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62_変わりゆくもの

 ダンテは、崖の雪で覆われた傾斜を足部のスノーボードを使い滑る。そんな彼を追いかけて、片手に光の剣を構えるのは、テラだ。


 来てるな、よし。このまま、崖の下まで行こう。


 視線を背後に向けて、テラがついてきていることを確認する。ダンテの狙いは、このまま、テラを白妖の泉まで連れていくことだ。


 順調に行けば、白妖の泉の力を使い、怨虫に取り憑かれているテラを正気に戻すことができるはずだ。


 ダンテは、崖の下側を見据え転び落ちないように慎重に滑る。だが、黙って彼を崖の下まで降りるところを見届けるテラではない。今のテラは、理性を失い、ただダンテの命を狙う殺戮の鬼だ。容赦がない。


「や、やばいわよ!テラが、なにか攻撃を放とうとしてる!ちゃんと避けてよ。私こんなところで死にたくないもの」


 ダンテに背負われながら、ルーシェは、慌てた様子でテラを見ながら叫んだ。


「ああ、分かってるさ。こんなところで終われない。あいつを、テラを正気に戻すんだ。絶対に。ルーシェ、俺の背中にしっかりつかまっててくれ!」


 ルーシェにそう言うと、ダンテは瞳をすっと閉じる。それを見てルーシェは驚いたように言った。


「なんでこんな時に目を瞑ってるの!?」


 目をつむりながら、ダンテは答える。


「こんな時だからさ。目を瞑ってるほうが感覚を通常より研ぎ澄ませられる。周囲の状況を目で見るよりも、正確に把握できるんだ」

 

 感覚を数倍に飛躍させるマナ感知の力で、ダンテはテラの猛攻に備える。


「へぇ~そうなんだ……て、すごっ!?そんなことできるもんなの!?」


「しっかりつかまって!!来るぞ、テラの攻撃が!!」


 ごぉおおおおおおおおお。


 ダンテが叫びとともに、後ろから空を裂く音を響かせながら、一直線に光の矢が勢いよく飛んできた。今度は剣による光の斬撃ではなく、弓による光の矢が彼らを襲う。


 目をつむって感覚を研ぎ澄ませたダンテは、テラの光の矢を感じても落ち着いていた。光の矢の方向と速度を感じると、さっと横に移動し冷静に回避した。


 ドォーン!!!


 ダンテを仕留め損なった矢はそのまま直進し、衝突した対象物を激しい轟音を轟かせ粉々に打ち砕く。もし矢が当たっていたら、ひとたまりもなかっただろう。


「ねえ、気づいてるかもしれないけど、あのテラとかいう人、徐々に強くなってない?気のせいかしら」


 光の矢を見たルーシェが、不安そうな顔をしてダンテに言った。


「気のせいじゃないと思う。テラの攻撃に、マゴが宿り始めているみたいだ。いや、攻撃だけじゃない。彼の身体から強烈なマゴを感じる」


「それって、どういうこと?マゴって魔族が体内に宿してる力よね」


 ルーシェの問いかけに真剣な表情を浮かべ、ダンテは言った。


「テラは、人間ではなく魔族に近い存在になってきてるってことだよ」

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