなの⁈そんな訳。どう言う事⁉︎」
「しょうがないなぁ、こうなった以上話すしかないか。アレは例のお見合いのすぐ後の事だ。実は俺女装アイドルをやってたことがあってあの日以来胸の高鳴りを感じていたんだ。そんな時にビアンカさんが謝罪に来たんだ。そこでその時の気持ちをありのままに伝えたら共感してくれて、全て用意してくれたんだ。そして今に至る訳だ。」
「えー!つまりハジメさんは女装癖持ちでビアンカさんと協力してたってこと⁈‼︎正直人としてどうかしてるよ。」
「あぁ、そうなるな。騙してすまなかったよ......。」
ハジメさんが気まずそうに話す。そうだ、女性のふりをして人の心を騙してきたんだ。それは凄く悪いことだと思う。
「でも、いいよ。みんな楽しそうだったし、私はリユキちゃんもハジメさんも好きだから‼︎」
そう、それでも私はハジメさんを信じて見ようと思う。きっと皆んな的にもその方がいい気がするし。
「うっ、リベル。ありがとよッッ。」
結局これ以降も何も変わる事なくハジメさんはアイドル活動を続けている。そして世の中ではアイドル戦国時代になってるらしい。そしてアイドルのファン同士で揉め事が起きることが騎士団内でも増えてきた。改めて思うとやっぱりあの時にハジメさんの凶行を止めるべきだったかなと思いつつ、私は今日もフル装備でリユキちゃんのライブに出陣する。
短編3 空を見上げて
俺の名はクラウス。特殊部隊に移動になった出世頭なしがない騎士だ。だが、特殊部隊は前の部隊よりも仕事が少なく、今日も今日とて騎士団食堂で賑やかにしている。
「暇なのになんで出勤しないといけないんだよ〜。」
「おいおい、真昼間から酔ってるのはやばいぜぇ〜。俺ですら休暇の日以外はそんなだらしないことしてないぞ。」
「そうですよー。クラウスさん。」
今俺を馬鹿にしてるのが酒臭いおっさんのルドルフと一応王族のリベルだ。
「そもそもお前らのせいで悪評が立ちまくったせいで昇進しても特殊部隊なんて変な方向にいっちまったんだぞ!わかってんのか⁈」
「「まぁ、いいじゃん。」」
「よくねぇよ。ほんとなんでお前らなんかと飲まなきゃならねぇんだよ。」
「それはなぜかそこの席だけがいつも空いてるからじゃなかったの?」
リベルが答える。確かにそうだ。何故かこの席だけがいつも空いてる。まぁ、こいつらと飲みたいやつなんていないから仕方ないか。そんな事を考えていると警報がなりだした。
「な、なんだぁ?」
「クラウス!これは対空警報だ。ライフルを持って外に出ろ!」
「ほら、クラウスさんとルドルフさんのライフル。頑張ってね♪」
リベルが銃を渡してくる。マレハジメが開発したキュウキュウシキとかいう小銃だ。それには高射表尺がついていて対空攻撃ができる。
「ほとんどの奴はお前と同じで初めてだ。練習がてらにやってやれ。」
ルドルフさんと一緒に外に出るとドラゴンの群れおおよそ100匹が西側から近いているとの放送が流れた。既に空には爆弾付きの気球が上がっており、民間人も防空壕に避難しており、騎士達はなるべくはずれでドラゴンを撃退すべく自転車に乗り西に向かっていた。クラウスとルドルフもなるべく西側に向かおうとする。その時だった。空からサイレンが響きドラゴンよりも早いスピードで鳥のような謎の物体が飛んでいった。
するとその物体は先端から弾丸を放ち先頭にいたドラゴンを蜂の巣にし、そのまま他のドラゴンにも弾丸を浴びせながら一気に最後尾のさらに後ろまでいくとドラゴンの8倍はありそうな旋回を見せまたドラゴンを撃ち落としていく。
初めて見た兵器に騎士団だけでなくドラゴンも明らかに戸惑っていた。謎の物体が4往復くらいすると部が悪いとみたのか撤収していった。謎の物体はそこにも追撃を加えて6匹のドラゴンを落とすとミュベンの方に向かってきた。
だが、誰もそれを打ち落とすつもりがなかった。
「スッゲェー!。」
「あぁ、なんだろなあれ。」
その場にいた騎士達のほとんどは困惑していた。
それもそうだ彼らは空を飛んだこともドラゴンが空から墜ちるところを見たこともなかったのだ。
「ハァハッァハァ、やっぱ本物は違うな。こんなにも辛いだなんて。」
ハジメは一応自分で設計した事にした急降下爆撃機に乗ってドラゴンを倒していた。
いくらハジメと言ってもレシプロ機自体を一回も動かしたことすらない素人がドラゴン相手に空戦をこなすのは無理がある。その為後部に機銃主席があり、無茶な機動にも少しは耐えられ下方視界も良いガル翼の機体にすることでカバーしようとしたがそれでもかなり無理があった上、ミュベンのついこの間までアメリカ独立戦争時代レベルしかなかった技術力で無理矢理作ったためエンジンは20時間で寿命が来て、キャノピーはやや曇っており、航続距離は200km。さらに急降下爆撃をしようとすると機体のフレームが歪むといった致命的な弱点すらあった。
