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69_氷の柱

 タナは剣を天高く突き立て、その剣先から冷気を凝縮させていった。瞬く間に周囲の空気が凍りつき、剣身には霜がびっしりと降り、白く光り輝く。


 彼女が手にする剣は、まるで白神山の息吹を宿したかのように、冷気を帯び、見ている者に圧倒的な迫力を与える。威風堂々とした彼女の放つ冷徹な気配は周囲を静寂で包み込んだ。


「すごい、やっぱり、お姉ちゃんは最強ね!自慢の姉よ! 私がピンチの時は、きっと助けに来てくれると思ってた」


 タナの妹ルーシェは、息を呑んでその光景を見つめ、姉の圧倒的な力強さに感嘆の声を上げる。


 幼い頃から憧れ続けてきた姉の姿がそこにはあった。ルーシェはそんな彼女の姿を尊敬の眼差しで魅入っていた。冷たい空気が肌を刺すように感じるが、それすらも心地よく思えるほどに、姉タナの存在は神々しく映っていた。


「ルーシェ、無事でよかった。しかし、少し厄介なやつに絡まれているな。この魔族は、何者だ?まあ、何にせよ、大切な妹に斬りかかろうとしたんだ。手加減は不要だろう」


 タナは妹を傷つけようとしたテラに対して敵意を向ける。


「あっ、ちょっと待って、その人は……」


 慌ててルーシェは、タナに事情を説明しようとしたがすでに手遅れだった。


 タナは冷気を纏った剣を振りかざすと、突風が吹き荒れ瞬く間に前方の地面を氷結させる。


 まるで大地そのものが一瞬にして凍りつき、深い眠りについたかのようだった。


 対峙していたテラは即座に反応し軽い身のこなしで、タナの凍結範囲外へとすかさず回避する。


 その動きは淀みなく、まるで長年の戦闘経験に裏打ちされたもののように正確であった。タナが凍結させた空気は、氷の塊と化している。周囲に飛び散る氷の結晶は、星々が夜空に瞬くかのごとく美しい。


「この魔族、なかなかやる……でも、まだ終わりじゃない!」


 タナは低く呟くと、一瞬の隙をついてテラに接近する。その動きは力強さの中にどこか洗練された美しさを感じられる。


 迫りくるタナの剣を前にしても、テラは冷静さを失わなかった。彼は素早く身をかがめ、剣の一撃をかわすと同時に、隙をついて背後から短剣を突き出した。その短剣は鋭い輝きを放ち、空を切り裂きながら進む。


 あまい。


 テラの短剣はタナの片手に阻まれた。彼女は片手でその攻撃を受け止めると、不敵な笑みを浮かべる。その笑みには余裕があり、冷酷ささえ感じさせた。


 タナは容赦なくテラの短剣をバキッと握り潰す。テラは、身の危険を察知し、彼女から距離を取ろうと地面を蹴る。


「絶対逃がさない!!!お前にトドメを刺すまでは!!!」


 タナが大切な妹を襲いかかったテラに対して怒りの感情を爆発させる。感情の赴くままに冷気を纏った剣を地面に突き刺すと、直後、凄まじい轟音が響き渡る。


 ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!

 

 剣を突き刺した地面から冷気が勢いよく噴き出し、瞬く間に周囲を半透明な氷の世界へと変えた。寒気に包まれた空間は、冬の嵐の中心にいるかのような錯覚すら覚えさせる。巨大な氷の柱に閉じ込められたテラは、身動きが取れない状態になっていた。


 その轟音と冷気に驚いて、ルーシェの治療を受けていたダンテがはっと目を覚ます。


 彼はまばたきを繰り返しながら周囲を見渡した。視界に広がるのは、一面に広がる氷の世界だった。そこには、巨大な氷山のようにそびえ立つ氷の柱があった。氷の柱は日光を浴びて淡く輝き、幻想的な雰囲気を漂わせている。


「なんだ、この光景は……何があったんだ、俺が意識を失っている間に……」


 ダンテは眼前の状況をにわかには理解できずに唖然とする。


 一方、ルーシェは姉のたくましい背中を見つめていた。普段の強気な態度とは裏腹に、自分の無力さを痛感していた。今は彼女のように私は戦うことができない。ただ、その場に立ち尽くし、姉の背中を見つめることしかできない自分に、悔しさを覚えていた。また、同時に強くなりたいという思いを胸に抱く。


「私も、いつか……」


 ルーシェは拳を強く握りしめ、自らの決意を胸に刻んだ。姉であるタナのように強くなりたい。そう思うと同時に、冷たく凍った空気の中に立つ姉の姿が、さらに輝いて見えた。


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