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65_絶望の光

 僕の家が燃えている……。


 ハンナとともに、テラは慌てて図書館の外へに出た。家のある方向に目を向けてみる。確かに家のある場所から黒い煙が空高くまっすぐな線を描くように伸びているのが見えた。


 母さん……。


 その光景を目の当たりにし、テラは、胸騒ぎがして、眉をキュッと寄せる。


 家を出た時に、見送ってくれた母親の優しい笑顔が不意に頭に浮かんだ。もしかしたら、なにか母親にあったのかもしれない。今まさに誰かに助けを求めているかもしれない。


 テラはそんな嫌な予感が、胸の中で充満して心が落ち着かずにいた。いち早く、母親の無事を確認したい思いで、必死に手足を振り、息を切らしながら家へと向かった。


 しばらくして、家の近くまで来ると、テラたちは足をピタリと止めた。火がバチバチと家屋を燃やす音が響き、熱気を帯びた風が吹き寄せる。テラの家は、案の定、燃えていた。黒い煙が出ていたのは、やはりテラの家だった。


 炎が燃え上がり、黒い煙に包まれる中、何かが蠢く影を見た。


「あれは……ドラゴンなのか……」

 

 テラの目に蠢くドラゴンの姿が映し出される。圧倒的な風貌と迫力に、見た瞬間、戦慄が全身をすっと駆け抜けた。


「遠くからじゃ、分からなかったけど、どうやらあのドラゴンの仕業のようね」


 ハンナは、ドラゴンの巨体に驚きつつ、落ち着いた声でテラに話しかけた。


 ドラゴンは激しく燃え盛る家の屋根を突き破り首を出していた。


 ドラゴンの目は白い眼をしており、生気を感じられない。テラには、まるで、ドラゴンの死体が動いているようにも思えた。その異様な様子のドラゴンは、ガサガサと家の中をあさり始める。何かを見つけると口でくわえ持ち上げる。


「母さん……」


 テラの瞳孔が広がり、震えた声が響く。


 ドラゴンがくわえていたのはテラの母親だった。火事でかなり酷いやけどを負っている。かろうじて、母親は意識が残っていた。顔面蒼白になって佇むテラに気づき、彼女は彼に顔を向ける。


「テラ、逃げなさい……」


 弱々しい声で、母親はなんとかその言葉を伝えようとテラに向かって言った。直後、ドラゴンは母親をまっすぐ宙に放り投げると、大きな口を開け彼女をゴクリと一飲みする。


「母さん!!!!」


 涙目になりながら、テラはなすすべもなく叫んだ。


 母さんが……母さんが……食われた。助け出さないと、あいつの胃袋を引き裂いてでも助け出さないと。


 テラは、自暴自棄になり、ドラゴンに闘志を宿した眼光をすっと向ける。


 横に立っていたハンナは背けていた目をテラに向けると言い聞かせるように叫んだ。


「テラ、駄目よ。私たちがかなう相手じゃない!逃げましょう!あなたの母親が言い残したように」


 ハンナは、怒り狂ったテラに向かって叫ぶが、テラは聞く耳を持っていない。


「こいつは、殺す」


 テラは、強烈な殺意に共鳴するかのように体内のマナがドクンと胎動しうちそこに秘められた力が一気に覚醒する。


「すごいマナ。体内にこれほどのマナを宿しているなんて」


 ハンナはテラが放つあまりに強力なマナの出力に、緊張が走る。


 テラは、本能がままに光の剣を脳内で鮮明にイメージする。すると、眩い輝きとともに光の剣が現れる。それを掴み構えると、目にも留まらぬ速さでドラゴンの下へと駆けた。


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