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75_消えた石像

 風の力ー通常モードー


 ダンテは咄嗟に風の力を使って自らの身体を吹き飛ばし、槍の直線軌道からそれる。


「ぐっ!?」


 ダンテは一瞬、声を出す。風の力で軌道からそれたものの、凄まじい速度で飛んできた槍の先端は、ダンテの身体をかすめていた。


 地面に着地すると、彼は荒い息をつきながらも、真剣な表情を浮かべる。


 危なかった……少しでもタイミングを間違えていたら、確実に致命傷を負っていた。槍がまだ予想がしやすい直線的動きで良かった。


 彼はそう安堵し、再び騎士の石像の方を見た。


 どこへ行った……。石像がまた姿を消した。


 そこにいたはずの騎士の石像の姿が再び消えている。 途端に、ダンテの表情が曇った。


  目を離してたのは、ほんの数秒。なんだかの特殊な手段で騎士の石像は移動しているはずだ。だが、ダンテはその移動手段を把握できてはいなかった。


 移動手段は今はいい。まずは、騎士の石像がどこに行ったのかを考えよう。


 ダンテは気持ちを切り替えて、さっと周囲を見渡そうとするが、その暇も与えず、突然斜め後ろから冷たい視線が突き刺さる。


 いつの間に、俺の後ろに。


 ダンテには振り向かずとも、騎士の石像が放つ強烈な殺意からその存在を察知することができた。


 騎士の石像はゆっくりと槍を構え、その先端をダンテの心臓めがけて慎重に突き出す。差し迫った状況の中、彼は二択を迫られる。


 どうする、反撃するべきか、それとも、一旦退避するべきか……。


 逃げていても倒せない、騎士の石像に最接近している今が攻撃のチャンスだ。ここで渾身の一撃をぶつけてやる!

 

 彼は闘志を燃えたぎらせて、反撃の意志を固める。後ろを振り向くと同時にギリギリのところで突き出された槍を冷静にかわした。


  そして、その勢いのまま反撃に出る。 彼は左拳を握りしめ風の力を纏わせる。テラとの戦闘で学んだ剣身に風を纏う技術を応用したものだ。


「これでもくらえええええ!!!!!」


 ダンテの力強い叫び声とともに、風を纏った拳が騎士の石像のみぞおち辺りに炸裂した。 拳がめり込んだ瞬間、ボンという破裂音とともに、騎士の石像は木っ端微塵に砕け散った。


「やったのか……」


 無残に砕け散った騎士の石像の欠片を見つめるも、ダンテは勝利した実感が湧かなかった。すると、今まで動きを見せなかった魔法使いの石像が、 何やら呪文のような言葉を口ずさみ始めた。


「なんだ……嫌な予感がする」


 ダンテが魔法使いの石像の様子に目を奪われていると、ルーシェの鬼気迫る声が響いていた。


「ダンテ、まだ終わってない!」


 その声に反応する間もなく、ダンテの身体に鋭い痛みが走る。


「何が起きた……」


 彼の左肩はいつの間にか槍に貫かれている。槍の先からは彼の血液がポタリと地面に滴り赤く染めている。激痛に耐えながら、ダンテは苦悶の表情でそっと背後を見る。彼の背後には粉々に砕け散ったはずの騎士の石像が、何事もなかったかのように立っていた。


「なんで……、破壊したはずなのに……」


 ダンテは自らの拳で破壊したはずの石像が平然と立っている姿に驚きと戸惑いの気持ちを抱く。


「ダンテ!おそらく魔法使いの石像の仕業よ!呪文で騎士の石像が復活させたんだと思うわ」


 近くで、様子を見ていたルーシェがダンテに向かって状況を伝えた。ルーシェは、魔法使いの石像が呪文を唱え終わると同時に、砕け散っていた騎士の石像が復活している光景を目にしていた


「ルーシェ、ありがとう。魔法使いの石像の呪文で騎士の石像は復活していたんだな」


 ダンテはルーシェの方を見て言った。


「待ってて、今すぐ回復に向かうわ。私の回復魔法で傷を治せるはずだから」


 ルーシェは急いでダンテの元へと向かおうとするが、ダンテは制止する。


「いや、こいつが活動している間は危ない。今はまだ大丈夫だ」


 ダンテは、無粋な表情で彼を見つめる騎士の石像を見た。


「でも、騎士の石像から倒してもまた復活されちゃうんじゃ……」


 ルーシェは真っ先に浮かんだことをダンテに言った。


「俺に考えがある。今はそこで見守っておいてくれ。ルーシェ、君の力が必要になったら、声をかけるよ」


 ダンテは、ルーシェにそう言うと、左肩を貫き血が流れ落ちる槍をグッと握りしめた。




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