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97/136

97_黒体

 ダンテたちは、空中に浮かぶ天使の魔物たちの輪っかを巧みに避けながら、確実にひとつずつ破壊していった。だが、油断はできない。頭の上に輪っかを乗せられると、その時点で一巻の終わりだ。


 そんな時、草原をビューと吹き抜ける風がダンテの頬を撫でた。その瞬間、彼の脳裏にある考えがひらめく。


「みんな、俺にこの場を任せてくれないか!」


 声を張り上げるダンテに、剣士たちは一瞬驚きながらも、迷わず頷いた。


 彼を信じているからだ。仲間たちは素早く彼の後方に下がり、ダンテの背を守るように退避する。


「何か、いい考えを思いついたようだね、ダンテ」


「あとは頼むわよ」


「ダンテさん、何をするのかは分かりませんが頼みます」


 テラ、ルーシェ、ワイトも、短く声をかけてから彼の後ろへと動いた。


 ダンテは仲間たちの言葉に軽く頷き、左腕に握った剣へと意識を集中させる。刃が淡く風を纏いはじめた。


 その異変に気づいた空の天使たちが、輪っかによる通常の攻撃を止め、指先に光を集めはじめる。目の前の男は何か不穏なことをしようとしている、そんな警戒心が彼らの動きに表れていた。


「させるかよ!攻撃される前に仕掛ける!」


 ダンテが叫び、地を踏みしめると、力強く風を纏わせた剣を横に振った。瞬間、爆ぜるような風の奔流が生まれ、草原を切り裂く。凄まじい暴風が、空に舞う天使たちを一気に巻き込んだ。


 ――マナ付与。


 ダンテの風の能力の一つ。剣を通じて魔力を風に乗せるその技は、風に触れたものに緑の光を纏わせる。


 天使たちの身体が淡く輝きはじめた瞬間、ダンテは確信する。生気のない彼らの肉体は、生物ではなくモノとして扱われるようだ。つまり、マナ付与の対象となっている状況だ。


「今だ……!」


 片足を前に一気に踏み込んだダンテは、緑の光をまとった天使の一体を思いきり地面に叩きつけた。


 ドオン!?


 衝撃と共に、天使と連動していた輪っかも地面へと引きずり落とされる。


「いまだ、みんな! 輪っかを破壊するんだ!」


 ダンテの叫びに、後ろに待機していた仲間たちが一斉に動いた。ギルドの剣士たちが剣を振るい、落下した輪っかへと一斉に斬りかかる。金属のような破壊音が、乾いた空に響き渡った。


 輪っかが砕けると同時に、地面に押し付けられ荒ぶっていた天使の魔物たちが、ピタリと動きを止めた。まるで操られる糸を断ち切られた人形のように。


「やったわ!天使たちの輪っかを破壊できたわね!」


 ルーシェが歓喜の表情を浮かべ明るい声を響かせる。


 だが、安心するのは早かった。


 輪っかを破壊したはずの天使のうちの数体が、ひび割れながらも、再びゆっくりと起き上がる。輪っかを失ってなお、動こうとするその様は、まるで死を拒絶するかのようだった。


「こいつら、まだ……」


 テラが剣を構える。


「輪っかを破壊したのに、なぜでしょう。いきなり、強烈なマゴを彼らから感じます」


 ワイトも刀を構え、警戒する。


 その時だった。天使の一体が、黒い球体に変化しそのままスポンと真上に飛んでいく。ある程度の高さまでいくと静止する。球体から瞳が現れ、悠然とダンテたちを見下ろしている。


 頭上に浮かぶその球体に、ダンテは思い出す。


「……あれは、エウノキ村で戦った。目玉と同じ」


 ダンテが眉を寄せて、つぶやいた。

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