そんなのでもドラゴン相手に無双できたのは元の設計の優秀さとハジメの努力によるものが多いだろう。まだハジメも機体も四回しか飛行をしていなかった。
ハジメは滑走路を確認して管制官の許可もなしに着陸した。そもそも他の機体などないが、一応これからの事を考えると形だけでも管制をやっといた方がいいとハジメ自身が決めていた事だった。もうそんな余裕すらハジメには残っていなかった。
クラウス達は新兵器を一目見ようと一か月前にできたばかりの滑走路に集まっていた。何せ今までまともに相手に出来なかったドラゴンを瞬殺していったのだそんな凄い物に興味をひかれない人などいなかった。しかし機体が着陸してくるとその熱はすぐに覚めていった。なんとも形容し難い変な形、ドラゴンに炙られて焦げ焦げになった機体表面、そしてドラゴンの破片が刺さった射撃手席。それは悪いがスクラップのようだった。人々が唖然としていると担当らしきスタッフ達が大慌てでやってきて機体から一人のパイロットと一体の肉塊を回収していった。
もう誰もその光景を直視しようとはしなかった。
次の日ルドルフに転属が発表されたそこは飛行技術研究部。そう先日の飛行機を作った部署だった。ルドルフは泣きながらクラウスに抱きついたが結局連れて行かれてしまった。それからクラウスは一度もルドルフに会っていない。
そして一週間が経ったある日またサイレンが鳴り響いた。そうドラゴンがまた現れた。数は前回の2倍ほどで前回の様を見てだれも戦闘機に期待せずそれぞれの配置についた。そして今回はドラゴンが何にも邪魔されず西側から攻めてくる。一番近い部隊が攻撃を開始するがすぐにドラゴンの炎とその質量にやられ壊滅する。そして地に降りたドラゴンをまた別の部隊が集中砲火して殺す。それをまた別のドラゴンが焼き払う。そんな連鎖が続いていた。
「はぁはぁはぁはぁ、クソ!数が多すぎる!こっち人部隊でドラゴン一匹じゃ負けるぞ。」
誰かが弱音をもらす、正確には弱音ではないがそうにしか聞こえない。
(こうなったら飛行機を無理矢理飛ばすしかない。)クラウスはそう考え、体を走り出した。ドラゴンの炎が飛び交う市街を走り抜け、滑走路に向かう。そこにはドラゴンが最も集中していた。すでに騎士は残っておらずスタッフ達が銃を手に取り戦っていた。だが、それも既に限界が来ていた。クラウスはそれを見るなり倒れていた対空砲に残っていた砲弾を装填しスタッフにむらがるドラゴンに1発、空中に一発打ち込み放棄して格納庫に向かう。そこには飛行機、それとハジメ、ルドルフが居た。二人とも飛行服を着込んでコックピットにいた。だが、機体はまだ修理の途中といったところで万全にはどうみても見えない。だが、二人とも覚悟の決まった目をしていた。
「二人とも、滑走路は無事ですが空にはドラゴンが少なくとも十匹います!」
「そうか、ありがとなクラウス。なら、俺達が無事に上がれる様にお前が援護すればいいだけの話だろ?やれるか?」
「ハイ‼︎」
ルドルフさんの頼みを最早断ってはいけない。これは男同士の約束だ。俺は格納庫の扉を開き。俺と同様に残されてしまった対空砲に向かう。それに気づきドラゴンが一匹むかってくるが撃ち落とす。城周辺以外の地域は既に限界を迎えているのか火線はもう見えない。唯一この対空砲だけがドラゴンを堕としつづける。傍らには飛行機が見えてきた。それを見てさらにドラゴンが集中してくる。
「させるかァァァ‼︎‼︎」
ひたすらに俺は球を打つ。対空砲に装填するものがなくなるが、ライフルを手に取り空に打つ、そしてドラゴンが減る。ドラゴンも数を増やしていくがそれも墜とし続ける。だが、運悪くドラゴンの死体の一つがこっちに落ちて、俺に当たる。もう体は動かない。だが、目は捉え続けていた。人類の叡智を詰め込んだ翼は今空に羽ばたいた。
「クラウス......」
多数の犠牲を背負い、巨鳥は空に出た。燃料は最大の10%、弾数も心許ない。だけどやるしかなかった。王城上空にいるドラゴンに奇襲をかける。弾はバラけて全然当たらないし照準器は当てにならないでも、ドラゴンが二匹ほど墜ちる。だがそれほど意味はない。サイレンも最大音量でかけ、出来るだけドラゴンを引きつけていく、一機の急降下爆撃機に百匹程度のドラゴン。だが狙い通りだ。機首を上げ、ドラゴンの上に出る。機体が軋む音がしてくるが、アレぐらいはできる。この機体は爆撃機なのだ。ならその真価はアレにある。
「これが人類のチカラダァァァァ‼︎‼︎‼︎」
爆弾を切り離すスイッチを入れる。
爆弾は吸い込まれるようにドラゴンの群れの中央に落ちていく。そしてそれは炸裂した。何重にも重なるドラゴンの悲鳴が奏でるメロディーは瞬間に光の中に消えていく。空が静かになった。人々は空を見上げた。王までもが城からでて空を見上げていた。爆発の光と音が消え、その中から太陽に照らされ一対の翼が見えて来る。
それは新たな時代を告げる使者のようでもあった。
再投稿です。




