71_紫光と風
これまで得た力をすべて組み合わせて対抗するしかない……。
ダンテは、緊張した面持ちで、禍々しい力を纏う、テラの大剣を見据えて戦略を立てる。
「メイテツ、イメージ通りにできそうか?」
ダンテは自分の左腕に宿るメイテツに問いかけた。彼女はダンテの意識と深くつながり、力を共にしている。メイテツにはダンテがやろうとしていることを口に出さずとも理解していた。
「正直、分からないわ……でも、ダンテ、あなたが強くイメージすることができれば、きっとできるはずよ!」
メイテツの声は少し不安を含んでいたが、ダンテは彼女の言葉に勇気をもらい、覚悟を決める。
「そうか、分かった。よし、やろう!」
ダンテは左腕に意識を集中させた。 左腕を大きく膨らませ、血管が浮き出るほどに筋肉が盛り上がる。その腕は、みるみるうちに巨大な大剣へと変貌を遂げる。剣身は、深緑色に染まり、生み出した風を纏わせた。風を纏った剣はヒューヒューと唸り声を上げる。
「……すごい突風ね! 気を抜いたら吹き飛ばされちゃいそう!」
ルーシェはダンテの大剣から放たれる凄まじい突風に吹き飛ばされそうになりながらも叫んだ。
「これは見ものだな……さて、どっちが勝つのか」
対して、突風の吹き荒れる中でもタナは悠然と佇み、ダンテとテラが対峙する様子を腕を組み静かに見守る。戦況を冷静に見る彼女の目差しには、期待と緊張が見られた。
テラは、暴走し膨れ上がった体内の力を剣身に宿らせ大剣を勢いよく振り下ろすと、紫色に輝く斬撃が振り下ろされた大剣から放たれる。その斬撃は白銀の雪原をいとも容易く引き裂き、ダンテへと近づいていく。
「来る……!」
ダンテも負けずと風の力を纏った大剣を渾身の力で振り下ろし、突風を伴った風の斬撃を放つ。空気を切り裂く轟音とともに風の斬撃と紫の斬撃が激突した。
ドォンッ!!!!!!!!
紫光の斬撃と風の斬撃がせめぎ合い、互いの力は拮抗していた。どちらも一歩も譲らない。ダンテは、負けまいと声を上げさらに力を強める。
「うぉおおおおおおおおおっ!!!!!!!」
その瞬間、激突していた力が限界を迎え、強烈な白光となって、辺り一面を包み込んでいく。
「な、何が起きているの……?」
ルーシェは力のぶつかり合いによって発生した白い閃光に驚きつつ、目を細めながら声を上げた。
少しすると白い輝きは徐々に収まり、辺りの光が消えると、そこには呆然と立つテラの姿があった。 彼は今の激突で大きなダメージを受けたのか、ふらつきながらも剣を握りしめていた。
そんな、嘘でしょ。ダンテは負けてしまったの……。
ルーシェは、一人立つテラの姿を見て、悲しみで体が脱力する。
ーーだが、その時だった。
突如、雪の塊のいくつかがふわりと宙に浮かび上がり、テラに向かって畳み掛けるように飛んでいく。
テラは、思いもよらぬ攻撃ではあったが、すぐさま危険を感知し、飛んでくる雪の塊から身を守るため反射の構えをとる。
するとテラの方に向かって飛んできた雪の塊は、彼の近くまで来ると、急に反射の構えの効果で方向を逆転させられ弾き飛ばされていく。
今だ。今しかない。テラを泉の中に落とすには。
ダンテは、テラの死角まで移動し、緑色に染め上げた両手をテラに向けていた。
実は、雪の塊の一部に、ダンテは張り付き、テラの死角へと密かに移動していたのだ。先ほどの雪の塊による猛攻は、テラの意識をダンテの存在から逸らすための攻撃だった。
ダンテは両手にピュアを集めて、風の力を濃縮させると、一気に突風を瞬間的にテラに向かって吹き出した。
「行っけぇぇぇぇっ!」
吹き荒ぶ突風はまるで吹雪のようにテラを襲う。 不意を突かれたテラは抵抗することもできず、そのまま金色に輝く泉まで飛ばされた。
金色の水面に沈むテラ。その水は不思議な輝きを放ち、彼の体を包み込んでいく。
「……これは……」
泉の底へと沈んでいく中で、テラは体内のマゴが浄化されていくのを感じていた。 禍々しい力が次第に消えていき、心が穏やかになっていく。
ーーそして、意識が薄れかけた時。
誰かが彼の手を握っていた。その手は優しく、力強かった。
「ダンテ……?」
その瞬間、彼の視界が完全に暗転した。




