61_断崖絶壁
一寸先は、険しい崖になっておりあと一歩踏み出せば、崖から真っ逆さまに落ちてしまうような状況だ。
ダンテが立ち止まっている間にも、テラは、着実に距離を縮めすぐそこまで迫ってきていた。
とはいえ、ルーシェのシールドが周囲に展開されている。シールドがある間は、テラの攻撃がダンテたちに届く心配はないはずだ。
ダンテはそう安堵していたのだが、直後、周囲のシールドが急にパッと消滅する。
「ルーシェ、急にシールドが見えなくなったんだが、そういうものなのか?」
ダンテは、シールドによる守りが消えて背中にいるルーシェに顔を向け問いかける。
「見えなくなったんじゃないわ。消えたのよ。私のシールド効果は、ずっと続かない。次に、シールドを展開するのに、5分くらいはかかるわ。ということで、ダンテ、あとは頑張ってね!」
「いつまでも続く程都合の良いものではないということか……。最初出会った時、テラから君が必死に逃げていたのは、シールド効果に期限があったからだな」
ダンテは、ルーシェが一人テラから必死に逃げて駆けていた時のことをふと思い出す。
「ええ、その通りよ。私は、守りはできても攻撃する手段がないのよね。攻撃はお姉さんにいつもやってもらってたし。私は守り担当って感じなの」
どうやらルーシェは、攻撃には自信がないようだ。治癒師なだけあって、守り主体らしい。
「さっき、白妖の泉は崖の下って言ってたな?」
ダンテは、彼女の言葉を聞いて、ある考えが浮かんだ。念の為、彼女に事実確認をする。
「言ったけれど、それが何?」
ルーシェは、どうしてそんなことを聞いてくるのか分からないといった顔をする。
「……」
ダンテは黙り込み思考する。
今のテラは、怨虫にとりつかれて理性を失った状態だ。俺の命を奪うため、手段を選ばないはずだ。それをうまく利用すれば、崖の下にある白妖の泉まで連れていき、正気に、戻すことは可能かもしれない。正直、賭けだけど……。
「ねえ、聞いてる?」
考えにふけるダンテに、ルーシェはもう一度声を掛ける。
「ルーシェ」
「うわぁ~、しゃべった」
突然、黙っていたダンテが言葉を発しルーシェは驚く。
「この崖を降りよう……」
ダンテは、岸の下に広がる闇を見つめながら呟いた。
「はっ、何言ってるの!?正気じゃないわよ!」
ダンテは、テラがこの場に来るのを確認するとジャンプすると空中で即座にメイテツを変形させ足元にスノーボードのような形態に変える。
「ちょ、ちょっと!?」
彼女は素っ頓狂な声を上げる。
崖の傾斜した部分に着地すると、そのまま、バランスをとり崖の下の方まで滑っていく。
「う、嘘!!ホントに崖を降りようっていうの。でも、これで不審者ことテラからは逃げられそうね」
「いや、おそらくテラならこれくらいで追うのをやめたりしない。追ってくるはずだ」
「まさか、そんなありえないわ」
ルーシェがダンテの言葉を疑いつつそう言った直後、後ろでガサッという音とともに何かが迫ってくる気配を感じた。
さっと、ルーシェが後ろを振り向くと、光のボードに乗ってテラが崖を滑ってこちらを追いかけていた。
「ぐっ、あなたたち二人ともほんと狂ってるわね!!」
常軌を逸した2人の行動力にルーシェは呆れた声で叫んだ。




