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56_真の実力

 確かに全身に受けたのは、風の力だ。一瞬過ぎてよく分からなかったけれど、テラの持つ光の剣による効果だろう。迂闊には、攻撃できない。


 ダンテは、先ほどの思いもよらぬ反撃に、剣をぎゅっと握りしめ、警戒心を募らせる。  


 近距離での攻撃は、危険だ。まずは、遠距離の攻撃でテラの出方を見よう。


 ダンテは、こんな時、一つの判断のミスが、命取りになることを身を以て知っていた。慎重に行動を取捨選択し対処しようとする。 


 先ほど、テラに放った風の力が作用し、付近の物体には、ダンテのマナが付与されていた。まずは、マナを纏った物体を浮遊させ、テラにまとわりつかせる。


 よし、これでテラの動きを止められ……。


 周囲の物体を操作し難なくテラの動きを止められたと安堵しかけたが、ことはそううまくは行かなかった。


 テラは光の剣を横にすっと一振りし、いとも容易くまとわりつかせた物体が勢いよく弾け飛んだ。


 破られた。さすがだな、テラ。


 弾け飛んだと同時にテラは光の剣を構えると、一気に距離を詰め、ダンテの首を切り落とさんと切っ先を振る。


 危ない!?


 紙一重のところで、身体をそらしテラの剣をかわす。今度は、ダンテが後ろに後退しテラとの距離をとる。


 明らかに、前に白の神殿で戦ったテラより強い。前の時は本気を出していなかったのかもしれない。


 ダンテ自身、以前に比べて新たな力を手にし前回より戦略の幅が広がっているが、それでもテラの強さをひしひしと感じられた。殺戮の鬼と化したテラは、容赦がない。ダンテを殺意を持って襲いかかってくるため、本気の彼を相手にしなければならない厳しい状況だ。


「ダンテ、この神殿に、戻ってきていたのですね」


 どこからか、ダンテの頭の中に響き渡る声。聞き覚えのあるその声に、思わず声を出す。


「この声は……」


「私は、女神です。ダンジョンが現れてから、魔力を封じられ今は姿を現すことができません。声だけの意思疎通となり申し訳ありません」


 ダンテに語りかけてきたのは、虹の神殿にいた女神だ。最初に、虹の神殿に訪れ、彼女に出会った時は、緑地の泉から水で自らを具現化した姿をしていたが、今回は違った。彼女の姿はなく声だけが彼の頭に響く。


「やっぱり女神なのか。テラが大変な状況なんだ。彼を止めないと、村の人々が大変なことになる」


「ええ、状況は把握しています。ダンテ、あなたに頼みがあります。彼を止めるために必要なことです」

 

 女神は、真剣な声でダンテに何か頼み事がある旨を伝える。


「遠慮なく言ってくれ!俺もテラを止めたい!」


 ダンテは、テラを救う手段があることを暗に匂わせる女神の言葉に乗り気な姿勢を示す。


「テラを白神山まで送り込みます。その手伝いをしてもらいたいのです」


 女神の意外なお願いに、彼はふと塔型のダンジョンがそびえる山の光景が頭に浮かび呟いた。


「白神山……それってもしかして、ダンジョンがそびえていた山のことなんじゃ……」

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