63_白妖の泉
ダンテたちは、テラの光の矢による猛攻を回避しつつ崖の下へとなんとか降りた。
はあ、はあ、はあ。
ダンテの息が乱れる。さすがに、攻撃の回避しながら命からがら崖を降りた後なだけあって、精神体力ともにかなり削られていた。
「大丈夫?もう私を降ろしてくれてもいいわよ」
ルーシェは、ダンテを心配し声をかけた。ダンテは、背負っていた彼女を地面にそっと降ろした。
「大丈夫だ、気遣ってくれてありがとな。やっと、崖の下に着いたな」
ダンテは、崖の下に広がる光景を見渡した。真っ白な雪が覆う地面に、小さな泉が見えた。泉の水は金色に神々しく輝いており、宙には光の粒子がふわりと舞っている。とても神秘的な光景だ。
「あれが白妖の泉よ。あの水を飲ませれば、彼の中の怨虫を消し去ることができるはず」
ルーシェが金色に輝く泉を見ながら言った。
「水を飲ませるか。なかなかそれは骨が折れそうだな。そのためには、テラが動けない状態まで追い込まないといけない」
ダンテが、左腕の剣を構え、見据える先には、額の瞳を赤く輝かせ、禍々しいマゴを纏ったテラの姿があった。少し離れていても、その凄まじい力をヒリヒリと肌で感じられた。
ここで、テラと戦わなければならないのか。心苦しいが、彼の動きをなんとか止めるしかない。本気で挑まなければ、こっちがやられてしまいそうだ。
ダンテはツバをごくりと飲み込み、戦闘態勢に入る。
「私は、二人の戦いの邪魔になりそうな。離れとくわ」
ルーシェは、空気を読んで足手まといにならぬように、そう言うと、トコトコとダンテのもとを離れた。
来る。
テラが光の剣を持ったかと思うと、すでに切っ先がダンテの顔の右側にあった。
早い。集中しないとあっという間にやられる。
ダンテは、素早く上体を下げて横に勢いよく振られた切っ先を躱す。
「メイテツ!テラに拳をぶつけよう!」
「ええ、テラに一撃食らわしてやりましょう!」
ダンテはメイテツと意思疎通を図り、右拳にメイテツをまとわせるとマナを込めてテラの左脇腹にその拳を炸裂させる。
メキメキとダンテの拳がテラの脇腹に入り込むが、禍々しいマゴを纏ったテラの身体は、異常に硬い。
テラは、ダンテの拳の一撃をくらい、ぶっ飛ばされたものの、すぐに上体を起こし虚ろな目をダンテに向ける。
かと思うと、テラの額にある瞳がしきりに動き出す。
テラは光の剣を天高く掲げると、剣の切っ先から禍々しい黒紫色のマゴが稲妻のごとく周囲に飛び散った。そして、光を宿していた剣は、みるみるうちに黒く染め上がり闇の剣へと変貌していく。
さらに、左手でマナを使い新たな光の剣を生み出すと、徐ろに握りしめる。
「二刀流だと……」
右手に闇の剣、左手に光の剣を持つテラ。彼から放たれる圧倒的な威圧感に、ダンテは思わず1、2歩後ずさりそうになった。




