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74_赤の神殿

 ダンテとルーシェの二人は、緊張の面持ちで赤の神殿へと足を踏み入れた。 神殿の中は静寂に包まれており、奥へと続く廊下には何本も柱が立っている。石の床は歩くたびに小さな音を立て、奥へと進んでいった。


 しばらく歩くと二人はピタリと足を止めた。二人の視線の先には重厚な扉があった。


 そして、扉の前には、ニ体の石像が左右に置かれている。左の一体は、鎧をまとった騎士の石像。右の一体は魔法使いのような身なりをした石像だ。


 二体の石像は、まるで生きているかのように精巧な作りをしており、何とも言えない威圧感を感じさせる。


 おそらく今回も、この扉の先にメイテツの力と記憶が眠っている。だけど、扉を開けるための試練があるはずだ……。


 これまで幾多の試練を乗り越えてきたダンテだが、神殿の試練は遊びではない。一瞬の油断が死に直結する。彼は、ぎゅっと拳を握り締めて、気を引き締める。


「我を倒せ、さすれば最奥の扉が開かれるだろう」


 ダンテの頭の中にそんな声が響いた直後、扉の前の石像の眼窩に、赤く不気味な光が宿る。本能的恐怖を刺激するような禍々しい輝きだ。


「見て、ダンテ!動いた……!」


 ルーシェが驚きの声を上げる。彼女が言うように確かに左に立っていた騎士の石像が静かに動き出している。手にしていた巨大な槍を構えたかと思うと、次の瞬間、ダンテに向かって勢いよく投げる。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!


 空を引き裂き、凄まじい速度で槍は、ダンテたちのところまで直進する。


「ダンテ、私に任せて!」


「ああ、頼む。ルーシェ!」


 ルーシェは勾玉に力を込めて周囲にシールドを即座に展開する。槍は、シールドと衝突し神殿に凄まじい轟音が鳴り響く。同時に、周囲の柱が激しく揺れて、あまりの衝撃に火花が激しく散り、シールドに亀裂が走った。


「まさか、シールドにヒビが入るなんて……」


 これまでどんな攻撃にも耐えてきたはずのシールドに、亀裂が入る光景を目の当たりにしたルーシェは、戸惑いの声を漏らす。


 亀裂は入ったものの、彼女のおかげでなんとか石像の猛攻を耐えしのいだ。


 シールドに阻まれ勢いを失った槍は地面にカランと音を立てて落ちる。


「一旦、シールドを解除してくれ!奴らへの攻撃は俺一人でやる」


 ダンテは力強くそう叫ぶと、ルーシェは頷く。


「分かったわ。あんな奴、すぐにやっちゃって!」

  

 ルーシェが、シールドを解除する。その瞬間、ダンテは身体を脱力した後、地面を力強く踏みしめ騎士の石像まで一気に距離を詰める。


 至近距離までダンテに接近されてもなお、騎士の石像は顔色一つ変えず微動だにしない。


「これで終わりだ!」


 ダンテは左腕を剣に変形させると、そのまま石像に向かってその切っ先を全力で振り下ろす。


 だが、その瞬間、奇妙な事が起こった。剣が当たる寸前、騎士の石像は一瞬でその場から消えたのだ。


 どこにいった……。


 剣を振り下ろす最中、突然、石像が消えたことに困惑するダンテ。


「危ない、ダンテ!石像はこっちよ!」


 そんな彼に、ルーシェの声が響く。慌ててルーシェの方を向くと、どう言うわけだか彼女の近くに石像は移動していた。


 彼女は、一旦、シールド保持時間30分のうち5分くらいでシールドを解除していた。そのため、残り25分の枠は、シールドの展開を自由に行える。彼女はいざとなったら自分の身を守れるが、問題は騎士の石像がダンテへの攻撃をやめないことだ。


 騎士の石像は、槍を片手で握りしめ、ダンテに向かって投げる構えをすでにとっている。


 まずい、今は隙だらけだ。


 そんな彼の隙をつくように石像は、槍をダンテにめがけて容赦なく投げつけた。騎士の石像の筋肉質な片腕から、投擲された槍は、凄まじい速度で弾丸のごとく空を裂き直進する。

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