90_共闘
「奇妙な動きだ。確実に後ろをとったと思ったらいつの間にか、僕の後ろに来てるとはね。特殊な移動手段を使っているのか」
ケトラは、ダンテの見たこともない奇妙な移動方法に、疑問を抱きつつも、相変わらず余裕のある様子を見せる。
「ぐぅうううう……動けない。なんて、力だ!」
ケトラの背中から伸びた手は、壁に押し付けてもなお、ダンテを離さない。少しずつ、ダンテの肉体を押しつぶすように力が入る。
この距離だと、槍の力の適用範囲外だ。瞬間移動して抜け出す事はできない。
ダンテは、なんとかケトラの手を瞬間移動以外の方法で抜け出そうと試みるが、ケトラの手の力が強すぎてなかなかうまく抜け出せない。
あの技を試してみるか、でも、あの技は……。
ダンテはこの状況を打開する最後の切り札を持ってはいた。それは、ダンジョン攻略に向けて編み出した新技だが、強力が上にリスクを伴う技でもあった。
奥の手を使うか使うまいか考えていると、ルーシェが動きを見せる。
ダンテが危ない。助けに行かないと……。
ルーシェは、今にも握りつぶされそうなダンテのもとに向かおうとするも、タナが彼女の前に出て止める。
「待て。ルーシェ。私がダンテを助ける。彼には、借りができた」
「お姉ちゃん、分かったわ。お姉ちゃんがそう言うなら、任せるわ!」
そう言うと、ルーシェは姉のタナにダンテの救出を託す。
タナは、まずはダンテを握りつぶそうとするケトラの腕の方まで駆けると目にも止まらぬ速攻でズバッと切断した。
タナがケトラの腕を切断したことで、ダンテは手から逃れ身動きが自由に取れるようになる。ケトラの束縛から解放されたダンテは、感謝の言葉をタナに伝えた。
「ありがとう、タナ。助かった」
「なに、私もダンテに助けられた。感謝するのは私の方だ。ありがとう」
タナも、ダンテに感謝する。
「ほう、さすがは剣神といったところか。生やした腕とは言え、簡単に切断するとはね。なかなかに殺りがいがある」
ケトラは、切断された腕の一部を、背中にスルスルと戻すと体内に収めると、ダンテたちの方を見て戦闘態勢に入る。
「ダンテ、ともに戦ってくれるか」
タナはケトラの方を見据えたまま、横にいるダンテに向かって言った。
「ああ、言われなくても」
ダンテはそう答えると、互いに剣を構え、ケトラの戦闘に備えるのだった。




