95_第一階層
「ここがダンジョン。ついにたどり着いた」
ダンテは目の前に高く聳えるダンジョンを見上げる。ダンジョンは天高く空を貫くように伸びていた。
ダンテたちがいるのは、普段は、吹雪が激しく吹き荒れる氷山。だが、今日はまるで彼らを導くように吹雪はピタッと止み、不気味なくらいに平穏だった。おかげで体力をほとんど使うことなく順調にダンジョンの建物までたどり着くことができた。
「早速、行きましょうか。ダンジョンの入口はこちらです。気を引き締めて行きましょう。気を抜くと、ダンジョンの中では一瞬で命を奪われますから」
剣神の一人ワイトが先頭に立って注意を促す。
「はい!」
ペンタゴンの剣士たちは、彼の言葉に威勢のいい返事をする。
ワイトは、ダンジョンの入口まで近づくと、巨大な扉が音を立ててゆっくりと開いた。
「いよいよ、始まるのね。ダンテ」
左腕のメイテツがダンテに言った。
「ああ、正直、緊張してる。今までの戦いとはおそらく次元が違うだろうから」
ダンテは、巨大な扉が開いていくのを見ながら、自ずと拳に力が入る。
「ダンテ、あなたならきっと乗り越えられるわ。今までいくつもの試練を乗り越えてきたんだから、大丈夫、きっと。それに、あなたは一人じゃない。今のあなたには頼もしい仲間がいるじゃない」
ダンテは後ろを見ると、テラとルーシェが立っていた。
「ああ、そうだな!よし、やるか!」
ダンテたちはペンタゴンの剣士たちの後ろをついていくようにダンジョンの中に足を踏み入れた。
一体、このダンジョンの中はどうなっているんだろうか。
ダンテは、天高く聳えるダンジョンの内装がどうなっているか前から興味があった。ダンジョンの中に入ると、彼の予想したものとは違った光景が飛び込んできた。
「草原……」
ダンジョンの中は、塔の内装とは思えないほど広かった。見渡す限り、草原が広がっており、建物の中だというのに、青く澄んだ空が際限なく広がっている。
「すごいわね、ダンジョンの中がこんなことになっているなんて思いもよらなかったわ」
ルーシェは、ダンテの隣に来て驚いた表情を浮かべ彼に言った。
「ああ、まるで異空間だ。ダンジョンの中は、外の世界とは切り離された特別な場所なのかもしれないな」
ダンテは、目の前に広がる草原を見渡し言った。
「あれ、見てよ。光の柱が見える。なんだろうね」
テラは、草原の向こう側に、青く輝く光の柱を見つけて指さした。
「ほんとだ。光の柱が見える。異様だな」
ダンテたちが、遠くに見える光の柱に釘付けになっていると、ワイトが光の柱について語り始めた。
「今、私たちがいるのはダンジョンの第一階層と呼ばれる場所です。あの光の柱は、次の第二階層に進むための道。つまり、光の柱に入ると、私たちは第二階層に行くことができます」
「なるほど、あの光の柱はとても重要な場所なんだな。ということは、俺たちは、あの光の柱に向かって進んでいけばいいってことか?」
ダンテが、確認するようにワイトに尋ねる。
「ええ、そういうことですね。一見、とても簡単に思えますが、あの場所に行くまでが大変なんですよ。私の経験上、ここにいる誰か一人や二人、命を失うかもしれません」
しれっと、ワイトは、恐ろしいことを口に出す。
「や、やめてくれよ……そんな縁起でもないことを言うのは」
ダンテは、ワイトの発言に若干、後ずさりつつ答えた。
「冗談ではありませんよ。それだけこの場所は危険ということですから」
ワイトが、そういった直後、草原に不穏な風がビューと吹き抜ける。そして、剣士たちの恐ろしいものを目の当たりにしたような叫び声が聞こえた。
「き、来ました!やつらです!」
「やはり、早速来ましたか」
ワイトは、草原の上空を舞いながら近づく何かを眺め、徐ろに腰の刀を抜いた。
「あれがダンジョンの魔物なのか。まるで天使みたいだ」
ダンテの目線の先には、真白な衣を纏い天使の輪っかのようなものを頭に浮かべて、浮遊して近づく見たことない魔物の姿だった。ダンテはその魔物を見て、ダンジョンの外にいる魔物たちとは比べ物にならないくらいの脅威を肌で感じるのだった。




