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09_剣の記憶

 ダンテはいつの間にやら復活した左腕をまじまじと眺める。


 この色、メイテツなのか。


 左腕は、メイテツのボディと同じ黒色をしている。ダンテの右腕と比較してみると、その色の違いが一目瞭然だ。ダンテは、この左腕は、メイテツが左腕に変形したものなのだと気づいた。


「片腕だけじゃ、これから先の苦難を乗り越えることは難しい。私が左腕になってあなたを支える」


 頭の中に、メイテツの声が響く。どうやら、メイテツはこれ以上、ダンテを襲うつもりはないらしい。


「お、おう……。左腕が復活したのはいいが、まるでこれから俺は確定で苦難に直面するような言いようだな」


 メイテツの言葉に引っかかったダンテが彼女に尋ねる。


「ええ、あなたには、神殿に眠る私の力と記憶を回収してもらいたいの。そのためには、神殿の試練を受け、乗り越えられるほどの屈強な肉体と精神力が必要になってくる」


「神殿の試練だって……面白そうではあるな。この神殿みたいなのが他にもあるってことか?」


 ダンテは、意外にも神殿の試練に興味を示す。


「あら、意外と乗り気じゃない。あなたの推察する通り他にも6つの神殿があるの。遠い昔に、それぞれの神殿に私の力と記憶を封印されてしまった。できれば、それらを取り戻したいと思ってる」


「あと6つも神殿があるのか……。メイテツ、君が自分の力と記憶を取り戻したいのには訳があるんだろう?」

 

 ダンテは、メイテツから悪意のようなものを感じなかった。メイテツが各地に眠る力と記憶を求めるのには、純粋で切実な思いがあるからだと考えた。


「私は、自分が何者かすら知らない。だから、力というよりも記憶を取り戻したいの。ダンテ」


「あれ、なんで俺の名前を知ってるんだ。名前は言ってないはずだけど……」


 ダンテは、教えてもないのに自分の名前を知るメイテツを不思議に思う。


「あら……そういえばそうね……。自然とあなたの名前が出てきた。もしかしたら私はあなたのことを知っていたのかもしれない。記憶を取り戻せば、それも分かるかもしれないわね」


 メイテツは、俺のことを知る何者かなのか……。俺は全然心当たりがない。邪剣の知り合いなんて、今まで会ったことがない。


 ダンテは、目をギュッと瞑り腕を組み過去の記憶を思い出してみる。だが、やはり過去にメイテツに会った記憶を思い出すことができなかった。過去にあったメイテツは、今のような邪剣の姿ではなかったのかもしれない。


「やあ、君がここの邪剣を引き抜いたのかい?」


 背後から、何者かの声がした。

 

「誰だ、お前?」


 ダンテは、後ろを振り向くことなく目線を横に動かす。背後の人物は、細身の男で古びた剣の上に手足を置き器用に乗っかっていた。不気味な笑みを浮かべ、ダンテの方を見ている。


「俺は、テラ。聖騎士だ」


 テラは、細い手を背中に背負おった剣にやると、ゆっくりと引き抜き、刃先を味わうように舐めた。

 

 また、面倒なやつにからまれてしまった……。


 


 

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